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Another World of 2012:NY… 27【END】

1年後。
「モーグーナー、昼ごはんだぞ!」
娘の姿を探して庭に出たトニーは、小さなテントの前に置かれた子供用の椅子に無理矢理座った。
テントの中からはゴソゴソと音がする。
「モーガン・H・スターク。出ておいで」
笑い声が聞こえ、モーガンが姿を現した。

4歳になったモーガンは、ラボから持ち出したのだろう、アイアンマンのヘルメットを被っており、おもちゃのリパルサーをトニーに向けた。
「おっと!アイアンマン!頼むから助けてくれ!」
わざとらしく頭を抱えると、モーガンはクスクス笑いだした。娘が被ったヘルメットにキスをしたトニーは、それを取った。そして娘の乱れた髪を掻き分けると、抱き上げた。
「おひるごはん、なに?」
「ママ特製のカルボナーラだ」
ふふっと笑ったモーガンは、トニーの胸に手を当てると目を閉じた。
「パパ、おなかすいたっておもってる?」
目を開けたモーガンは、可愛らしく小首を傾げた。

モーガンは時折こうやって、両親の考えていることを読むようになった。尤も、全ての考えを読める訳ではない。だが、両親がいつも自分たちのことを愛し考えてくれていることが分かるので、モーガンはこうやってこっそりと心を読むのがお気に入りだった。

「そうだ。腹ペコだ。聞こえるか?パパのお腹はぐーぐー悲鳴をあげてるぞ?」
笑い声を上げた娘にキスをしたトニーは、家の中に入って行った。

家の中に入ると、トニーは娘を床に下ろした。
「モーガン、先に手を洗ってきなさい」
キッチンから母親の声が聞こえ、
「はーい」
と返事をしたモーガンは、パタパタとバスルームへと向かった。

アイアンマンのヘルメットを、テーブルの上に置いたトニーは、ベビーチェアに座る息子の頬を撫でた。
「だった!!」
リアクターの形をしたおしゃぶりを首から下げたハロルドは、トニーに手を伸ばした。

ハロルドの能力、それはEMPを発し、電子機器を自在に操ること。
それが分かったのは、数週間前のことだった。
癇癪を起こしたハロルドが、いつになく号泣し始めた。すると家中の電子機器が一斉に破壊したのだ。最初はただの偶然かと思ったが、トニーがあの手この手で実験したところ、ハロルドは強烈なEMPを発することができると分かったのだ。
それを抑えるためにトニーはこの特性おしゃぶりを作ったのだが、厄介なことに、彼は電子機器自体も意のままに操れることも発覚した。
おしゃぶりに改良に改良を重ね、それを封じ込めることにも成功したトニーだが、内心はまた別の能力を開花させるのではと、ビクビクしていた。

だが、2人とも優しく良い子で、スクスクと育ってくれているから、ありがたいことだ。

パスタを皿に盛り付けているペッパーを手伝おうと、トニーは妻の隣に並んだ。
「トニー、ちゃんと薬は飲んだ?」
手際よくサラダとパスタを盛り付けながら、ペッパーは夫に尋ねた。

トニーは1年前の事件で心臓に後遺症が残り、発作を抑える薬を飲まなければならなくなった。今のところ発作もなく経過は順調だが、ペッパーは今まで以上に夫の体調管理に細心の注意を払っていた。
「今飲んだ」
薬を飲んだトニーは、ペッパーを背後から抱きしめた。
「なぁ…ハニー……」
耳元で囁いたトニーは、ペッパーの首筋に唇を押し付けた。
キャッと小さく声を上げたペッパーだが、トニーの手はペッパーの胸を掴み、揉み解し始めた。
「子供たちが昼寝をしたら……いいだろ?」
ふっと耳元に息を吹きかけたトニーは、再び首筋に唇を押し付けると、赤い印を刻み始めた。唇の感触に感じ始めたペッパーは、首元をオレンジ色に染めた。
「ん…ダメよ……。夜まで待って…」
身悶えしたペッパーだが、その瞳は真っ赤に燃え上がっていた。
「夜まで待てないだろ?分かってるぞ、君の考えていることは」
からかうように告げたトニーに向かって、仕掛けてきたのはそっちでしょ?と言うように頬を膨らませたペッパーは、手元の石鹸を投げた。物凄いスピードで向かってきた石鹸を辛くも避けたトニーだが、石鹸は壁にのめり込んでしまった。
「ハニー、私のことを愛しすぎて殺さないでくれよ」
ウインクまでしてきた夫に、後で腕の一本でもへし折ってやろうと考えたペッパーだが、娘が戻ってきたのに気づくと深呼吸をし、平静を保とうとした。が、母親の変化にとっくに気づいていたモーガンは、大袈裟に飛び上がった。
「ママ!おこってるの?」
目を丸くしているモーガンに、ペッパーはこれは援軍が来たと微笑んだ。
「パパがね、言うこと聞かないから怒ってたのよ」
怖いほどの笑みを浮かべる母親と、目を泳がせる父親をモーガンは見比べた。
「パパ!おとななんだから、ママのいうこときかないとダメよ!」
腕組みして口を尖らせる姿はペッパーそのもので、トニーは苦笑した。

