Kiss the Teacher~学園編別ED1

父親と和解するハッピーエンドもあってもいいかなと書いた別EDです。

翌週末、ペッパーが目を覚ますと、トニーからのメールが届いていた。
『LAへ行ってくる。明日には戻る』
寝ぼけ眼を擦りながら階下へ降りると、母親がTVのニュースを見ていた。
「おはよう、ママ。どうしたの?」
「あら、ヴァージニア、早いわね。見て、LAは凄い雨よ。珍しいわね…。こっちは降らなきゃいいけど…」
トニー…無事に着いてればいいけど…。
なぜか分からないが、胸騒ぎがしたペッパーは、頭を振るとジュースを飲み干した。

豪雨のLAを一台のリムジンが走っている。せっかく家族で集まったのだから食事に行きましょう?というマリアの提案で、リムジンには市内のホテルに向かうスターク一家の姿があった。
ハワードとマリアと向かい合うように座ったトニーは、窓の外を見つめており、何も話そうとしない。
一方のハワードもマリアとは話をするが、トニーとは目を合わせようともしない。
「すごい雨よ…。ねぇ、二人とも…」
二人の間を取り持つかのようにマリアが口を開いたその時…。
突然飛び出してきた一台のトラック。
運転手が急ブレーキを踏んだが、スリップした車はトラックにぶつかると、横転した。
マリアはハワードをかばうようにとっさに身を投げた。だが、ドアに寄りかかっていたトニーは車外へ放り出された。

***

ハワードが目を開けると、騒然とした現場は、レスキュー隊のみならず多くのマスコミや野次馬に取り囲まれていた。
幸いにも軽症で済んだハワードは、担架で救急車に乗せられようとしていた。だが、マリアとトニーの姿は見えない。
「おい!妻と息子はどこだ!!」
首を伸ばし二人の姿を探すハワードに、救急隊が声を掛けた。
「マリア様は先に病院へ運びました。トニー様はまだ救助中です!」
見ると車数台が重なりあった場所で、レスキュー隊がトニーに声を掛けながら必死に作業をしている。それに気付きパニックになったハワードは身をよじり叫んだ。
「私はいいから、早く息子を!トニーを助けてくれ!」
今にも起き上がりトニーの元へ向かおうと暴れるハワードに救急隊が鎮静剤を打った。
薄れゆく意識の中でハワードは祈った。

息子を…トニーを…助けてくれ…私の命はどうなってもいいから…。

***

次にハワードが意識を取り戻すと、そこは病院だった。
「ハワード様、気付かれましたか?」
重役や医師たちが取り囲む中、ハワードはまだ朦朧とする頭で必死に思い起こそうとした。
最後に見た光景…折り重なった車の隙間から見えた血塗れのトニーを思い出したハワードは、周りの人々に向かって叫んだ。
「マリアは?トニーは…トニーは無事か?!」
重役たちは一斉に顔を下に向けた。ハワードの側近とも言える男が皆に目配りすると、重い口を開いた。
「ハワード様…マリア様は…お亡くなりになりました。即死でした」
「マリアが…そんな…。と、トニーは?!息子は無事なんだろうな!」
「トニー様は…意識不明の重体です。トニー様は車外に放り出され、後続の車数台に轢かれました…。全身を強く打ち、出血も酷く…。それと…心臓近くに金属の破片が刺さり…リスクが大きく手術できないと言われました。今は頑張っていらっしゃいますが…非常に危険な状態です…。ハワード様…残念ですが…覚悟を…」

妻は…マリアは…死んだ…。
マリアばかりでない…。トニーが…死ぬだと?!
私の大事な息子が…こんなことで命を落とそうとしているのか?

にわかに信じられないハワードは、ベッドから起き上がると声を荒げた。
「嘘だ…嘘に決まってる。息子が…トニーが死ぬだと!!おい!世界中の名医を呼べ!何としてもトニーを助けるんだ!」
「今、全力で探しています。ただ、手術はリスクが高く、万が一の時は…」
言葉を濁した医師は、ハワードに一礼すると退室した。
頭を抱えたハワードは、肩を震わせた。ひたすら息子の名前を呼ぶハワードに、誰も声をかけることはできなかった。

しばらくして顔をあげたハワードは、そばにいた重役たちに言った。
「息子には大切な女性がいる…。彼女を呼んでやってくれ…。それと、心臓の権威の先生に片っ端から連絡を取れ!」

***

その頃…。
昨日から胸騒ぎが止まらないペッパーは、トニーの携帯に電話をかけていた。だが、昨晩から電源を切っているのか一向に繋がらない。
「どうしたのかしら…」
不安に思いつつ、何度もリダイヤルしていた時だった。
(…ぺっぱー…)
トニーに呼ばれた気がし、ペッパーは窓の外に視線を向けた。
(トニー?もしかして、何かあったの?)
何かあればニュースで言うはず…。そう思ったペッパーは、リビングへ急いだ。

リビングに向かうと、父親と母親がテレビに釘付けになっていた。
「おはよう、パパ、ママ…どうしたの?」
真っ青な顔をした母親が振り返った。
「ヴァージニア…大変よ…。スターク先生が…」
テレビを見たペッパーは、言葉を失った。
ニュースでは昨夜の事故の様子を繰り返し伝えており、血塗れで病院へ運ばれるトニーの姿も映し出されていた。
マリアと運転手は即死、トニーも意識不明の重体。唯一軽傷だったのが、ハワードだった。
(トニーが…、トニーが死んじゃう…)
真っ青な顔で震えるペッパーは、ソファーへ座り込んだ。
「お気の毒ね…。学校からお見舞いに…」
「ヴァージニア?どうしたんだ?」
涙を浮かべ祈るようにしているペッパーは顔面蒼白で、今にも倒れそうだ。
娘の異変に気付いた母親は、そっと娘を抱きしめた。
「どうしたの?そういえば、あなた、スターク先生に勉強教えて頂いていたわね…」
(違うの、ママ…。トニーは、私の…。そうよ!トニーが呼んでる…。そばにいてあげなきゃ…)
顔を擦り涙を拭きとったペッパーは、意を決し両親の顔を見つめた。
「あのね…ずっと秘密にしてたんだけど…」
静まり返った部屋にインターフォンが鳴り響いた。
「誰だ?こんな朝早くから?」
父親が玄関を開けると、目の前にはスーツを着た男性が悲壮な顔をして立っていた。
「ヴァージニア・ポッツ様の御宅ですか?ハワード・スタークの代理の者です。お迎えに参りました。トニー様が…」
突然現れた使者。『スターク』という名前を聞いたペッパーの両親は状況が全く掴めず戸惑った。
「ヴァージニア?どういうことなの?」
(こんな形でパパとママには、報告したくなかった…。でも、言わなきゃ…)
ペッパーは大きく深呼吸すると、重い口を開いた。
「パパ、ママ…実は…」

2へ…

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