もうすぐ5月29日…つまりは、トニーの54回目の誕生日だ。
去年の誕生日は、あの戦い直後。そのため、トニーは昏睡状態だったのだ。だからこそ、今年の誕生日は特別なものにしてあげたかった。
実は会社の役員会で、トニーの誕生日パーティーを開かせてくれと言われた。1年前の戦い…即ち失われた人々と暮らしが戻り、その後押し寄せた敵が消え去ったのも、アイアンマンが命をかけてくれたからだと、誰もが知っていたから…。そのため感謝の意を込めてSIの会長であるトニー・スタークの誕生日を大々的に祝いたいと言われたのだ。
だがペッパーは断った。
それは去年の誕生日にトニーと約束したから…。家族でお祝いしようと約束したから…。
ということで、トニーの誕生日パーティーは、家族とそして親友であるローディ、ハッピーだけを呼んだ、こじんまりとしたものにすることにした。
モーガンとプレゼントを買いに行き、ケーキを注文し、準備は整った。
そしてあっという間に誕生日当日の朝になった。
ローディにトニーを何処かに連れ出してもらい、ハッピーに手伝ってもらい家の中を飾り付け、帰宅したトニーを驚かせる…というのが、ペッパーとモーガンの計画だったのだが…。
「おはよう……………」
朝になり、トニーが起きてきた。が、彼は死にそうな声をしているではないか。
「どうしたの?!」
珍しく義手も付けずにパジャマのまま降りてきたトニーは、真っ赤な顔をしている。それに足元はフラフラしており、絨毯に足を取られた彼は転倒しそうになった。
慌てて支えたペッパーは、トニーの身体が燃えるように熱いことに気付くと、F.R.I.D.A.Y.に声を掛けた。
すぐさま主人を分析したF.R.I.D.A.Y.は、『ボスの体温は39度です。病院へ連絡します』とペッパーに伝えた。
「大変…」
目を丸くしたペッパーは、トニーの肩を担ぐと、引きずるように寝室へ向かった。
ベッドに寝かせ、部屋を暖かくしていると、医師がやって来た。トニーを手早く診察すると、不安げな表情のペッパーを安心させるように頷いた。
「風邪です。安静にしていればすぐに治りますよ」
感染症を起こしたのかもしれないと不安でいっぱいだったペッパーは、安心したように息を吐いた。
トニーに点滴をした医師は、また明日様子を見に来ると告げると帰って行った。
入れ替わるように、モーガンがコソコソと寝室に入ってきた。
「パパ、だいじょうぶ?」
ベッドを覗き込んだモーガンに、ペッパーは頷いた。
「パパは風邪をひいて熱があるの。でもすぐに元気になるわ。大丈夫よ」
トニーの額に冷たいタオルを置いたペッパーだが、モーガンは残念そうに唇を尖らせた。
「パパ…おたんじょうびなのに…。またケーキたべられないね…」
去年も祝えなかったのだから今年こそ…と思っていたのに…と、モーガンは本当に残念そうだ。
「明日になったらきっと元気になるわ。パパが元気になったら、お誕生日のお祝いをしましょ?」
「うん」
母親の言葉に頷いたモーガンは、トニーの左手を軽く握った。
「パパ…ゆっくりやすんでね…」
トニーにそう囁いたモーガンは、ペッパーと手を繋ぐとそっと寝室を後にした。
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