その時…。
「パパ!!」
可愛らしい声に、トニーが止まった。目を見開いた彼は、声の方へ顔を向けた。すると、唇を震わせたトニーが何か呟いた。
「もー…がん……」
ピーターが恐る恐る振り返ると、ストレンジがポータルを開いていた。そしてその側には、ペッパーとモーガンが立っていた。
ペッパーは胸が締め付けられた。戦いに勝つために、身も心も捧げてしまった変わり果てた夫の姿に…。目の前にいるのは、自分の愛するトニーではなかった。返り血を浴び全身を血で染めた彼の目は、殺戮と人々の恐怖を楽しむ、残忍なものに変わっていたから…。
だが、トニーは娘の声に反応した。今彼のことを救えるのは、自分たちの最愛の娘だけ…。
ペッパーはしゃがみこむとモーガンに何事か囁いた。こくんと頷いたモーガンは、母親から手を離すと父親の元に駆け寄った。
「パパ…だいじょぶよ…。あたちとママがいるよ…。パパ…3000かい、あいちてる」
モーガンがトニーの手を握りしめた。
すると、トニーの瞳から一切の怒りが消滅した 。トニーが身体を震わせると、彼の身体から力が抜けた。
「モーガン……」
娘の名を呼んだトニーは、ペッパーを見つめた。その瞳は、茶目っ気たっぷりの琥珀色に戻っていた。
「トニー…」
ペッパーは微笑んだ。愛するトニーが帰ってきてくれたのだから…。
ペッパーにつられてトニーも微笑んだ。だが、彼は限界だった。全ての力を…いや、それ以外の力を使い果たした彼の身体は、限界を超えてしまった。
ふらついたトニーが倒れた。
「スタークさん!!」
ピーターはトニーを支えた。ぐったりとしたトニーに、ピーターの頭を最悪の事態が過ぎった。慌てて首元に指を当てたが、しっかりと脈打っており、ピーターは安心したように息を吐いた。
駆け寄ってきたペッパーは、トニーの手を握りしめた。
トニーはイビキをかいて眠っていた。
「ゆっくり休んで…」
そう囁いたペッパーは、トニーの頬にそっとキスをした。