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Kiss the Teacher~卒業編4

あの日から一ヶ月がたった。

新社長として、テレビや雑誌は連日のようにトニーのことを特集し始めた。好意的に報道しているものばかりではなく、中にはトニーのスキャンダルを探そうと必死な人々もいた。
学校へもマスコミが押し寄せた。まるでトニーのスキャンダルを探すかのように…。教師たちは、マスコミを追い返そうとしたが、テレビに映りたい数人の生徒がインタビューに答えた。だが、みんなトニーのことが大好きだったため、口を揃えて言っていた。
『スターク先生は、素晴らしい先生でした』

そして、トニーは変わった。高級なスーツに身を包み、髪をアップにし髭も生やし…まるで以前の自分を忘れようとするように…。いつも笑顔で明るくユーモア満載の彼は、あっという間に人気者になった。
だが、ペッパーは気づいていた。テレビに映るトニーはとても寂しそうな目をしていることに…。
早く卒業したい…。
早く彼のそばに行って支えてあげたい…。
ミッ○ーのぬいぐるみを抱きしめたペッパーは、トニーに『今日もお疲れ様』とメールを送信すると目を閉じた。

***

忙しく食事を取る暇もままならないトニーだったが、ペッパーへの電話は欠かさなかった。だが、忙しさのあまり電話すらも出来ないことが多くなり、もう何日も声を聞いていなかった。

深夜遅く帰宅したトニー。シャワーを浴びたトニーは、寝室にポツンと置かれたベッドに倒れこんだ。

今日もいつもの繰り返しだった。マスコミに追いかけられ、たくさんの会議に出て書類の山に追われて…。
(覚悟していたが、こんなに大変だとは…)
今までとは激変した環境にトニーは戸惑っていた。だが、そんな素振りを見せるわけにはいかない。

(ペッパーにそばにいてもらいたい…)
何度も思った。実際、あわよくば妻の座に収まろうとする女性たちに、にじり寄られていたトニーは、我慢の限界だった。そうかと言って、ペッパー以外とどうこうなるつもりはない。
ふと横を見ると、例のミ○ーのぬいぐるみが微笑んでいた。

『私がいない時は私だと思ってかわいがってね』

脳裏に浮かんだのは、ペッパーの言葉。
ぬいぐるみを抱きよせると、心なしか笑ったような気がした。
「何だ?お前もさみしいのか? もう少しで会えるから、頑張ろうな…」
ぬいぐるみを抱きしめたトニーは、シーツに潜り込むと灯りを消した。

卒業式まであと十日。
指折り数えていた日がもうすぐやって来る。

だが、トニーからの電話もメールも、ぷっつりと途絶えてしまった。

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Kiss the Teacher~卒業編3

葬儀が終わった後、息つく暇もなくトニーは忙しく動き回った。
まずは、会社の引き継ぎ。虫の知らせか、ハワードは引き続きに必要な書類を少しずつ準備していたらしく、実質的にトニーが動くことはなかったが、それでも会社のことは何一つ分からないのだ。トニーは、経営状況や実績などに関する書類を集めるように命じると、次の仕事に取り掛かった。
電話先は校長だった。やむを得ぬ事情のため予定よりも早く辞めなければならなくなったと伝えると、校長は快く送り出してくれた。荷物は近いうちに引き取 りに行かせると伝えたトニーに、フューリーは「寂しくなるな」と言ったのだった。生徒に別れを言えないのは辛いが、時間が出来た時に改めて挨拶に行くと伝え、トニーは電話を切った。
そして、トニーが一番気がかりだったのは、ペッパーだった。
とにかく声が聞きたかった。そばにいて欲しかった…。彼女に抱きしめてもらいたかった…。

