Another World of 2012:NY…13

数時間後、トニーはドイツへと飛んだ。
逃走の末、捕らえられたスティーブと、トニーは面会した。
何とか事態を収拾しようと説得を試みたが、スティーブはトニーを信用してくれなかった。そればかりか、隙を見て再び逃走してしまった。

トニーは溜息をついた。最悪なことに、胸が痛くなってきた。リアクターを除去して以来、心労が重なると、時折不整脈を起こしていたが、こんな時に起きるなんて…と、トニーは何度も深呼吸をした。

スティーブを逮捕しろと、ロスに嗾けられたトニーは、彼らを傷つけずに確保するために、一人NYへと戻った。

目的地へ向かう前に、トニーは自宅へ立ち寄った。
戻ってきた父親に、モーガンは嬉しそうに手を伸ばした。
「ぱぁぱ…」
顔を擦り寄せてきた娘の温かさに、トニーは気分が少しだけ楽になった。
トニーはドイツでの出来事をペッパーに話した。そしてこれからやろうとしていることを…。
トニーの話を聞き終えたペッパーは頷いた。
「トニー、あなたが正しいと思うことをやって…。きっと大丈夫よ…」
妻の言葉だけが支えだった。妻だけが…ペッパーだけが、自分を心の底から信頼してくれているのだから…。

数時間後、トニーはクイーンズにいた。
目的は、若きヒーローを仲間に加えるため。
数ヶ月前から活動を始めたスパイダーマン。ピーター・パーカーという高校生が、マスクを被りヒーロー活動を行なっているが、実際会ってみると、ピーター・パーカーは余りにも幼かった。
まだ子供の彼を巻き込むのかと非難を浴びそうだが、誰も傷つけずに捕まえるためには、彼の…スパイダーマンの能力に頼るしかなかった。
憧れのアイアンマンだと目を輝かせるピーターを引き連れ、トニーは再びドイツへと戻った。

空港を封鎖したトニーは、スティーブたちを待ち構えた。こちらもワカンダの王となったティ・チャラを仲間に加えていたが、スティーブの方もホークアイなど仲間が増えていた。最後にもう一度説得を試みようとしたトニーに、スティーブは告げた。この事件は、裏でジモという男が糸を引いていると…。信じてくれと言うスティーブだが、トニーは何を信じればいいのか分からなかった。
お互い信じることが出来なかった。結果、アベンジャーズは戦いあった。そしてスティーブはバッキーと共に逃走した。

2人はシベリアへ向かったと情報を掴んだトニーは、一人追いかけた。というのも、スティーブの話…つまりジモという男が真犯人だという証拠が見つかったから。トニーはスティーブをもう一度だけ信じてみることにした。洗脳が解けたバッキーとも一時休戦したトニーは、3人でジモを追い詰めようとした。
が、全てが罠だった。アベンジャーズを分断するための、巧妙に仕掛けられた罠だった。

トニーは両親の死の真相を知った。
両親は、ウィンターソルジャーに殺されたという真実を…。
両親が殺される映像を見せつけられたトニーは、傍に立つスティーブを思わず見た。
「…知ってたのか…」
スティーブは何も言わなかった。
彼は知っていたのだ。
それなのに自分に隠していた。
父親のみならず、母親まで突然奪われたその気持ちを、スティーブは労りもしなかった。
親友を守るために、トニー・スタークの気持ちを踏みにじったのだ。

悔しかった。
自分も親になり、父親の気持ちが分かるようになった。いがみ合っていたのも、今ではいい思い出だとやっと思えるようになってきたのに…。
それに、妻と娘を紹介することもできないのに…。

それなのに、スティーブは
「バッキーは洗脳されていたんだ。だから仕方ない」
と、目に涙を浮かべているトニーに告げた。

大切な両親を突然奪われた。それを仕方ないの一言でスティーブは済まそうとしている…。

トニーは怒り狂った。
怒りの矛先をバッキーに向けた。
が、そこにスティーブは割って入った。バッキーを守るために…。
「仲間だと思ってたんだぞ!」
トニーがそう叫んでも、スティーブは受け止めてくれなかった。

悔しかった。情けなかった。
こんな奴を信じようとした自分が情けなかった。

2人は戦った。いや、スティーブにはバッキーが付いていた。2対1の戦いだったが、スティーブたちに超人血清があるように、トニーにはエクストリミスがあった。
アーマーが壊れても立ち向かってくるトニーの瞳は、見たことがない程真っ赤に燃えており、スティーブは初めてトニーが怖いと感じた。
トニーの首元がオレンジ色に光り出した。いや、身体全体が輝いているではないか。
スタークは一体どうしたのだろう…。先日目撃した彼の娘もだが、トニーは人間の領域を超えた力を手に入れてしまったらしい…。
そう気づいたスティーブだったが、怒りに任せたトニーが彼を叩きのめした。
スティーブの首元に手を置いたトニーは、ギュッと締め付けた。
が、トニーは我に返った。
ここでスティーブを殺せば、自分はウィンターソルジャーと同じになってしまうと…。
その瞬間、トニーに隙ができた。その隙をスティーブは見逃さなかった。
スティーブが盾をトニーのリアクターに叩きつけた。リアクターは破壊され、アーマーが停止した。

トニーは動けなくなった。
そんなトニーを尻目に、盾を投げ捨てたスティーブはバッキーと共に再び逃走した。

「くそっ……」
涙が止まらなかった。
悔しくてたまらなかった…。
自分は彼らを止めることも、そして両親の恨みを晴らすこともできなかったのだ。

ドイツで待機しているハッピーに何とか連絡を取ったトニーは、破壊されたアーマーを脱いだ。
極寒の洞窟だが、今のトニーは体温自体が高いので凍えずにすんだ。

数時間経ち、ハッピーが迎えにやって来た。
「ボス…………」
顔中血だらけだが傷一つないトニーに、ハッピーはほっと息を吐いた。だが、トニーの表情は硬く、そして暗かった。何も喋らないトニーを連れて、ハッピーは帰路へとついた。

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