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Another World of 2012:NY…⑰

その時…。
「パパ!!」
可愛らしい声に、トニーが止まった。目を見開いた彼は、声の方へ顔を向けた。すると、唇を震わせたトニーが何か呟いた。
「もー…がん……」
ピーターが恐る恐る振り返ると、ストレンジがポータルを開いていた。そしてその側には、ペッパーとモーガンが立っていた。

ペッパーは胸が締め付けられた。戦いに勝つために、身も心も捧げてしまった変わり果てた夫の姿に…。目の前にいるのは、自分の愛するトニーではなかった。返り血を浴び全身を血で染めた彼の目は、殺戮と人々の恐怖を楽しむ、残忍なものに変わっていたから…。

だが、トニーは娘の声に反応した。今彼のことを救えるのは、自分たちの最愛の娘だけ…。

ペッパーはしゃがみこむとモーガンに何事か囁いた。こくんと頷いたモーガンは、母親から手を離すと父親の元に駆け寄った。
「パパ…だいじょぶよ…。あたちとママがいるよ…。パパ…3000かい、あいちてる」
モーガンがトニーの手を握りしめた。
すると、トニーの瞳から一切の怒りが消滅した 。トニーが身体を震わせると、彼の身体から力が抜けた。
「モーガン……」
娘の名を呼んだトニーは、ペッパーを見つめた。その瞳は、茶目っ気たっぷりの琥珀色に戻っていた。
「トニー…」
ペッパーは微笑んだ。愛するトニーが帰ってきてくれたのだから…。
ペッパーにつられてトニーも微笑んだ。だが、彼は限界だった。全ての力を…いや、それ以外の力を使い果たした彼の身体は、限界を超えてしまった。

ふらついたトニーが倒れた。
「スタークさん!!」
ピーターはトニーを支えた。ぐったりとしたトニーに、ピーターの頭を最悪の事態が過ぎった。慌てて首元に指を当てたが、しっかりと脈打っており、ピーターは安心したように息を吐いた。
駆け寄ってきたペッパーは、トニーの手を握りしめた。
トニーはイビキをかいて眠っていた。
「ゆっくり休んで…」
そう囁いたペッパーは、トニーの頬にそっとキスをした。

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Another World of 2012:NY…16

結局トニーは戦いの場へ戻って行った。

地球に降り立った侵略者たちは、インフィニティ・ストーンを狙っていた。地球での戦いは終わらず、トニーたちは宇宙へ戦いの舞台を移した。

あの日…NYで見た宇宙の先に…脅威の先に君臨しているサノスは、今までのどの敵よりも強かった。

タイタンでの戦いは死闘となった。
敵う相手ではなかった。
次々と仲間は倒れていった。
成すすべがなかった。

それでもトニーは一人立ち向かった。
自分の知識と技術の集大成と言うべきアーマーで、サノスと互角に渡り合った。

が、それも一時にしか過ぎなかった。
剣のようにアーマーを変化させたトニーだが、それをサノスは簡単に折った。そしてトニーに突き刺した。
肉と骨を突き破り、剣が身体を引き裂いていく…。身体の中を抉るようにサノスは突き刺さった剣を動かした。

肺が潰れ、トニーは息ができなくなった。
口から血を流し始めたトニーに、サノスは嫌な笑みを浮かべると、剣を引き抜いた。
傷口から血が飛び散った。

トニーの頭を掴んだサノスは、彼を睨みつけた。

この男は消し去らねば厄介だ…。ずっと見てきたが…この男だけは、この手で消し去らねばならない…。

サノスがずっと感じていた唯一の脅威、それがトニーだった。

トニーにトドメを刺そうとストーンを起動させた。
殺されかけているトニーに、ストレンジは石を差し出そうと決意した。
サノスを倒す唯一の方法、それはここでトニーの命を助け…数年後に彼が自分の命と引き換えに、宇宙を守ることだから…。

