「I love you three thousand…」カテゴリーアーカイブ

I love you 3000… Ⅱ⑱

6月になると、ペッパーのお腹は目立つようになってきた。同時に胎児の動きは活発になり、トニーもモーガンも毎日ペッパーのお腹に向かって話しかけていた。
「ママ、あかちゃん、うごいたよ!」
ペッパーのお腹に手を当てたモーガンは、嬉しそうにお腹を撫でた。

モーガンはプリスクールを終え、9月からはキンダーガーデンに入学する。NYでも超名門女子校に進学するのだが、ペッパーがやけに熱心で、渋るトニーをペッパーは説得…いや、押し切りその学校を選んだのだ。
半年ほど前に2人で面接に行き、無事に合格通知をもらったのだが、トニーは最後まで渋っていた。そんな夫をペッパーは『あなただって超名門校に通ってたじゃないの』と説得したのだが、そう言われても、当時は自分で選んだ訳ではない。勿論、トニーも子供達には最高の環境で過ごして欲しいとは思っている。が、自分はあの堅苦しい雰囲気がとても嫌だったので、果たしてモーガンにとって良いことなのかと内心不安だった。というのも、街中での生活にも慣れてきたとはいえ、モーガンはやはり湖畔の家が大好きだったから。虫を捕ったり泥んこになるまで走り回ったり、湖で泳いだり、星を眺めたり…。自然と触れ合うことが大好きで、トニーに似たのか自由奔放でラボが大好きなモーガンが、果たして堅苦しい学校に馴染めるのかトニーは少々不安だった。そしてもう一つ、トニーには不安なことがあった。それはその学校はセレブの子供が多いこと。そのため常にパパラッチが親子の写真を撮ろうとウロついているらしい。
トニーとペッパーは、モーガンを一度もマスコミの前に連れて出たことはない。モーガンが産まれたことも公表はしていない。尤も2人のネタを常に探しているマスコミには直ぐに突き止められたのだが…。が、2人の防御線が功を奏してか、モーガンの写真は一度も世間に広められることはなかったのだ。だが、パパラッチがうろついている学校に通うとなると、モーガンも必ず標的になるだろう…。

娘のことは絶対に守ってみせる…。トニーはそう誓った。

⑲へ…

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I love you 3000…Ⅱ 17 トニー誕生日

もうすぐ5月29日…つまりは、トニーの54回目の誕生日だ。
去年の誕生日は、あの戦い直後。そのため、トニーは昏睡状態だったのだ。だからこそ、今年の誕生日は特別なものにしてあげたかった。
実は会社の役員会で、トニーの誕生日パーティーを開かせてくれと言われた。1年前の戦い…即ち失われた人々と暮らしが戻り、その後押し寄せた敵が消え去ったのも、アイアンマンが命をかけてくれたからだと、誰もが知っていたから…。そのため感謝の意を込めてSIの会長であるトニー・スタークの誕生日を大々的に祝いたいと言われたのだ。
だがペッパーは断った。
それは去年の誕生日にトニーと約束したから…。家族でお祝いしようと約束したから…。

ということで、トニーの誕生日パーティーは、家族とそして親友であるローディ、ハッピーだけを呼んだ、こじんまりとしたものにすることにした。

モーガンとプレゼントを買いに行き、ケーキを注文し、準備は整った。
そしてあっという間に誕生日当日の朝になった。
ローディにトニーを何処かに連れ出してもらい、ハッピーに手伝ってもらい家の中を飾り付け、帰宅したトニーを驚かせる…というのが、ペッパーとモーガンの計画だったのだが…。

「おはよう……………」
朝になり、トニーが起きてきた。が、彼は死にそうな声をしているではないか。
「どうしたの?!」
珍しく義手も付けずにパジャマのまま降りてきたトニーは、真っ赤な顔をしている。それに足元はフラフラしており、絨毯に足を取られた彼は転倒しそうになった。
慌てて支えたペッパーは、トニーの身体が燃えるように熱いことに気付くと、F.R.I.D.A.Y.に声を掛けた。
すぐさま主人を分析したF.R.I.D.A.Y.は、『ボスの体温は39度です。病院へ連絡します』とペッパーに伝えた。
「大変…」
目を丸くしたペッパーは、トニーの肩を担ぐと、引きずるように寝室へ向かった。

