そしてトニーはNYへと帰ってきた。
ピーターを家まで送り届けたトニーが自宅に着いたのは日付が変わる頃だった。
さすがにもう眠っているだろうと、そっと家に入ったが、ペッパーは起きていた。
リビングでペッパーはトニーを待ってくれていた。
「ただいま…」
そっと呼びかけると、ペッパーは泣きながら抱きついてきた。
「よかった…無事でよかった……」
シクシク泣き続けるペッパーを抱きしめたトニーは、妻の香りを吸い込んだ。
「エクストリミスのおかげで、死なずにすんだ」
そう告げると、ペッパーは再び泣き始めた。
シャワーを浴び、ペッパーが作ってくれた夜食を食べたトニーは、少しだけ気分が晴れた。そこで、トニーはシベリアでの出来事をペッパーに話した。
話を聞くうちに、ペッパーは怒りを露わにし始めた。と同時に、彼女の身体が光り始めた。
「ハニー、落ち着け」
自分も落ち着いている訳ではないが、まずは妻を宥めようとしてみたが、ペッパーは立ち上がると叫んだ。
「落ち着けですって?!トニー、どうしてあなたがこんなに苦しまなきゃいけないの?!あなただけが、どうしていつも苦しまなきゃいけないのよ!」
ペッパーは叫んだ。ボロボロと大粒の涙を流しながら…。顔を覆ったペッパーは、座り込むと声を上げて泣き始めた。
ペッパーだけが、いつも自分のことのように、泣いて笑ってくれる…。彼女だけが自分のことを心から愛してくれている…。
十分じゃないか。そんな存在が一人でもいるんだから…。
トニーは心が楽になった。
ペッパーがそばにいてくれるだけで、怒りや苦しみが薄らいでいくのだ…。
「君がそうやって怒って泣いてくれて、救われたよ…」
微かに笑みを浮かべたトニーは、ペッパーを抱き寄せた。
しゃくりあげながらも顔を上げたペッパーは、涙を拭うと夫の疲れた顔を見つめた。
「もう休みましょ?疲れたでしょ?」
「あぁ…だが、それより、君が欲しい…」
トニーはペッパーを見つめた。
ペッパーの温もりも求めるかのように、ギュッと抱きついてきたトニーは、子供のように胸に顔を埋めた。泣き出しそうな夫の頭をペッパーは優しく抱えた。
「いいわよ…」
トニーはペッパーを抱いた。
全ての苦痛から逃れるように…。
ペッパーを抱く時だけは、何もかも忘れることができたから…。