と、トニーは立ち上がった。
こいつをここで倒さねば、全てが奪われる…。
すぅっと息を吸い込んだトニーは、怒りに身を任せた。

アーマーは壊れ、もはや武器は自分の身体しかないが、トニーは戦った。

ペッパーとモーガンを守りたい…その一心だった。

あの時…マンダリンの事件の時、ペッパーは危険を顧みず、キリアンを倒したじゃないか…。
それなら自分にも…この与えられたエクストリミスのパワーがある今、目の前の悪魔を倒すことができるはずだ…。

トニーの身体が光り輝き始めた。
今まで感じたことがない程の怒りに身を任せたトニーは、力がみなぎるのを感じた。

自分はどうなってもいい…。この身が焼き尽くされようとも、ペッパーとモーガンを守れるのなら…。

トニーの力はサノスを圧倒していた。
その光景に、ストレンジは目を見張った。
モーガン・スタークがエクストリミスに侵食されているのは知っていた。だが、その親であるトニー・スターク自身も、侵食されていたのは、予想外だった。自分が見た未来…トニーが命を差し出してストーンを使う未来が唯一の方法だと思っていたが、とんだ計算違いだったと、ストレンジは微かに笑みを浮かべた。

ただの人間ごときに、何故打ち負かされようとしているのかと、サノスは焦った。力負けするのならば、身体を引きちぎり殺してやると、サノスはトニーの腕を掴んだ。そして思いっきり引っぱった。
トニーは悲鳴を上げた。引きちぎられた両腕が地面に転がっている。
だが、トニーには何ともなかった。
腕はすぐに再生した。そしてトニーは再びサノスに殴りかかった。

この男は…一体どんな力を身につけているんだ…。ただの人間のくせに…。

サノスの顔に初めて恐怖の色が滲み出た。

倒しても傷つけても、起き上がるトニーを掴んだサノスは、地面に思いっきり叩きつけた。
「いいか!私は絶対なんだぞ!」
サノスが叫んだ。腹ただしげに叫んだ。
トニーが顔を上げた。怒りに支配された瞳でトニーはサノスを睨みつけた。
「それなら…私は、アイアンマンだ!」
トニーは叫んだ。叫びながらサノスに向かった。サノスの背後に回ったトニーは、背中によじ登ると、首に腕を回した。そして躊躇なく、思いっきり締め上げた。

その場を切り裂くような悲鳴と鈍い音がし、サノスの首が転がり落ちた。

サノスが血飛沫を上げながら倒れた。
同時に、トニーも地面に叩きつけられた。

辺りは静まり返った。
圧倒的なトニーの力に、皆恐れ慄いた。
彼は普通の人間にはない力を持っている…。彼は人間ではない…。
ストレンジ以外のその場にいた者全員が、トニーから距離を置くようにゆっくりと動き始めた。
スパイダーマンことピーター・パーカーですら、トニーを怖いと思った。

トニーが立ち上がった。
怒りを、そして解放された力を抑え切ることが出来ないトニーは、顔を伏せると小さく呻き声を上げた。

トニーの心はエクストリミスの闇に支配されかけていた。
先ほどの殺戮を楽しいと感じてしまった。もっと味わいたい…もう誰でもいいから…殺したい…。首を切り、喉を掻き切り、血を浴び、そして味わいたい…。

ペロリと唇を舐めたトニーが顔を上げた。
トニーの瞳は、ピーターの知っているトニーのものではなかった。まるで周りの全てのものを焼き尽くし破壊するような恐ろしい瞳をしたトニーに、ピーターは怯えた表情を見せた。
「スタークさん…」
ピーターの声に、トニーが身体を震わせた。
ピーターを捉えたトニーは、彼をターゲットに定めたのか、ゆっくりと近づいてきた。

どう料理してやろうか…。手足を引きちぎり、身体を切り刻み、最後に首を落としてやろう…。

ニヤリと笑ったトニーが手を伸ばした。まるでこれから楽しいゲームをするというように…。

ピーターは足が動かなかった。
ピーターにとって、トニーは師であり、そしていつしか父親のような存在になっていたから…。
接する機会は多くなかったが、ピーターの心の中でトニーの存在は大きくそして大切なものになっていたのだ。
だから今目の前にいるトニーが、そのトニーと同じだとは到底思えなかった。怒りに支配された彼の中に、きっとあの優しく頼もしいトニー・スタークが残っていると思ったピーターは、そのトニーを呼び戻すように叫んだ。
「スタークさん!」
すると、トニーが立ち止まった。が、再び彼は歩き始めた。トニーが目の前に迫ってきた。嫌な笑みを浮かべたトニーは、震えるピーターの首を掴もうとした…。