ベッドに寝かせ、部屋を暖かくしていると、医師がやって来た。トニーを手早く診察すると、不安げな表情のペッパーを安心させるように頷いた。
「風邪です。安静にしていればすぐに治りますよ」
感染症を起こしたのかもしれないと不安でいっぱいだったペッパーは、安心したように息を吐いた。
トニーに点滴をした医師は、また明日様子を見に来ると告げると帰って行った。
入れ替わるように、モーガンがコソコソと寝室に入ってきた。
「パパ、だいじょうぶ?」
ベッドを覗き込んだモーガンに、ペッパーは頷いた。
「パパは風邪をひいて熱があるの。でもすぐに元気になるわ。大丈夫よ」
トニーの額に冷たいタオルを置いたペッパーだが、モーガンは残念そうに唇を尖らせた。
「パパ…おたんじょうびなのに…。またケーキたべられないね…」
去年も祝えなかったのだから今年こそ…と思っていたのに…と、モーガンは本当に残念そうだ。
「明日になったらきっと元気になるわ。パパが元気になったら、お誕生日のお祝いをしましょ?」
「うん」
母親の言葉に頷いたモーガンは、トニーの左手を軽く握った。
「パパ…ゆっくりやすんでね…」
トニーにそう囁いたモーガンは、ペッパーと手を繋ぐとそっと寝室を後にした。

18へ…

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I love you 3000…Ⅱ 16 母の日

5月。
プリスクールで、もうすぐ母の日だと教えてもらったモーガンは、迎えに来た父親に車に乗り込むや否や尋ねた。
「パパ、もうすぐ、母の日なんでしょ?」
娘に言われてトニーは思い出した。いや、正確には、母の日の存在は覚えていたが、それが2週後の日曜ということを忘れていたのだ。というのも、ペッパーは5ヶ月目に入った。と同時に、胎動を感じるようになった。そこで子供部屋の準備を始めたのだが、安定期に入ったペッパーは出張に出掛ける回数も多くなり、トニーも慌ただしく過ごしていたため忘れていたのだ。

「そうだ、母の日だ。よし、モーガン、ママにプレゼントをしよう。何がいいかな?」
後部座席に視線を送ると、うーーんとモーガンは頭を捻らせ必死に考えているではないか。娘の可愛らしい姿を暫し眺めていたトニーだが、何か名案を思いついたのか、モーガンがパッと顔を輝かせた。
「あのね、ママにね、おやすみをプレゼントしてあげよ!ママね、おしごともがんばってるし、ごはんもつくってくれるし…。だからね、ママがね、すきなことする日にするの!」

確かにここ最近のペッパーは多忙だった。先月まで悪阻で体調が悪く、仕事をセーブしていたのもあるが、出産後もしばらくはペースを落として家で働くため、その皺寄せが今来ているのだ。ペッパーが休む間はトニーが会議などにも出席することになっているが、会社の経営をペッパーに任せてもう何年も経つので、果たしてあてになるのかどうか不明だが…。

ということで、日曜日は朝からペッパーに自由にしてもらう…というのが、トニーとモーガンが選んだプレゼントだった。が、サプライズ好きなトニーとしてはやはり妻を驚かせたい。そこでトニーは娘に協力を要請すると、とびっきりのサプライズの準備を始めた。

日曜日になった。
ペッパーが目を覚ますと、トニーは起きた後だった。
シャワーを浴びキッチンに向かうと、トニーはモーガンを助手に朝食を作っていた。
「おはよ。2人とも早いわね」
日曜日は大体遅くまで寝ていることが多い2人が早起きをし、そして朝食まで作っているのだ。
「おはよう、ハニー」
唇にキスをしたトニーは、ペッパーを座らせるとパンケーキを皿に盛った。
「ママ!おはよ!」
モーガンはカーネーションの花束を差し出した。
「え?ママに?」
目をパチクリさせているペッパーに、モーガンはふふっと笑った。
「きょうは母の日だから」
だから親子揃って早起きしてるのね…と理解したペッパーだが、おそらくトニーのことだからサプライズを用意しているだろう。2人は一体どんなサプライズを用意してくれているのかしら…と、ペッパーは今日一日が楽しみになってきた。

