あの日から一ヶ月がたった。
新社長として、テレビや雑誌は連日のようにトニーのことを特集し始めた。好意的に報道しているものばかりではなく、中にはトニーのスキャンダルを探そうと必死な人々もいた。
学校へもマスコミが押し寄せた。まるでトニーのスキャンダルを探すかのように…。教師たちは、マスコミを追い返そうとしたが、テレビに映りたい数人の生徒がインタビューに答えた。だが、みんなトニーのことが大好きだったため、口を揃えて言っていた。
『スターク先生は、素晴らしい先生でした』
そして、トニーは変わった。高級なスーツに身を包み、髪をアップにし髭も生やし…まるで以前の自分を忘れようとするように…。いつも笑顔で明るくユーモア満載の彼は、あっという間に人気者になった。
だが、ペッパーは気づいていた。テレビに映るトニーはとても寂しそうな目をしていることに…。
早く卒業したい…。
早く彼のそばに行って支えてあげたい…。
ミッ○ーのぬいぐるみを抱きしめたペッパーは、トニーに『今日もお疲れ様』とメールを送信すると目を閉じた。
***
忙しく食事を取る暇もままならないトニーだったが、ペッパーへの電話は欠かさなかった。だが、忙しさのあまり電話すらも出来ないことが多くなり、もう何日も声を聞いていなかった。
深夜遅く帰宅したトニー。シャワーを浴びたトニーは、寝室にポツンと置かれたベッドに倒れこんだ。
今日もいつもの繰り返しだった。マスコミに追いかけられ、たくさんの会議に出て書類の山に追われて…。
(覚悟していたが、こんなに大変だとは…)
今までとは激変した環境にトニーは戸惑っていた。だが、そんな素振りを見せるわけにはいかない。
(ペッパーにそばにいてもらいたい…)
何度も思った。実際、あわよくば妻の座に収まろうとする女性たちに、にじり寄られていたトニーは、我慢の限界だった。そうかと言って、ペッパー以外とどうこうなるつもりはない。
ふと横を見ると、例のミ○ーのぬいぐるみが微笑んでいた。
『私がいない時は私だと思ってかわいがってね』
脳裏に浮かんだのは、ペッパーの言葉。
ぬいぐるみを抱きよせると、心なしか笑ったような気がした。
「何だ?お前もさみしいのか? もう少しで会えるから、頑張ろうな…」
ぬいぐるみを抱きしめたトニーは、シーツに潜り込むと灯りを消した。
卒業式まであと十日。
指折り数えていた日がもうすぐやって来る。
だが、トニーからの電話もメールも、ぷっつりと途絶えてしまった。