が、トニーの方が一歩上手だった。
娘を手招きしたトニーは、駆け寄ってきたモーガンに何事か囁いた。頷いたモーガンは、トニーの胸に手を当てると目を閉じた。
と、目を開けたモーガンが目を輝かせた。そして今度は母親に駆け寄ると、手を握りしめた。
「ママ!パパね、ママのこと、せかいいちあいしてるって!ママのことがだいすきすぎて、パパ、こまってるって!」
娘を通した愛の告白に、ペッパーはポッと頬を染めた。トニーを見つめると、彼はニヤニヤと笑っていたが、投げキスをしてきた。
(トニーったら…)
いつまで経っても子供のようなトニーだが、そんなところも愛しているのだからどうしようもない。

「さぁ、お昼にしましょ?冷めちゃうわ」
何とか平静を装ったペッパーは、娘に皿を手渡した。そして近づいてきたトニーにキスをしたペッパーは、彼の耳元に口を近づけると、娘に聞こえないように囁いた。
「私たちにも、お昼寝が必要ね…」
すると、眉を吊り上げたトニーは、勝ち誇ったように鼻を鳴らした。
「だから言っただろ?ミセス・スターク」
目をくるりと回したペッパーに、トニーは2人きりの時にしか出さないような甘ったるいで囁いた。
「3000回愛してる…」

【END】

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Another World of 2012:NY…26

次にトニーが目を開けたのは、病院のベッドの上だった。
「気がついた?」
手を握っているペッパーに向かって、大丈夫だというように、トニーは笑みを浮かべた。
「あなたの心臓、相当ダメージを受けて…。エクストリミスでも完治は無理みたい…」
だから鼻から酸素のチューブを入れていても息苦しいのかとトニーは納得した。が、自分は助かったのだから、例え心臓が完治しなくても、良かったと思わなければとトニーは考えた。
「モーガンは…」
最後に見たモーガンは、一人敵に立ち向かっていたのだ。娘の状態が気になったトニーは、キョロキョロと視線を動かした。
「眠ってるわ」
ペッパーの視線の先を見ると、モーガンとハロルドはトニーの足元で身体を丸くてして眠っていた。
「この子に助けられたわ…」
娘の髪を撫でたペッパーは、トニーに顔を向けた。
「この子がやっつけたの…。この子の力が…あなたを救ったの…」
ペッパーが声を震わせた。
「怖かった…。あなたも…モーガンも…失うんじゃないかって…」
「ハニー……」
モーガンは一体どうやって敵を倒したのだろう…。だが何れにせよ、モーガンは自分を救ってくれたのだ。

