4月。
校長室から出てきたトニーは、先ほどのやり取りを思い出し、ため息を付いた。
「一身上の都合で…」と言いかけたトニーを、フューリー校長はニヤニヤしながら遮った。
「スターク、言うな。分かっている。君がここを辞めてお父上の会社を継ごうとしていることもな。君のような優秀な先生を失うのは残念だが、仕方ない。9月までに君の後釜を探すとしよう」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げ部屋を退出しようとしたトニーに、校長が声を掛けた。
「そうだ、スターク。君のもう一つの秘密も、きちんとしてやれよ。無事合格したそうだな。よかったな、LAでは一緒に住めるじゃないか?」
「なっ!」
目を丸くして振り返ったトニーを校長は指さした。
「いつも私が見ていることを忘れるなよ、スターク」
誰にもバレていないと思っていたが、結局あの校長には、全てバレていたってことか…。
肩を落としたトニーは、部屋に向かって歩き始めた。
まだ時間はあるとはいえ、そろそろ整理しておかないと…。
部屋に戻ったトニーは、室内を片付け始めた。
その夜、身体が離れた後、ペッパーを抱きしめ髪の毛を弄んでいたトニーが、思わぬことを言い始めた。
「なぁ、ペッパー。LAへ行ったら一緒に住まないか?」
「え!」
驚きのあまり飛び上がったペッパーは、トニーの身体に馬乗りになった。
「一緒に住んでいいの⁈」
「ああ。実家には住みたくない。家を買おうと思っているんだ。だったら一緒に住もう。君がそばにいてくれるなら、俺はどんなことでも乗り越えられるから…」
「うん」
ペッパーの目からは、ぽろぽろと涙が零れ始めた。
「泣くなよ。実は何軒か目星を付けているんだ。君が気に入ってくれればいいんだが…。そうだな、再来週あたりに見に行くか? それと、卒業式が終わったら、その足で君のご両親に挨拶に行かないと。今まで隠していたことを謝って、君との結婚を許してもらわないとな」
「うん…」
自分の腹の上に座って泣きじゃくるペッパー。喜んでくれるのはいいんだが…体勢的に非常にマズイ…。
再び下半身が熱くなるのを感じたトニーは、腰をもぞもぞ動かした。その拍子に、ペッパーの尻に当たってしまい…。
顔を真っ赤にしたペッパーが、恥ずかしそうにつぶやいた。
「トニー…当たってる…」
「知ってるさ。君が誘うからだぞ。おさまりがつきそうにないなぁ」
ニヤニヤ笑いながら言うトニーは、とても楽しそうだ。
口を尖らせたペッパーは
「しょうがないわね…。私が何とかするわ…」
と言うと、ベッドサイドに手を伸ばし、ゴムを取り出したペッパーは、トニーに被せると腰をゆっくりと落としていった…。
***
翌朝、階下から聞こえる声でペッパーは目を覚ました。
そっと覗くと、スーツを着た男性がトニーと何やら話をしている。
「トニー様、一刻も早く戻ってきて下さい」
「言っただろ?秋に戻るつもりだと。今はマズイんだ…」
「では、一度でもいいんです。顔を覗かせてください!マリア様もですが、最近社長も元気がないんです。トニー様のことばかり口にされています。『あいつにはひどいことをしてしまった…。会いたい』と…」
「…」
黙り込んでしまったトニーはしばらく顔を伏せていたが、大きく深呼吸すると前を見据えて言った。
「分かった…。だが、今すぐは無理だ。卒業式が終わったら…5月になったら戻る。それまでに一度…そうだな、来週にでも一度帰るよ…」
玄関が閉まる音がし、ペッパーは慌ててシーツに潜り目を閉じた。
しばらくして、階段を上がってくる音がし、トニーが隣に潜りこんできた。
背中を向けているペッパーを背後から抱きしめたトニーは、ペッパーが起きていることの気付いたのだろう。
「来週LAへ行ってくる。すぐ戻って来るから…」
その言葉に無言で頷いたペッパーのうなじに、トニーは唇を這わすと、ペッパーに脚を絡ませ再び甘く柔らかな身体に溺れていった。
この先は2パターンのお話を用意しています。
→卒業編:卒後編の”Need You Now”に繋がります
→ハワードも登場する別ED