朝食を食べると、トニーはペッパーに告げた。
「ハニー、今日は一日自由気ままにゆっくりして来い」
それが今年のプレゼントだと笑ったトニーだが、急に言われても何をしたらいいのかペッパーは分からなかった。というのも、休日は家族で過ごすのが当たり前になっていたから…。
「でも…」
なにか言いかけたペッパーを、トニーはガレージに連れて行った。そこには、見慣れぬ新車があった。真っ赤なリボンが掛かった新車が…。
「私からのプレゼントだ」
リボンを解いたトニーは、驚きすぎて言葉を失っている妻に鍵を渡すと、車に押し込んだ。

「トニーったら…」
母の日のプレゼントに新車とは、トニーらしいといえばそうなのだが、去年の誕生日にも車をプレゼントしてもらったばかりだった。
そうは言っても最新の車両は走り心地も良く、何より後部座席も広いので、モーガンと生まれてくる子供を乗せて走るのにちょうどよい。トニーのそんな心配りさえも嬉しくなったペッパーは、ふふっと笑みを浮かべた。

が、一体どこに行ったらいいのだろう。森の中の私有地から道路に出たペッパーは、どこに行こうかと車を停めた。
『ミセス・スターク、目的地を設定しました』
突然F.R.I.D.A.Y.がナビを操作したかと思うと、車は勝手に動き始めた。
「えっ!ど、どこに行くの?!」
自分は何も触ってないのに…と、目を白黒させたペッパーだが、トニーが開発した自動運転のためか、はたまたこの車をそう設定しているせいなのか、自分でハンドルを握っても自由が効かないではないか。
こうなったらトニーに任せるしかない…と諦めたペッパーは、溜息をついた。

その頃、ガレージのラボでは…。
「ママ、びっくりしてるよ」
助手席に座ったモーガンは、手元のモニターに映っている母親を見ると、運転席のトニーに向かってヒヒっと笑った。
「そりゃそうだ。パパが開発した遠隔運転装置だからな!」
運転席と助手席、そしてハンドルとアクセル・ブレーキだけの簡易的な装置の前には、ペッパーが見ている風景が見れる大きなモニターが映し出されていた。
車のハンドルを握ったトニーは、モニターを見ながら目的地へとペッパーの車を走らせた。
実は、ペッパーの車は、トニーが遠隔で操作していたのだ。これも全てサプライズのため。一日ゆっくりして来いと言っても、ペッパーのことだからすぐに帰ってくると考えたトニーは、遠隔で妻を連れまわすことにしたのだ。そこで新車を買い、この遠隔運転装置を取り付けた。機能性はハッピーを実験台に実証済みだ。
鼻歌を歌いながら運転する父親を横目に、モーガンは時折悲鳴を上げている母親を見ながら、ポップコーンを頬張った。

『ミセス・スターク、目的地に到着しました』
荒っぽい自動運転…実際はトニーの運転だが…に、若干頭がフラフラしていたペッパーは、F.R.I.D.A.Y.の声に車を降りた。
「ここって……」
そこはペッパーが行きつけのサロンだった。
「お待ちしておりました、ミセス・スターク」
顔馴染みのスタッフに出迎えられたペッパーは、どうして予約が入っているのかと目を瞬かせた。
「ご主人からお伺いしております。今日はフルコースのてんこ盛りで、頭の先から足の指の先まで、ピカピカに磨き上げてくれと…」
トニーの言葉をそのまま伝えたスタッフは、若干笑いを噛み締めていたが、イマイチ状況が分かっていないのか、何度も瞬きをしているペッパーを部屋に押し込んだ。

「よし、モーガン。ママは3時間は出てこないから、その間に昼ごはんにしよう」
「うん!」
助手席から飛び降りたモーガンは、父親の右手を繋いだ。
「何が食べたい?」
「チーズバーガー!」
「さすが天才同士。意見が一致したぞ?」
わざとらしく眉を吊り上げたトニーは、F.R.I.D.A.Y.にチーズバーガーのデリバリーを頼むよう告げた。

マタニティコースのエステを受けたペッパーは、手足にネイルもしてもらい、スッキリとした気分で車に乗り込んだ。
「さて、次はどこに行くの、F.R.I.D.A.Y.?」
『次の目的地を設定しました』
と、車が動き始めた。
目的が分からない旅に、今度はどこに行くのかしら…と、ペッパーは楽しみになってきた。

