アベンジャーズは分断してしまった。
トニーは仕方なく、世界にまた目を向けることになった。
幸いにも敵は襲ってくることはなく、アイアンマンの出番も殆どなかった。
再び平穏な日々が戻ってきた。いや、平穏な風を装っているが、何かが変わってしまった。
トニーは再びアーマー作りに没頭していった。まるで脅威がすぐそこに迫っているのが分かっているかのように…。
そして彼は時折悪夢を見るようになった。夜中に魘され、飛び起きることもあった。その度にペッパーは、大丈夫だと言い続け、トニーが落ち着くまで彼を抱きしめた。
ペッパーとモーガンがいる…そのことだけがトニーの救いだった。その救いに縋るように、トニーは自分の人生を生きようともがいた。
だが、運命は避けられなかった。
ついに宇宙から敵がやって来たのだ。
それはモーガンが2歳になった年だった。
その日、トニーとペッパーはモーガンを連れて公園にやって来た。
芝生の広がる広場で、3人はボール投げをして遊んでいた。
「ほら、モーガン!いくぞ!」
トニーがポンっとボールを投げた。が、モーガンは受け止め損ねた。転がっていくボールを、モーガンは追いかけた。
と、突然目の前に不思議な格好をした男性が現れた。何処からともなく出現した男性は、モーガンに微笑むと、トニーの元へ向かった。
「トニー・スターク、話がある」
そう告げた男は、ストレンジと名乗った。そして脅威が迫っているため、トニーに共に来て欲しいと告げた。
ペッパーはトニーの腕を掴んだ。まるで行かないでというように…。
母親の悲しみを感じたモーガンは、頬を膨らませた。
何とかしてあのおじさんを止めなければ…。
そう考えたモーガンは息を吸い込んだ。両親から人前では禁じられている自分の力を発揮すべきだと考えたモーガンは、ストレンジと名乗った男のマントを掴んだ。
モーガンがマントを引っ張ると、ストレンジがよろけた。
幼児らしからぬ力に、振り返ったストレンジは、真っ赤な瞳をしたモーガンに目を細めた。
(この子はエクストリミスに侵されている…)
骨の髄まで侵食されているモーガンに、ストレンジはこの子が場合によっては地球の脅威になる日が来るかもしれないと感じたが、今はそれよりも先に解決すべきことがある。
「お嬢さん、離してくれ」
優しくそう言ったつもりだが、モーガンはストレンジを睨みつけた。
「いや!パパとママ、あたちといるの!」
モーガンは両親を…特に父親を守ろうと必死だった。ここでこの男と共に父親を行かせれば、父親が傷つくと感じたから…。
モーガンが唇を噛みしめた。顔がオレンジ色に光り始めた。
(まずい…)
ペッパーと視線を交わしたトニーは、娘の元に駆け寄ると彼女を抱きしめた。
「モーガン、話を聞くだけだ。パパはすぐに戻ってくるから…」
父親になだめられたモーガンから、ふっと力が抜けた。
「ホント?」
いつもの落ち着きを取り戻した娘の頬にトニーはキスをした。
「あぁ、すぐに戻る」
そう言うと、ようやく安心したのか、モーガンは父親にキスをした。
「パパ…あいちてる…」
「パパもだよ…」
父と娘の光景に、さすがのストレンジも胸が痛んだ。
これが今生の別れとなるかもしれないのだから…。