結局トニーは戦いの場へ戻って行った。
地球に降り立った侵略者たちは、インフィニティ・ストーンを狙っていた。地球での戦いは終わらず、トニーたちは宇宙へ戦いの舞台を移した。
あの日…NYで見た宇宙の先に…脅威の先に君臨しているサノスは、今までのどの敵よりも強かった。
タイタンでの戦いは死闘となった。
敵う相手ではなかった。
次々と仲間は倒れていった。
成すすべがなかった。
それでもトニーは一人立ち向かった。
自分の知識と技術の集大成と言うべきアーマーで、サノスと互角に渡り合った。
が、それも一時にしか過ぎなかった。
剣のようにアーマーを変化させたトニーだが、それをサノスは簡単に折った。そしてトニーに突き刺した。
肉と骨を突き破り、剣が身体を引き裂いていく…。身体の中を抉るようにサノスは突き刺さった剣を動かした。
肺が潰れ、トニーは息ができなくなった。
口から血を流し始めたトニーに、サノスは嫌な笑みを浮かべると、剣を引き抜いた。
傷口から血が飛び散った。
トニーの頭を掴んだサノスは、彼を睨みつけた。
この男は消し去らねば厄介だ…。ずっと見てきたが…この男だけは、この手で消し去らねばならない…。
サノスがずっと感じていた唯一の脅威、それがトニーだった。
トニーにトドメを刺そうとストーンを起動させた。
殺されかけているトニーに、ストレンジは石を差し出そうと決意した。
サノスを倒す唯一の方法、それはここでトニーの命を助け…数年後に彼が自分の命と引き換えに、宇宙を守ることだから…。
と、トニーは立ち上がった。
こいつをここで倒さねば、全てが奪われる…。
すぅっと息を吸い込んだトニーは、怒りに身を任せた。
アーマーは壊れ、もはや武器は自分の身体しかないが、トニーは戦った。
ペッパーとモーガンを守りたい…その一心だった。
あの時…マンダリンの事件の時、ペッパーは危険を顧みず、キリアンを倒したじゃないか…。
それなら自分にも…この与えられたエクストリミスのパワーがある今、目の前の悪魔を倒すことができるはずだ…。
トニーの身体が光り輝き始めた。
今まで感じたことがない程の怒りに身を任せたトニーは、力がみなぎるのを感じた。
自分はどうなってもいい…。この身が焼き尽くされようとも、ペッパーとモーガンを守れるのなら…。
トニーの力はサノスを圧倒していた。
その光景に、ストレンジは目を見張った。
モーガン・スタークがエクストリミスに侵食されているのは知っていた。だが、その親であるトニー・スターク自身も、侵食されていたのは、予想外だった。自分が見た未来…トニーが命を差し出してストーンを使う未来が唯一の方法だと思っていたが、とんだ計算違いだったと、ストレンジは微かに笑みを浮かべた。
ただの人間ごときに、何故打ち負かされようとしているのかと、サノスは焦った。力負けするのならば、身体を引きちぎり殺してやると、サノスはトニーの腕を掴んだ。そして思いっきり引っぱった。
トニーは悲鳴を上げた。引きちぎられた両腕が地面に転がっている。
だが、トニーには何ともなかった。
腕はすぐに再生した。そしてトニーは再びサノスに殴りかかった。
この男は…一体どんな力を身につけているんだ…。ただの人間のくせに…。
サノスの顔に初めて恐怖の色が滲み出た。
倒しても傷つけても、起き上がるトニーを掴んだサノスは、地面に思いっきり叩きつけた。
「いいか!私は絶対なんだぞ!」
サノスが叫んだ。腹ただしげに叫んだ。
トニーが顔を上げた。怒りに支配された瞳でトニーはサノスを睨みつけた。
「それなら…私は、アイアンマンだ!」
トニーは叫んだ。叫びながらサノスに向かった。サノスの背後に回ったトニーは、背中によじ登ると、首に腕を回した。そして躊躇なく、思いっきり締め上げた。
その場を切り裂くような悲鳴と鈍い音がし、サノスの首が転がり落ちた。
サノスが血飛沫を上げながら倒れた。
同時に、トニーも地面に叩きつけられた。
辺りは静まり返った。
圧倒的なトニーの力に、皆恐れ慄いた。
彼は普通の人間にはない力を持っている…。彼は人間ではない…。
ストレンジ以外のその場にいた者全員が、トニーから距離を置くようにゆっくりと動き始めた。
スパイダーマンことピーター・パーカーですら、トニーを怖いと思った。
トニーが立ち上がった。
怒りを、そして解放された力を抑え切ることが出来ないトニーは、顔を伏せると小さく呻き声を上げた。
トニーの心はエクストリミスの闇に支配されかけていた。
先ほどの殺戮を楽しいと感じてしまった。もっと味わいたい…もう誰でもいいから…殺したい…。首を切り、喉を掻き切り、血を浴び、そして味わいたい…。
ペロリと唇を舐めたトニーが顔を上げた。
トニーの瞳は、ピーターの知っているトニーのものではなかった。まるで周りの全てのものを焼き尽くし破壊するような恐ろしい瞳をしたトニーに、ピーターは怯えた表情を見せた。
「スタークさん…」
ピーターの声に、トニーが身体を震わせた。
ピーターを捉えたトニーは、彼をターゲットに定めたのか、ゆっくりと近づいてきた。
どう料理してやろうか…。手足を引きちぎり、身体を切り刻み、最後に首を落としてやろう…。
ニヤリと笑ったトニーが手を伸ばした。まるでこれから楽しいゲームをするというように…。
ピーターは足が動かなかった。
ピーターにとって、トニーは師であり、そしていつしか父親のような存在になっていたから…。
接する機会は多くなかったが、ピーターの心の中でトニーの存在は大きくそして大切なものになっていたのだ。
だから今目の前にいるトニーが、そのトニーと同じだとは到底思えなかった。怒りに支配された彼の中に、きっとあの優しく頼もしいトニー・スタークが残っていると思ったピーターは、そのトニーを呼び戻すように叫んだ。
「スタークさん!」
すると、トニーが立ち止まった。が、再び彼は歩き始めた。トニーが目の前に迫ってきた。嫌な笑みを浮かべたトニーは、震えるピーターの首を掴もうとした…。
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