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Another World of 2012:NY…15

アベンジャーズは分断してしまった。
トニーは仕方なく、世界にまた目を向けることになった。
幸いにも敵は襲ってくることはなく、アイアンマンの出番も殆どなかった。

再び平穏な日々が戻ってきた。いや、平穏な風を装っているが、何かが変わってしまった。
トニーは再びアーマー作りに没頭していった。まるで脅威がすぐそこに迫っているのが分かっているかのように…。
そして彼は時折悪夢を見るようになった。夜中に魘され、飛び起きることもあった。その度にペッパーは、大丈夫だと言い続け、トニーが落ち着くまで彼を抱きしめた。

ペッパーとモーガンがいる…そのことだけがトニーの救いだった。その救いに縋るように、トニーは自分の人生を生きようともがいた。

だが、運命は避けられなかった。
ついに宇宙から敵がやって来たのだ。
それはモーガンが2歳になった年だった。

その日、トニーとペッパーはモーガンを連れて公園にやって来た。
芝生の広がる広場で、3人はボール投げをして遊んでいた。
「ほら、モーガン!いくぞ!」
トニーがポンっとボールを投げた。が、モーガンは受け止め損ねた。転がっていくボールを、モーガンは追いかけた。
と、突然目の前に不思議な格好をした男性が現れた。何処からともなく出現した男性は、モーガンに微笑むと、トニーの元へ向かった。
「トニー・スターク、話がある」
そう告げた男は、ストレンジと名乗った。そして脅威が迫っているため、トニーに共に来て欲しいと告げた。
ペッパーはトニーの腕を掴んだ。まるで行かないでというように…。
母親の悲しみを感じたモーガンは、頬を膨らませた。
何とかしてあのおじさんを止めなければ…。
そう考えたモーガンは息を吸い込んだ。両親から人前では禁じられている自分の力を発揮すべきだと考えたモーガンは、ストレンジと名乗った男のマントを掴んだ。
モーガンがマントを引っ張ると、ストレンジがよろけた。
幼児らしからぬ力に、振り返ったストレンジは、真っ赤な瞳をしたモーガンに目を細めた。
(この子はエクストリミスに侵されている…)
骨の髄まで侵食されているモーガンに、ストレンジはこの子が場合によっては地球の脅威になる日が来るかもしれないと感じたが、今はそれよりも先に解決すべきことがある。
「お嬢さん、離してくれ」
優しくそう言ったつもりだが、モーガンはストレンジを睨みつけた。
「いや!パパとママ、あたちといるの!」
モーガンは両親を…特に父親を守ろうと必死だった。ここでこの男と共に父親を行かせれば、父親が傷つくと感じたから…。
モーガンが唇を噛みしめた。顔がオレンジ色に光り始めた。
(まずい…)
ペッパーと視線を交わしたトニーは、娘の元に駆け寄ると彼女を抱きしめた。
「モーガン、話を聞くだけだ。パパはすぐに戻ってくるから…」
父親になだめられたモーガンから、ふっと力が抜けた。
「ホント?」
いつもの落ち着きを取り戻した娘の頬にトニーはキスをした。
「あぁ、すぐに戻る」
そう言うと、ようやく安心したのか、モーガンは父親にキスをした。
「パパ…あいちてる…」
「パパもだよ…」

父と娘の光景に、さすがのストレンジも胸が痛んだ。
これが今生の別れとなるかもしれないのだから…。

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Another World of 2012:NY…14

そしてトニーはNYへと帰ってきた。
ピーターを家まで送り届けたトニーが自宅に着いたのは日付が変わる頃だった。
さすがにもう眠っているだろうと、そっと家に入ったが、ペッパーは起きていた。
リビングでペッパーはトニーを待ってくれていた。
「ただいま…」
そっと呼びかけると、ペッパーは泣きながら抱きついてきた。
「よかった…無事でよかった……」
シクシク泣き続けるペッパーを抱きしめたトニーは、妻の香りを吸い込んだ。
「エクストリミスのおかげで、死なずにすんだ」
そう告げると、ペッパーは再び泣き始めた。