用意させた大量の資料とともに、トニーは自宅へと帰った。
父親と母親の温もりが残る家には戻りたくない…。トニーは別邸として建てられていた岸壁に建つ家に住むことにした。
まだ使われていなかった別邸には家具もなく、リビングにはソファーがポツンと置かれていた。
バルコニーに出たトニーは、暗い海を見つめていたが、携帯を取り出し電話かけ始めた。
向こうも電話を待ち望んでいたのだろう。数回の呼び出し音の後、聞こえた電話の向こうの声に、トニーは零れ落ちそうなものをぐっと堪えた。
「トニー?大丈夫?」
「…あぁ…」
「お願いだから、無理しないでね…」
「…」
ペッパーの優しい声に、トニーは目から溢れた涙をそっと拭った。電話の向こうで、トニーが鼻を啜る音を聞いたペッパーも、トニーがしゃべるまで黙っていた。しばらくして、トニーが重い口を開いた。
「ペッパー…」
「何?」
「…俺は酷い息子だな…。最後に会った時…もっと話をしておけばよかったよ…」
「トニー…」
ペッパーは何と言えばいいか分からなかった。そばに寄り添い、ただ黙って抱きしめてあげたかった…。
そしてトニーも…。
『そばにいて欲しい…』
その言葉を言えないトニーは
「君は、お父さんとお母さんを大事にしろよ…」
と言うと、電話を切った。

スターク・インダストリーズの社長夫妻の事故死ともなると、各メディアはトップニュースで扱い、連日のようにテレビでは事故や葬儀の様子が流されていた。
もちろん、悲劇のヒロインではないが、突然両親を失い大企業を継ぐことになった一人息子のトニーも、マスコミの格好の餌食となった。青い顔をし、どこか呆然としたトニー。現実を受け止められていないトニーの姿は痛々しく、それでもマスコミの前では気丈に対応する姿を見ていたペッパーは、すぐにでも駆けつけ 抱きしめたい衝動に駆られていた。
トニーからもらった指輪を触り、心配そうにテレビを見つめるペッパーに、彼女の母親は何かを感じ取った。
「あら?あれ、スターク先生じゃない?やっぱりすごい人だったのね…。でも、気の毒よね」
「ママ…」
「だって、今まで会社を継ぐのが嫌で、先生をされていたんでしょ?それなのに突然全責任が自分に伸し掛かってくるのよ?しかも、何一つ分からない状況で…。大変よ。今までと環境が何もかも違うんだから」
クッションを抱きしめ涙を浮かべた娘を見た母親は、ペッパーを抱きしめた。
「いい先生だったのに…残念ね…」
「…うん」

トニーはもう戻って来ない…。
戻りたくても戻れない…。
次にトニーに会えるのはいつかしら…。

神様、お願いします…。
トニーを守って下さい…。
この子の父親を守って下さい…。
お願いします…。

ペッパーは毎晩祈った。トニーが無事でいますようにと…。

***

二日後、ベッドでうとうととしていたペッパーは、握りしめていた携帯が鳴っているのに気付き飛び起きた。
「もしもし!」
「ペッパーか?」
二日ぶりに聞くトニーの声は、少しだけ元気を取り戻しており、ペッパーはホッとした。
「トニー…。大丈夫?ちゃんとご飯食べてる?」
「あぁ、何とか…」
言葉に詰まったトニーに聞いていいものか迷ったが、ペッパーは思い切って切り出した。
「ねぇ、トニー。いつ戻って来れそう?」
しばらく黙っていたトニーだが、言葉を選ぶように話し始めた。
「…すまない…。もう戻れないんだ…。会社を継ぐことにした。俺しか跡取りがいないから当然なんだが…。ペッパー、俺は決めた。この会社を今まで以上に大きくするって。今度親父に会った時に、自慢できるように頑張るって決めた。親父が俺に遺してくれた財産だ。だから教師は辞める。こんな時期に辞めるのは、みんなに申し訳ないんだが…。荷物も取りに行く暇もない。二日後に会社の人間にすべて取りに行かせる。だから、ペッパー。もし、君が必要なものがあれば…」
「分かった。それまでに持って帰るわ」
「すまない…」
「謝らないでよ、トニー…。あなただって辛いんだから…。でも、私がそっちに行ったら、また一緒にいられるわよね?」
「ああ。それだけを楽しみに…俺も頑張るから…」
「うん。私も頑張る。でも、電話はしていい?」
「もちろんだ。今まで通り電話する。だが、忙しい時は…」
「いいの。その時はまた電話してね」
トニーの言葉は力強く、ペッパーにも笑顔が浮かんだ。電話越しのペッパーの笑い声に、トニーはあの日のことを思い出した。
「そうだ、ペッパー…。あの日言いかけたことだが…」
今のトニーに妊娠のことを伝えることはできない。これ以上、今の彼に負担をかけたくない。そう思ったペッパーは、明るい声で言った。
「ううん、何でもないの。会った時に話すわ」
「そうか…分かった」
「じゃあね、トニー。おやすみ。愛してるわ…」
「おやすみ、ペッパー。愛してる…」