次にやって来たのは、今NYで話題のオーガニックレストランだった。
入り口を潜ると、支配人が飛んで出てきた。
「お待ちしておりました。ミセス・スターク。こちらへ…」
案内されたのは、窓際の静かな席。
トニーは料理も指定していたらしく、ペッパーは美味い料理をしっかり堪能した。

2時間後、ペッパーがレストランから出てきた。シートの隣で義手の整備をしていたトニーは慌てて運転席に座るとハンドルを握った。
助手席ではしゃいでいた娘は、夢の中。
娘に毛布をかけたトニーは、車を走らせ始めた。

トニーはペッパー行きつけのブティックに向かった。後はここで思う存分、買い物をしてもらい、今日の任務は終わりだ。
助手席のモーガンが、モソモソと動いた。大欠伸をしたモーガンは、目をこすりながら起き上がった。
「ママは?」
「買い物中」
店に入っていく母親を見届けたモーガンは、父親を見上げた。
「ねぇ、パパ。ママ、たのしかったかなぁ…」
不安げな様子の娘の頭をトニーは撫でた。
「大丈夫さ。モーガンが考えたプレゼントなんだ。ママは楽しんでくれたぞ?」

暫くすると、ペッパーが出てきた。大きな紙袋や箱を大量に車に積み込んだペッパーは、嬉しそうに鼻歌を歌っていた。
「ほら、モーガン。ママは超ご機嫌だぞ!」
「ホントだ!よかった!」
嬉しそうな母親の様子に、モーガンは安心したように息を吐いた。

私有地の入り口に到着すると、トニーは遠隔装置を切った。
「よし、ママはもう帰ってくるぞ。モーガン、あの手紙の出番だ」
「うん!」
頷いたモーガンは、トニーと手を繋ぐとガレージを飛び出した。

一方のペッパーは…。
私有地の入り口に到着すると、自動運転は終わってしまった。一体どういうことなのかと、首を傾げながら運転し始めた。

「ただいまー」
家の中は食欲をそそる匂いで満たされていた。
どうやらトニーが夕食に中華をデリバリーしてくれているようだ。
「おかえり。どうだ?リラックスできたか?」
テーブルに夕食のセッティングをしていたトニーは、ペッパーを抱きしめるとキスをした。
「ええ、とってもリラックスできたわ」
ありがとうと言いながら夫の唇にキスをしたペッパーに、モーガンがパタパタ駆け寄って来た。
「ママ、おかえり!」
母親に飛びついたモーガンは、手に何かを押し付けた。
「あら?何?」
モーガンに渡されたのは、可愛らしい封筒だった。
「母の日だからね、ママへおてがみかいたの」
ニコニコ笑うモーガンをトニーは抱き上げた。
椅子に腰掛けたペッパーは、封筒を開くと手紙を読み始めた。

『ママへ

ははのひ、おめでとう。
ママは せかいいちのママです。
ママのごはんは、せかいいちおいしいからだいすきです。
ママはおこるとこわいけど、ほんとうはとってもやさしいママです。

ママはおしごとでいそがしいけど、おしごとをがんばってるママはかっこいいよ。ねるまえにママはまいにちあたしとおはなししてくれます。おしごとでつかれてるのに、ありがとう、ママ。

あたしはおおきくなったら、ママみたいになりたいです。
ママみたいにおしごとをがんばって、パパみたいなかっこいいひととけっこんしたいです。

ママがあたしのママでよかったです。
ママ、3000かいあいしてるよ。

モーガン・H・スターク』

手紙を読み終えたペッパーは、涙の浮かんだ瞳で娘を見つめた。
「モーガン…ありがとう…。ママ…嬉しくて…」
そう言うと、ペッパーは涙を零した。
モーガンは父親を見上げた。すると父親も嬉しそうにモーガンの髪を撫でた。
「ママも…モーガンのママになれて本当によかったわ。モーガン、ありがとう…。ママの娘になってくれて…」
母親の言葉にモーガンは目を輝かせた。
「ママ!パパとおんなじこといってるよ!」
トニーの膝の上から飛び降りたモーガンは、母親に飛びついた。