と、そこへ、ポータルが開き、ストレンジがやって来た。
毎度ながら突然現れるストレンジに、トニーは思わず顔を顰めたが、ストレンジは気にする風でもなく、近くにあった椅子に腰を下ろした。
「スターク。話がある。お前の娘のことだ。将来的には息子にも繋がる話かもしれないが…」
そう前置きしたストレンジは、トニーが何か言う前に…と、語り始めた。
「数年前、お前を迎えに公園に行った時から、お前の娘のモーガンの底知れぬ力には気づいていた。だからお前が引退した後も、お前たち家族のことはずっと見守っていた」
トニーが眉を顰めた。
「おい、魔法使い。お前はうちの家庭を勝手に覗き見していたのか?」
眉を吊り上げたトニーにストレンジは鼻を鳴らした。
「私の仕事は、全てを見通しておくことだ。つまり、全てを見ている。勿論、お前と妻が……」
何か思い出したのか、顔を赤らめたストレンジはわざとらしいくらいの咳払いをした。
「それはさておき…モーガンの能力…それは人の心を感じ、そして見ることだ。今はまだその程度だが、そのうち、人の心を操ることもできるようになるだろう。だがそれは、エクストリミスのせいではない」
「え?」
ストレンジの言葉は、トニーとペッパーにとって思わぬものだった。目を丸くしている2人を見比べたストレンジは、トニーをじっと見つめた。
「スターク、お前の遺伝子のせいだ」
「私のせい?!」
トニーはベッドの上で飛び上がった。
「調べたことがないのか?トニー・スタークとあろう者が?まぁ、いい。現代の技術では調べても分からない程度だから…。お前の遺伝子には、人にはないものが僅かだが混じっている。産まれながらのものではない。リアクターのせいか、それとも2012年NYで宇宙人と接触したせいかもしれないが…。兎に角その遺伝子のため、モーガンは特殊な能力を持っている。それに加えて、彼女にはエクストリミスの力がある。お前たちとは比べものにならないほどの強大なパワーだ。スタークは見ていないだろうが…」
そう言うと、ストレンジは、モーガンが敵を倒した時の映像を映し出した。
娘の圧倒的な力に、トニーはゴクリと唾を飲み込んだ。
「お前がサノスを倒した時の力と似ている。エクストリミスの力だから当然なのだが…。だが…下手をすれば、この力は脅威になる。モーガンの生まれ持った能力とエクストリミスの力が合わされば…この娘は、地球の…いや、宇宙の脅威になるかもしれない。今回の敵もそれが狙いだった」
ふぅと息を吐いたストレンジは、無邪気な顔をして眠っているハロルドを見つめた。
「お前たちの息子の能力は…娘とは違う。まだ開花していないから、伝えないでおこう。だが、彼もまたモーガンに匹敵するような力を持っている。つまりだな…モーガンとハロルドの力が合わされば…宇宙は滅亡するかもしれない…」

我が子にそんな力が備わっていたなんて…。顔面蒼白になったペッパーは、
「どうすれば…どうすればいいの…」
と、泣き出した。トニーは妻の手を握りしめた。自分の遺伝子と、そしてエクストリミス…これも元はと言えば自分のせいなのだから、子供たちに申し訳ないことをしたと、トニーは悔やんだ。
「脅威は芽のうちに摘み取るのが一番だ」
ストレンジのあまりに静かな声に、トニーは目を見開いた。つまり彼は子供たちを…。
「ストレンジ!モーガンとハロルドに手を出すな!」
激昂したトニーは真っ赤に燃える瞳でストレンジを睨みつけたが、ストレンジはトニーを制した。
「スタークよ。私もそんな非道な男ではない。エクストリミスを除去しろと言っているんだ」
ストレンジの言葉に、トニーはふぅと力を抜いた。
「能力はどうすることもできない。お前たちが言うように、この子たちの個性だと思えばいい。だが、エクストリミスは取り除ける」
何度も子供たちからエクストリミスを取り除くことは考えた。だが、それと共に育ってきた彼らから取り除けば、逆に悪影響があるのでは…と、2人は出来ずにいたのだから…。
「大丈夫なの?この子たちは…」
ペッパーの言葉にストレンジは頷いた。
「大丈夫だ。取り除いても、子供たちは大丈夫だ…」

トニーはペッパーを見た。
子供達を守るためには、今すぐエクストリミスを取り除くしかない。
トニーの考えを察したペッパーは、小さく頷いた。そして眠っている娘の髪を撫でた。
「頼む…」
トニーの言葉に、ストレンジは頷いた。そして彼はモーガンとハロルドの頭に触れると、何やら唱えた。
2人の身体が光に包まれた。ほんの一瞬、辺りがオレンジ色の光に包まれた。

「終わったぞ」
フワフワと浮くオレンジ色の球体を箱にしまったストレンジは立ち上がった。
「ありがとう、ストレンジ…」
礼を言うトニーに、ポータルを開いたストレンジが振り返った。
「お前たちは…………」
と、言葉を切ったストレンジがくるりと目を回した。まるで、お前たちがどうして除去していないのか知ってるぞと言うように…。
「好きにしろ」
ご丁寧にウインクをしたストレンジは、ポータルの中に消えて行った。