電話を切ったペッパーは、お腹にそっと手を当てた。

ねぇ…、あなたのパパは一人で頑張ってるのよ。だから、寂しいけど…早くあなたのことを伝えたいけど…ママと一緒に頑張りましょうね…。

お腹をそっと撫でたペッパーは、ベッドに潜りこむと目を閉じた。

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Kiss the Teacher~卒業編2

それからのことをトニーは覚えていない。
急いで荷造りし、車を飛ばし、LAの病院へと向かった。

病院では重役たちがトニーを待ち構えていた。マリアは即死だったが、病院へ運ばれた時、ハワードまだ意識があり、トニーの名前をずっと呼んでいたらしい。
「ハワード様は最期までトニー様のことを言われていました。『すまなかった、トニー』と何度も言われていました…」
ハワードの死を看取った重役たちは、泣きながらトニーに伝えた。
それでもトニーは…すぐには現実を受け入れることが出来ないトニーは、涙の一つも流さなかった。

誰もいない教会。
両親の眠る棺の前でトニーは酒を呑んでいた。
いくら呑んでも酔えない。このまま酔い潰れて眠ってしまいたいのに…。棺に寄り掛かるように座り込んだトニーの足元には、何本もの空のボトルが転がっていた。
しばらくして、内ポケットが震えているのに気づいたトニーは、携帯を取り出した。
何十件もの着信履歴やメール。どれもハワードとマリアの死を知った知り合いからのものだった。
留守番電話に残ったメッセージを聞き始めたトニー。
『大変だけど頑張れよ』
『何かできることがあったら言ってくれ』
どれも励ましのメッセージだったが、今のトニーは聞く気にならず、一つずつ消していった。
ボタンを押すトニーの手が止まった。メッセージは、トニーが今一番そばにいて欲しい人物からのものだった。
『トニー?ペッパーよ。お父様とお母様のこと…。私もお別れを言いに行きたい…。お父様とお母様は、私を本当の娘のように思ってくださったもの…。もう一度お会いしてお話したかった…。トニー、お願いだから、無理しないでね…。愛してるわ…』
携帯を握りしめたトニーは、ペッパーのメッセージを何度も繰り返し聞いた。
何度目かを聞いたトニー。ペッパーからのものを保存すると、また一つずつ消していった。最後のメッセージは、今朝のものだった。差出人を見たトニーは息を飲むと、再生ボタンを押し、耳に近付けた。
『トニー。この間はすまなかった…。思えばお前には昔から、父親らしいことをしてきてやらなかったな…。すまなかった。お前があんな風に思っていたとは、知らなかった。許してくれ…。
アンソニー…父さんは…お前のことを世界一愛している。お前のことは、命に変えてでも守りたいとずっと思っている。お前のことを誇りに思っている。
トニー…私が生み出した最も素晴らしいものは…お前だ…。だから、お前なら…父さん以上に会社を大きくしてくれると信じている。トニー…戻って来い。父さんの手伝いをしてくれないか?頼む…トニー…』

それは、ハワードからの最期のメッセージだった。

今朝かかってきた電話に、俺はなぜ出なかったんだ…。最期があんな喧嘩別れだなんて…。何であの時、きちんと話をしなかったんだ…。
父さんは、俺のことをちゃんと見てくれていたのに…。俺のことを愛してくれていたのに…。どうして俺に向けてくれる愛を信じられなかったんだ…。

「ちくしょう…結局何も言えないままだったじゃないか…!」
手に持っていたボトルをトニーは床に投げつけた。

「父さん…母さん…ごめん…。俺を許してくれ…」
棺に縋り付いたトニーは、子供のように声をあげて泣き続けた。

3へ…

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Kiss the Teacher~卒業編1

3日後。
その日は朝からどしゃ降りの雨だった。
彼にしては珍しく寝過ごしたトニーは、慌ただしく準備をすると車に駆け込んだ。
エンジンをかけ出発しようとしたその時、携帯電話の着信音が車内に鳴り響いた。
画面を見ると、父親からだった。
だが、トニーは出なかった。
トニーは父親に何と言っていいのか、分からなかったのだ。