娘を抱きしめたペッパーはトニーを見た。トニーは笑っていた。本当に嬉しそうに笑っていた。
トニーの笑顔と、そしてモーガンからの手紙…。トニーと出会い夫婦になり、そしてモーガンに恵まれたことをペッパーは心の底から感謝した。

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I love you 3000… Ⅱ 15

その夜、一家は湖畔の家に戻ってきた。

トニーとモーガンは、望遠鏡で星を眺めていた。トニー特製の望遠鏡は、星に焦点を合わせると、星座の名前が出てくるのだ。それにトニーが星座について面白おかしく話してくれるのだから、モーガンは父親と星を眺めるのが昔から大好きだった。

今日もまた一つ新しい星について教えてもらったモーガンだが、昼間のパーティの礼をまだ言っていなかったことに気づいた。
「パパ、ありがと。パパのおともだちがいっぱいきてくれたから、あたし、すっごくうれしかったの」
娘の髪を撫でたトニーは、額にキスをした。
「お安い御用さ。あいつら、どうせ暇だったから、暇つぶしに丁度良かった」
軽口を叩く父親にクスクス笑ったモーガンは、トニーの義手を握った。
「あのね、ヒーローがいっぱいきてくれたけどね、あたしのヒーローはパパだけだよ。アイアンマンもだけど、パパがヒーローなんだよ」
娘の言葉に嬉しくなったトニーは目を細めると笑みを浮かべた。父親の手を見つめたままのモーガンは、話を続けた。
「あたし、パパの手、だいすきなの。なんでもつくってくれるし、あたしのことだっこしてくれるし…。パパにね、いい子いい子ってしてもらったら、あたし、とってもげんきになるの。パパの手はね、まほうの手なんだよ。だからね、パパの手がなくなったときね、とってもかなしかった。だけどね、パパがげんきじゃなくなってたから…あたしがパパの手になってあげなきゃっておもったの。でもね、パパはアイアンマンの手になったでしょ?アイアンマンになってもね、パパの手はまほうの手…。あたしのだいすきなパパの手なんだよ」
モーガンは初めて父親に面と向かって告げた。父親が右腕を失くした時の思いを…。
あの時モーガンは、何も聞かず自分を励まし抱きしめてくれた。小さな胸でそんなことを考えていたなんて…と、トニーは目頭が熱くなった。
「パパは、せかいいちのパパだよ。おともだちにね、パパはせかいいちかっこいいヒーローなんだよっておしえてあげたんだ。パパがね、いなくなってたら、おともだちにね、これがあたしのパパよっておしえてあげられなかったでしょ。だからね、パパ、いっぱいけがしちゃったけど、あたしといっしょにいてくれて、ありがと」
そう言いながら父親を見つめたモーガンは、トニーに向かって笑った。

最高のプレゼントだった。今日は自分の誕生日でも何でもないが、娘の言葉はトニーにとっての最高のプレゼントだった。
「今日はモーガンの誕生日パーティだが、パパがプレゼントを貰った気分だ…」
目に浮かんだ涙をそっと拭ったトニーは、娘を抱き上げた。
「ありがとう、モーガン…。モーガンはパパとママの自慢の娘だ。世界一大切な娘だ…。モーガン、パパとママの娘に生まれてきてくれて、ありがとう…」
小さな身体をギュッと抱きしめると、モーガンもトニーに抱きついた。
「パパ、あたしのパパになってくれて、ありがと」
モーガンの肩に冷たい物が降り注いだ。それが父親の涙だと気づいたモーガンだが、父親は嬉しくて泣いているのだと感じた彼女は、黙って父親の胸元に顔を埋めた。

16.母の日のお話

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I love you 3000… Ⅱ 14

週末のパーティは、モーガンの希望で、アイアンマンとヒーローがテーマのパーティとなった。
モーガンは先日誕生日プレゼントで両親からもらった、赤と金色のアイアンマンカラーのドレスを着ており、その可愛らしい姿に、トニーは写真を撮りまくった。