27

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Another World of 2012:NY…25

トニーは動けなかった。
傷は治ったが、鷲掴みにされた心臓は一向に落ち着く気配がない。手足が痺れ出し、息もできない状態だった。
トニーは胸元をギュッと掴んだ。
何度も深呼吸するが落ち着かない。逆に余計に痛み出した。
「くそっ……」
咳き込んだトニーは再び血を吐き出した。

と、目の前に人の気配がした。顔を上げると、あの女が立っていた。そして持っていた杖をトニーの胸元に当てた。
エクストリミスがあっても、心臓を撃ち抜かれれば、一巻の終わりだ。
これまでか……と、もはや自分では動けないトニーは目をぎゅっと閉じた。

と、その時だった。
「パパをいじめないで!!!!」
モーガンの声がした。
目を開けたトニーは、女の背後に娘が立っているのを見ると、叫んだ。
「モーガン!」
目を真っ赤に光らせたモーガンの全身はオレンジ色に光り輝いていた。
モーガンは必死だった。母親と羽の生えた妖精のようなお姉さんを振り切ってここまでやって来た。父親を守りたい…その一心だった。
「ほう…ついに目覚めたか?」
女はククッと笑い声を上げた。
「モーガン、逃げろ!」
トニーは再び叫んだ。が、女がトニーに向かって手を差し出すと、トニーは首元を締められたまま宙に浮かんだ。
息ができなくなり、トニーはジタバタもがいたが、余計に首元は締まり、そして見えない鎖が身体にまとわりついた。ギュっと鎖が締まり、息を詰まらせたトニーは意識を手放した。
「娘よ。私と共に来い。お前の力で、宇宙を支配しよう。歯向かうと、お前の父は死ぬぞ?」
モーガンは父親を見た。父親の顔は死人のように青くなっており、彼女は唇を噛み締めた。
「いや!あたしは、パパとママとハリーと、いっしょがいいの!!!」
睨みつけてくるモーガンに、女は大袈裟に首を振った。
「仕方ないな…」
女が手を振った。するとトニーは湖へと投げ飛ばされた。
「スタークさん!」
スパイダーマンが慌ててトニーの後を追い、湖に飛び込もうとしたが、敵に捕まってしまった。
「パパ……」
湖へと姿を消した父親に、モーガンは涙が止まらなかった。
(このおばちゃんは、パパをころそうとしてる!)
モーガンは女を睨みつけた。彼女は怒りを解き放った。
そんなモーガンに、女は微笑んだ。
(この力よ…。この力があれば…宇宙は我が手に…)
このままモーガンを連れ去ろうとした女は、モーガンの手を掴もうとした。が、彼女に触れた瞬間、女の掌が焼け焦げた。
悲鳴を上げた女の腕を、モーガンは逆に掴んだ。
女の身体が炎に包まれた。モーガンの身体も…。
モーガンは手を離さなかった。女が断末魔のような声を上げても、自分の身体が燃え始めても、決して離さなかった。

やがて女は燃え尽き、灰になった。

女が生き絶えると、敵も灰と化した。
動けるようになったピーターは、急いで湖に飛び込んだ。
湖の底にトニーは鎖で縛り付けられていた。
鎖を引きちぎったピーターはトニーの身体を抱きかかえると、水面に向かって急いだ。

「モーガン!」
敵が消えたのを確認したペッパーは、娘の元に駆け寄った。
真っ黒に焼け焦げた娘は呆然と立ち尽くしており、ペッパーの頭を最悪の事態が過った。
と、モーガンが動いた。
「ママ……」
か細い声で母親を呼んだモーガンの火傷は、みるみるうちに治っていった。
「モーガン……」
ペッパーは娘を抱きしめた。泣き出した娘をペッパーは力強く抱きしめた。
「パパは……」
母親にしがみついたモーガンは、湖に目をやった。丁度ピーターが岸辺に父親を寝かせているのが見えた。

