I love you 3000… Ⅱ 15

その夜、一家は湖畔の家に戻ってきた。

トニーとモーガンは、望遠鏡で星を眺めていた。トニー特製の望遠鏡は、星に焦点を合わせると、星座の名前が出てくるのだ。それにトニーが星座について面白おかしく話してくれるのだから、モーガンは父親と星を眺めるのが昔から大好きだった。

今日もまた一つ新しい星について教えてもらったモーガンだが、昼間のパーティの礼をまだ言っていなかったことに気づいた。
「パパ、ありがと。パパのおともだちがいっぱいきてくれたから、あたし、すっごくうれしかったの」
娘の髪を撫でたトニーは、額にキスをした。
「お安い御用さ。あいつら、どうせ暇だったから、暇つぶしに丁度良かった」
軽口を叩く父親にクスクス笑ったモーガンは、トニーの義手を握った。
「あのね、ヒーローがいっぱいきてくれたけどね、あたしのヒーローはパパだけだよ。アイアンマンもだけど、パパがヒーローなんだよ」
娘の言葉に嬉しくなったトニーは目を細めると笑みを浮かべた。父親の手を見つめたままのモーガンは、話を続けた。
「あたし、パパの手、だいすきなの。なんでもつくってくれるし、あたしのことだっこしてくれるし…。パパにね、いい子いい子ってしてもらったら、あたし、とってもげんきになるの。パパの手はね、まほうの手なんだよ。だからね、パパの手がなくなったときね、とってもかなしかった。だけどね、パパがげんきじゃなくなってたから…あたしがパパの手になってあげなきゃっておもったの。でもね、パパはアイアンマンの手になったでしょ?アイアンマンになってもね、パパの手はまほうの手…。あたしのだいすきなパパの手なんだよ」
モーガンは初めて父親に面と向かって告げた。父親が右腕を失くした時の思いを…。
あの時モーガンは、何も聞かず自分を励まし抱きしめてくれた。小さな胸でそんなことを考えていたなんて…と、トニーは目頭が熱くなった。
「パパは、せかいいちのパパだよ。おともだちにね、パパはせかいいちかっこいいヒーローなんだよっておしえてあげたんだ。パパがね、いなくなってたら、おともだちにね、これがあたしのパパよっておしえてあげられなかったでしょ。だからね、パパ、いっぱいけがしちゃったけど、あたしといっしょにいてくれて、ありがと」
そう言いながら父親を見つめたモーガンは、トニーに向かって笑った。

最高のプレゼントだった。今日は自分の誕生日でも何でもないが、娘の言葉はトニーにとっての最高のプレゼントだった。
「今日はモーガンの誕生日パーティだが、パパがプレゼントを貰った気分だ…」
目に浮かんだ涙をそっと拭ったトニーは、娘を抱き上げた。
「ありがとう、モーガン…。モーガンはパパとママの自慢の娘だ。世界一大切な娘だ…。モーガン、パパとママの娘に生まれてきてくれて、ありがとう…」
小さな身体をギュッと抱きしめると、モーガンもトニーに抱きついた。
「パパ、あたしのパパになってくれて、ありがと」
モーガンの肩に冷たい物が降り注いだ。それが父親の涙だと気づいたモーガンだが、父親は嬉しくて泣いているのだと感じた彼女は、黙って父親の胸元に顔を埋めた。

16.母の日のお話

1人がいいねと言っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。