初めて友達を呼ぶパーティに、モーガンは大興奮だった。
次々とやってくるモーガンの友達とその両親を、トニーもペッパーも笑顔で出迎えた。トニーはアイアンマンのアーマーを着ていたので、子供たちは大喜び。ペッパーもレスキューアーマーを着て、娘の友達をもてなした。
ハッピーとローディも手伝いに来てくれた。勿論、ローディはウォーマシンのアーマーで。やって来た子供たちに、アイアンマン のお面を渡したり、おもちゃのリパルサーを配ったりしてくれた。アイアンマンだけではなく、トニーたちは他のヒーローのおもちゃも沢山用意していたので、子供たちは思い思いのヒーローに扮し大はしゃぎだった。
馴染みのシェフたちは、子供が喜びそうな料理を出し、皆美味い料理に舌鼓をうった。

「モーガンちゃんのパパとママ、やさしいしかっこいいね!」
誰もがそう口を揃えて言うのだから、モーガンは嬉しくて仕方なかった。

と、誰かが叫んだ。
「あ!スパイダーマンだ!」
見ると、ピーター…いや、スパイダーマンがやって来たではないか。
えっ…とモーガンが思っていると、ハルクもやって来た。アントマンとワスプも、そしてホークアイも家族を連れてやって来た。何とストレンジまでもがやって来た。その場で簡単な魔法を披露したため、ストレンジは早速大勢の子供たちに捕まってしまったが…。
憧れのヒーローたちが大集結し、子供たちは更に歓声を上げた。

「モーガン」
気づくと、目の前にスパイダーマンがいた。
「ピー…」
名前を言いかけたモーガンは、慌てて口を塞いだ。
ピーター・パーカーとは父親が入院中に初めて顔を合わせたが、小さい頃から父親はスパイダーマンの話をよくしてくれていたため、モーガンにとっては、アイアンマンに次いで身近な存在だった。そのため初めて顔を合わせた時も、どこかしら親近感を感じ、モーガンはすぐにピーターに懐いた。ピーターの方も、モーガンを妹のように可愛がり、2人は大の親友になっていたのだ。
まるで母親のようにこほんと咳払いをしたモーガンは、ピーターに向かって腕を伸ばした。
「スパイダーマン!」
モーガンを軽々抱き上げたピーターは、マスク越しだが頬に軽く口づけした。
「誕生日おめでとう、可愛いいお姫様」
クスクス笑みを浮かべたモーガンだが、どうしてこんなにヒーローが集結しているのかと、首を傾げた。
「あたし、スパイダーマンにパーティにきてねっていってなかったのに…」
友達には、父親と母親に手伝ってもらい、招待状を作った。だが、ヒーローたちには招待状は出していないから、どうして日にちと場所が分かったのかと、モーガンは思ったのだ。
「スタークさんが…君のパパが、招待状をくれたんだ。アイアンマンに招待されたら、来ないわけにはいかないだろ?君のパパは…アイアンマンは、ヒーローなんだから」
実は、これもトニーが用意したサプライズ。仲間に声を掛け、娘の誕生日にヒーローとして参加して欲しいと頼んだのだ。

と、突然雷鳴が響きわたった。
あまりの音にピーターにしがみついたモーガンだが、また一人ヒーローが現れたのを見ると、顔を輝かせた。
「おい!ソー!芝生は大事にしろ!」
焦げた芝生の上に降り立った男の元へ、トニーが飛んでやって来た。紋様型に焦げた芝生に目をやったトニーは頭を抱えた。
「お前は呼んでない。連絡をとる術がなかった。だが、何故ここにいるんだ」
「スタークが美味いものを山ほど食べさせてくれる会を開くと聞いて、やって来た」
そういう会ではないのだが…と、再び頭を抱えたトニーだが、雷神ソーの登場に、子供たちが駆け寄ってくるのを見ると、トニーはソーのお腹を叩いた。
「ダイエットに成功したんだな」
「宇宙の飯は不味くて」
大きく頷いたソーだが、すっかり元気になっているトニーの姿に、僅かに目を潤ませた。
「スターク、元気そうで何よりだ」
そう言うと、ソーはトニーの肩を抱き寄せた。

ヒーローたちの乗った大きなバースディケーキのロウソクを吹き消しながら、モーガンは祈った。

パパとママとあたしとおとうとと……ずっといっしょにいられますように…と。

そしてパーティは大盛況のうちに終わり、招待客は誰もが笑顔で帰っていった。
バートン家の子供たちともすっかり仲良くなったモーガンは、今度は互いの家で遊ぼうと約束し合い、たらふくご馳走を食べたソーも、再び芝生を焦がしながら戻って行った。

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