「スタークさん!しっかりして!」
トニーは息をしてなかった。ピーターが心臓マッサージを始めたが、トニーはピクリとも動かなかった。
「どけ!」
ピーターを押しのけたストレンジが何やら呪文を唱えた。するとトニーがビクッと動いた。口から水を吐き出したトニーは咳き込んだ。そして、一瞬目を開いたトニーだが、すぐに目を閉じてしまった…。

26

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Another World of 2012:NY…24

5ヶ月後。
庭にトニーの好きなひまわりが咲き誇る頃、ペッパーは男の子を出産した。
2人は親友たちの名前を貰い、息子をハロルド・ジェームス・スタークと名付けた。
ハロルド…2人は息子をハリーと呼んでいたが、彼はトニーそっくりの顔立ちで、ペッパーと同じ赤毛を持った、とても可愛らしい男の子だった。
トニーもペッパーもだが、一番喜んだのは3歳になったモーガンだった。モーガンはとにかくハリーの世話を焼きたがった。
最低でも半年間は家で仕事をすることにしたペッパーの手伝いをしたがった。ミルクをあげるのも、オムツを替えるのも…とにかく弟の世話をするのがモーガンは大好きだった。

そして最近では大学生になったピーターも頻繁に顔を覗かせるようになった。ピーターはモーガンの良い遊び相手になってくれた。そしてトニーも、ピーターの大学での研究話を聞くのが楽しみになっていた。
ピーターはスパイダーマンのスペックについてもトニーに相談した。そのため、トニーも彼のスーツを改良するのが、楽しくて仕方なかった。

***
秋になり、辺りの木々が色づき始めた頃。
バルコニーのリクライニングチェアで、ペッパーは半分眠っている息子を抱きしめていた。その側では、モーガンを膝の上に乗せ、トニーが本を読み聞かせていた。
そこには幸せな家族以外の何もなかった。

が、その平穏な光景が遂に打ち破られてしまった。

突然、上空を切り裂くような音がした。そして辺りが暗闇に襲われた。
モーガンを抱きしめたトニーは、ペッパーとハロルドを守るように立ち上がった。
「早く家の中に入れ!」
そう告げたトニーは3人を家の中に押し込んだ。そして自分はラボに向かうと、しまっていたリアクターを胸に付けた。

トニーが外に出ると見たことのない女が庭に立っていた。
「ここは私有地だ。勝手に入ってくるな」
女はどこからどう見ても地球外のものだった。女は名乗ることすらせずに、トニーに向かって凍りつくような笑みを浮かべた。
「トニー・スターク。サノスを殺した男よ。お前の大切なものを譲り受けに来た」
女の視線にトニーは背筋を震わせた。
この女は、目的のためには手段を選ばないと感じたトニーは、リアクターに触れた。トニーの身体はアーマに包まれた。
「狙いはお前ではない。お前の子供たちだ。娘のパワーと、息子のパワー。2つ合わされば宇宙を支配できる」
モーガンの能力は知っている。だがハロルドは生まれたばかりでまだその能力すらも見せていないのだ。
いずれにせよ、子供たちを手放す気などさらさらない。
あらゆる武器を女に向けたトニーは、女を威嚇した。
「悪いが断る。帰れ」
と、女が笑った。するとトニーの身体が浮き上がった。見えない鎖に縛られたように、トニーは身動きが取れなくなった。もがくトニーに、女は手を捻るように動かした。するとアーマーが砕け散った。生身になったトニーは、エクストリミスの力を解放しようとした。が、見えない鎖はトニーの首を締め付けた。
「ぐっ……」
首を締め付けられたトニーは息を詰まらせた。再び女が手を動かした。するとリアクターが砕け散った。
「見逃してやっただろ?数年でも幸せな家族ごっこができただろ?諦めろ。お前は所詮、幸せになれないんだ!」
唸り声を上げるトニーだが、その目は怒り狂っていた。そこで女は今度はトニーの両腕を引きちぎった。
トニーが悲鳴を上げた。
女が手を振ると、トニーは地面に叩きつけられた。
血がドクドクと両腕の付け根から流れ落ち、トニーは頭がクラクラしてきた。が、ここで負ければ子供たちは奪われてしまうと、トニーは奮起した。
瞳を燃え上がらせたトニーは腕を元に戻すと、女に飛びかかった。
が、やはり近づくことができない。逆に羽交い締めにされ、何度も地面に叩きつけられた。
女がトニーの身体を再び持ち上げた。そして手を動かした。意識朦朧としているトニーだが、身体を跳ね上がらせると、叫び声を上げた。女は笑いながら、見えない手でトニーの心臓を鷲掴みにしていた。
「鉄の男も、これがなければ生きてはいけないだろ?子供たちを渡せ。さもなくば、このままお前の心臓を引きちぎるぞ?」