一方のペッパーは、自宅のバスルームにいた。
ここ数日、気分が悪い。眠くてたまらない。
それに…アレがこない…。もう随分と遅れている。
脳裏に浮かんだのは、2月のあの日。玄関先での情事。
あの時、酔った彼は避妊しなかった。一年近く前の誕生日の日を除けば、唯一彼が避妊しなかった日。
不安でいっぱいだが、嬉しそうに入学の準備する両親には言えなかった。悩んでいるトニーにも言えなかった。

「ヴァージニア!遅れるわよ!」
母親の声で我に返ったペッパーは、鏡で笑顔を確認すると、傘を差し家を飛び出していった。
途中、ドラッグストアに寄り検査薬を買ったペッパーは、カバンの奥底に突っ込むと学校へ向かって歩き出した。

学校へ着いたペッパーは人目を忍ぶようにトイレへ向かうと、一番奥の個室に入った。
1分後…。
恐る恐る結果を見たペッパーは、トイレに座り込んでしまった。
(ウソ…。どうしよう…)

授業開始のベルが鳴っても、ペッパーはその場から動けなかった。

奇しくも一限目はトニーの授業だった。
後ろからこっそり入ろうとしたペッパーだが、ペッパーがいないことを心配したトニーは見逃さなかった。
「ポッツくん、遅刻―」
ペッパーの様子にトニーは言葉を失った。
泣いていたのか目は赤く、顔もやけに青白い。
「すみません…」
今、トニーと目を合わせると泣きついてしまう…。
視線を落としながら席に着いたペッパーは、心配そうなトニーの視線に気付いてはいたが、顔を上げなかった。

授業が終わり、にぎわう教室。トニーに知らせようと席を立とうとしたペッパーだが、トニーの方が先に声を掛けた。
「ポッツくん、昼休みに部屋に来なさい。遅刻は遅刻だからな」

昼休みになっても、なかなか来ないペッパー。ペッパーの泣き出しそうな顔を思い出したトニーは、部屋の中を歩き回りイライラしながら待っていた。
そこへ
「先生…」
と遠慮がちにペッパーが入って来た。
何かに怯えたような瞳をしたペッパーの目には涙が溜まっている。
思わずペッパーを抱きしめたトニーは、涙を拭うと瞳を見つめた。
「どうしたんだ?顔色悪いぞ?何かあったのか?」
ポケットに入れた検査薬をそっと触ったペッパーは、深呼吸をした。
「あ、あのね…」
その時、トニーの携帯がけたたましく鳴り出した。
「すまない、ペッパー。少し待ってくれ…。スタークだ……。……えっ?…何だって…?」
みるみるうちに顔面蒼白となったトニーは、通話ボタンを切ると、携帯を床に落とした。
携帯を拾ったペッパーは、固まったまま動かないトニーの腕を掴んだ。
「トニー?」
呆然としたトニーは、震える声で呟いた。
「よく分からないんだが…。親父とお袋が…死んだ…」
「え…」
「事故で…死んだと言われたよ、ペッパー…。親父とお袋が…死んだと…」

お父様とお母様が…亡くなった?
あれが最初で最後の対面になってしまったの?
ペッパーに向かい『トニーを頼む』と言ったハワードの姿と、本当の娘のように接してくれたマリアの姿が脳裏に浮かび、ペッパーの目からは涙が零れ落ちた。

その場から動こうとしないトニー。そのトニーの背中を押すように、ペッパーはドアに向かった。
「トニー…早く行ってあげて…。お父様とお母様、あなたのことを待っているわよ…」
「だが、先に君の話を…」