シャワーを浴び、ペッパーが作ってくれた夜食を食べたトニーは、少しだけ気分が晴れた。そこで、トニーはシベリアでの出来事をペッパーに話した。
話を聞くうちに、ペッパーは怒りを露わにし始めた。と同時に、彼女の身体が光り始めた。
「ハニー、落ち着け」
自分も落ち着いている訳ではないが、まずは妻を宥めようとしてみたが、ペッパーは立ち上がると叫んだ。
「落ち着けですって?!トニー、どうしてあなたがこんなに苦しまなきゃいけないの?!あなただけが、どうしていつも苦しまなきゃいけないのよ!」

ペッパーは叫んだ。ボロボロと大粒の涙を流しながら…。顔を覆ったペッパーは、座り込むと声を上げて泣き始めた。

ペッパーだけが、いつも自分のことのように、泣いて笑ってくれる…。彼女だけが自分のことを心から愛してくれている…。

十分じゃないか。そんな存在が一人でもいるんだから…。
トニーは心が楽になった。
ペッパーがそばにいてくれるだけで、怒りや苦しみが薄らいでいくのだ…。

「君がそうやって怒って泣いてくれて、救われたよ…」
微かに笑みを浮かべたトニーは、ペッパーを抱き寄せた。
しゃくりあげながらも顔を上げたペッパーは、涙を拭うと夫の疲れた顔を見つめた。
「もう休みましょ?疲れたでしょ?」
「あぁ…だが、それより、君が欲しい…」
トニーはペッパーを見つめた。
ペッパーの温もりも求めるかのように、ギュッと抱きついてきたトニーは、子供のように胸に顔を埋めた。泣き出しそうな夫の頭をペッパーは優しく抱えた。
「いいわよ…」

トニーはペッパーを抱いた。
全ての苦痛から逃れるように…。
ペッパーを抱く時だけは、何もかも忘れることができたから…。

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Another World of 2012:NY…13

数時間後、トニーはドイツへと飛んだ。
逃走の末、捕らえられたスティーブと、トニーは面会した。
何とか事態を収拾しようと説得を試みたが、スティーブはトニーを信用してくれなかった。そればかりか、隙を見て再び逃走してしまった。

トニーは溜息をついた。最悪なことに、胸が痛くなってきた。リアクターを除去して以来、心労が重なると、時折不整脈を起こしていたが、こんな時に起きるなんて…と、トニーは何度も深呼吸をした。

スティーブを逮捕しろと、ロスに嗾けられたトニーは、彼らを傷つけずに確保するために、一人NYへと戻った。

目的地へ向かう前に、トニーは自宅へ立ち寄った。
戻ってきた父親に、モーガンは嬉しそうに手を伸ばした。
「ぱぁぱ…」
顔を擦り寄せてきた娘の温かさに、トニーは気分が少しだけ楽になった。
トニーはドイツでの出来事をペッパーに話した。そしてこれからやろうとしていることを…。
トニーの話を聞き終えたペッパーは頷いた。
「トニー、あなたが正しいと思うことをやって…。きっと大丈夫よ…」
妻の言葉だけが支えだった。妻だけが…ペッパーだけが、自分を心の底から信頼してくれているのだから…。

数時間後、トニーはクイーンズにいた。
目的は、若きヒーローを仲間に加えるため。
数ヶ月前から活動を始めたスパイダーマン。ピーター・パーカーという高校生が、マスクを被りヒーロー活動を行なっているが、実際会ってみると、ピーター・パーカーは余りにも幼かった。
まだ子供の彼を巻き込むのかと非難を浴びそうだが、誰も傷つけずに捕まえるためには、彼の…スパイダーマンの能力に頼るしかなかった。
憧れのアイアンマンだと目を輝かせるピーターを引き連れ、トニーは再びドイツへと戻った。