心臓が喧しい程音を立て始めた。
息ができなくなってきた。
トニーの口からは血が流れ落ち始めた。
それでもトニーは必死に抵抗し続けた。
女はぐっと力を込めた。
トニーは大量に血を吐き出した。
虚ろな目をしたトニーに、女は最後のトドメを刺そうとした…。

「スタークさん!!」
女が何かに蹴られたように吹っ飛んだ。
トニーは地面に落ちる寸前、誰かに抱きかかえられた。スパイダーマンだった。
「スタークさん!しっかりして!」
血塗れのトニーの頬をピーターが軽く叩くと、トニーは咳き込みながら目を開いた。
「ピーター……」
何度か瞬きしたトニーは、周りに数人いることに気づいた。ウォーマシンがいた。ストレンジも、そしてアントマンも…。
「奥さんと子供たちは、ワスプが守っているから安心しろ」
アントマンが胸を叩いたが、トニーは息をするので精一杯だった。

女は味方を呼んだようで、ローディたちは多数を相手にしていた。

ふらつくトニーをピーターは物陰に座らせた。
「ここにいて下さい。僕たちであいつらを倒しますから」
そう言うと、ピーターは飛び出して行った。

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Another World of 2012:NY…23

半年後。
会議中に気分が悪くなったペッパーは病院へ向かった。
するとペッパーは、ようやく待ち望んでいた言葉を聞くことができたのだ。
つまり、ペッパーは妊娠したのだ。
ペッパーとトニーのこと…つまりエクストリミスのことを知っている医師は、ペッパーのお腹にエコーを当てながら説明し始めた。
「妊娠して1ヶ月ですが、すでにこの子は2ヶ月以上の大きさまで成長してます」
やはりモーガン同様、胎児の成長は恐ろしく早いのだ。
「この子の場合は、元々エクストリミスを持っているので、モーガンちゃんとは成長の度合いが違うかとしれません。ですが、大丈夫ですよ。しっかり見守っていきましょうね、スタークさん」
そう言うと、医師はペッパーに向かって微笑んだ。

帰宅したペッパーは、出迎えてくれた夫と娘にキスをすると、エコー写真を差し出した。
写真を見たトニーは目を輝かせた。そしてガッツポーズをした彼は、ペッパーを抱きしめると顔にキスをしまくった。
大喜びをしている父親に、モーガンは何か楽しいことが起こったと気づいたが、自分もその輪に入ろうと、父親の足にしがみついた。
「モーガン!ママに赤ちゃんができたぞ!」
娘を抱き上げたトニーは、彼女の頬に何度かキスをしたのだが、モーガンは目をパチクリさせると、不思議そうに辺りを見渡した。
「あかちゃん…どこにいるの?」
「ママのお腹にいるのよ」
トニーはモーガンを床に下ろした。するとペッパーは、娘の手を取り、まだ膨らんでいないお腹に当てた。
モーガンはそっと母親の手を撫でると、目を閉じた。
彼女には聞こえた。弟の声が…。父親と母親、そして姉に早く会いたいという声が…。
目を開けたモーガンは、満面の笑みで両親を見上げた。
「あかちゃん、おとこのこよ。はやくね、パパとママとあたしにあいたいって」

トニーとペッパーは顔を見合わせた。
胎児の性別はまだ分かっていない。が、モーガンには分かるのだ。
モーガンは幼い頃から、人の感情を読み取ったり、感じやすかった。誰かに触れ、気持ちを読み取ることもできた。もしかしたら、それもエクストリミスによる遺伝子の変異のせいなのかもしれない。次に生まれてくる子供も、モーガンとはまた違う能力を持って生まれるかもしれない。だが、トニーもペッパーも確信していた。2人とも自分たちの大切な子供…そして素晴らしい子に決まっている…と。

「あかちゃん、はやくあいたいね」
そう言って笑ったモーガンは天使のように可愛らしく、トニーとペッパーは娘を抱きしめた。

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