気が動転しているトニーに、妊娠のことは話せない。本当は付いて行ってあげたいけど、それは出来ない…。少し落ち着いてから話そう。それまでは、一人で頑 張ろう…。

涙で濡れた顔を擦ったペッパーは、トニーに向かい微笑んだ。
「私のことは大丈夫。また別の日に話すわ。だから、早く…」

2へ…

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Kiss the Teacher~春編序曲

4月。
校長室から出てきたトニーは、先ほどのやり取りを思い出し、ため息を付いた。

「一身上の都合で…」と言いかけたトニーを、フューリー校長はニヤニヤしながら遮った。
「スターク、言うな。分かっている。君がここを辞めてお父上の会社を継ごうとしていることもな。君のような優秀な先生を失うのは残念だが、仕方ない。9月までに君の後釜を探すとしよう」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げ部屋を退出しようとしたトニーに、校長が声を掛けた。
「そうだ、スターク。君のもう一つの秘密も、きちんとしてやれよ。無事合格したそうだな。よかったな、LAでは一緒に住めるじゃないか?」
「なっ!」
目を丸くして振り返ったトニーを校長は指さした。
「いつも私が見ていることを忘れるなよ、スターク」

誰にもバレていないと思っていたが、結局あの校長には、全てバレていたってことか…。
肩を落としたトニーは、部屋に向かって歩き始めた。
まだ時間はあるとはいえ、そろそろ整理しておかないと…。
部屋に戻ったトニーは、室内を片付け始めた。

その夜、身体が離れた後、ペッパーを抱きしめ髪の毛を弄んでいたトニーが、思わぬことを言い始めた。
「なぁ、ペッパー。LAへ行ったら一緒に住まないか?」
「え!」
驚きのあまり飛び上がったペッパーは、トニーの身体に馬乗りになった。
「一緒に住んでいいの⁈」
「ああ。実家には住みたくない。家を買おうと思っているんだ。だったら一緒に住もう。君がそばにいてくれるなら、俺はどんなことでも乗り越えられるから…」
「うん」
ペッパーの目からは、ぽろぽろと涙が零れ始めた。
「泣くなよ。実は何軒か目星を付けているんだ。君が気に入ってくれればいいんだが…。そうだな、再来週あたりに見に行くか? それと、卒業式が終わったら、その足で君のご両親に挨拶に行かないと。今まで隠していたことを謝って、君との結婚を許してもらわないとな」
「うん…」
自分の腹の上に座って泣きじゃくるペッパー。喜んでくれるのはいいんだが…体勢的に非常にマズイ…。
再び下半身が熱くなるのを感じたトニーは、腰をもぞもぞ動かした。その拍子に、ペッパーの尻に当たってしまい…。
顔を真っ赤にしたペッパーが、恥ずかしそうにつぶやいた。
「トニー…当たってる…」
「知ってるさ。君が誘うからだぞ。おさまりがつきそうにないなぁ」
ニヤニヤ笑いながら言うトニーは、とても楽しそうだ。
口を尖らせたペッパーは
「しょうがないわね…。私が何とかするわ…」
と言うと、ベッドサイドに手を伸ばし、ゴムを取り出したペッパーは、トニーに被せると腰をゆっくりと落としていった…。
***

翌朝、階下から聞こえる声でペッパーは目を覚ました。
そっと覗くと、スーツを着た男性がトニーと何やら話をしている。
「トニー様、一刻も早く戻ってきて下さい」
「言っただろ?秋に戻るつもりだと。今はマズイんだ…」
「では、一度でもいいんです。顔を覗かせてください!マリア様もですが、最近社長も元気がないんです。トニー様のことばかり口にされています。『あいつにはひどいことをしてしまった…。会いたい』と…」
「…」

黙り込んでしまったトニーはしばらく顔を伏せていたが、大きく深呼吸すると前を見据えて言った。
「分かった…。だが、今すぐは無理だ。卒業式が終わったら…5月になったら戻る。それまでに一度…そうだな、来週にでも一度帰るよ…」

玄関が閉まる音がし、ペッパーは慌ててシーツに潜り目を閉じた。
しばらくして、階段を上がってくる音がし、トニーが隣に潜りこんできた。
背中を向けているペッパーを背後から抱きしめたトニーは、ペッパーが起きていることの気付いたのだろう。
「来週LAへ行ってくる。すぐ戻って来るから…」
その言葉に無言で頷いたペッパーのうなじに、トニーは唇を這わすと、ペッパーに脚を絡ませ再び甘く柔らかな身体に溺れていった。

この先は2パターンのお話を用意しています。
 →卒業編:卒後編の”Need You Now”に繋がります
 →ハワードも登場する別ED

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