空港を封鎖したトニーは、スティーブたちを待ち構えた。こちらもワカンダの王となったティ・チャラを仲間に加えていたが、スティーブの方もホークアイなど仲間が増えていた。最後にもう一度説得を試みようとしたトニーに、スティーブは告げた。この事件は、裏でジモという男が糸を引いていると…。信じてくれと言うスティーブだが、トニーは何を信じればいいのか分からなかった。
お互い信じることが出来なかった。結果、アベンジャーズは戦いあった。そしてスティーブはバッキーと共に逃走した。

2人はシベリアへ向かったと情報を掴んだトニーは、一人追いかけた。というのも、スティーブの話…つまりジモという男が真犯人だという証拠が見つかったから。トニーはスティーブをもう一度だけ信じてみることにした。洗脳が解けたバッキーとも一時休戦したトニーは、3人でジモを追い詰めようとした。
が、全てが罠だった。アベンジャーズを分断するための、巧妙に仕掛けられた罠だった。

トニーは両親の死の真相を知った。
両親は、ウィンターソルジャーに殺されたという真実を…。
両親が殺される映像を見せつけられたトニーは、傍に立つスティーブを思わず見た。
「…知ってたのか…」
スティーブは何も言わなかった。
彼は知っていたのだ。
それなのに自分に隠していた。
父親のみならず、母親まで突然奪われたその気持ちを、スティーブは労りもしなかった。
親友を守るために、トニー・スタークの気持ちを踏みにじったのだ。

悔しかった。
自分も親になり、父親の気持ちが分かるようになった。いがみ合っていたのも、今ではいい思い出だとやっと思えるようになってきたのに…。
それに、妻と娘を紹介することもできないのに…。

それなのに、スティーブは
「バッキーは洗脳されていたんだ。だから仕方ない」
と、目に涙を浮かべているトニーに告げた。

大切な両親を突然奪われた。それを仕方ないの一言でスティーブは済まそうとしている…。

トニーは怒り狂った。
怒りの矛先をバッキーに向けた。
が、そこにスティーブは割って入った。バッキーを守るために…。
「仲間だと思ってたんだぞ!」
トニーがそう叫んでも、スティーブは受け止めてくれなかった。

悔しかった。情けなかった。
こんな奴を信じようとした自分が情けなかった。

2人は戦った。いや、スティーブにはバッキーが付いていた。2対1の戦いだったが、スティーブたちに超人血清があるように、トニーにはエクストリミスがあった。
アーマーが壊れても立ち向かってくるトニーの瞳は、見たことがない程真っ赤に燃えており、スティーブは初めてトニーが怖いと感じた。
トニーの首元がオレンジ色に光り出した。いや、身体全体が輝いているではないか。
スタークは一体どうしたのだろう…。先日目撃した彼の娘もだが、トニーは人間の領域を超えた力を手に入れてしまったらしい…。
そう気づいたスティーブだったが、怒りに任せたトニーが彼を叩きのめした。
スティーブの首元に手を置いたトニーは、ギュッと締め付けた。
が、トニーは我に返った。
ここでスティーブを殺せば、自分はウィンターソルジャーと同じになってしまうと…。
その瞬間、トニーに隙ができた。その隙をスティーブは見逃さなかった。
スティーブが盾をトニーのリアクターに叩きつけた。リアクターは破壊され、アーマーが停止した。

トニーは動けなくなった。
そんなトニーを尻目に、盾を投げ捨てたスティーブはバッキーと共に再び逃走した。

「くそっ……」
涙が止まらなかった。
悔しくてたまらなかった…。
自分は彼らを止めることも、そして両親の恨みを晴らすこともできなかったのだ。

ドイツで待機しているハッピーに何とか連絡を取ったトニーは、破壊されたアーマーを脱いだ。
極寒の洞窟だが、今のトニーは体温自体が高いので凍えずにすんだ。

数時間経ち、ハッピーが迎えにやって来た。
「ボス…………」
顔中血だらけだが傷一つないトニーに、ハッピーはほっと息を吐いた。だが、トニーの表情は硬く、そして暗かった。何も喋らないトニーを連れて、ハッピーは帰路へとついた。

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