「On Your Side Forever」カテゴリーアーカイブ

On Your Side Forever⑤

数日後、酔っぱらい帰宅したヴァージニアを迎えたトニーだが、彼女は顔を合わすなりトニーに抱きついてきた。
「ミス・ポッツ。どうされたんです?」
胸元に顔を埋めたヴァージニアは、くぐもった声を出した。
「ジニーって呼んで」
先日は思わずその名を口に出してしまったが、あの頃と自分たちの立場は違うのだ。
「ですがあなた様は私の上司ですので…」
一体どうしたのだろうと困惑するトニーを他所に、顔を上げたヴァージニアは彼のネクタイを掴んだ。そして戸惑うトニーをじっと見つめたヴァージニアは背伸びすると彼の唇を奪った。
突然キスされ面食らったトニーだが、彼女の唇は甘く柔らかく、トニーは一瞬で心を奪われてしまった。
(あぁ…俺はこれを長年欲していたんだ…)
心と身体は彼女を欲してやまない。だが、彼女はあくまでも自分の上司なのだ。理性をフル動員して彼女を離したトニーは、再びキスをしようとしてくるヴァージニアを遮った。
トニーに拒否されヴァージニアは傷ついた顔をしたが、彼女は諦めなかった。
「トニー…お願い。抱いて…」
彼女には、彼は自分のことを愛してくれているという妙な確信があったため、いつも男性相手にするように、ヴァージニアは甘えたように身体を摺り寄せた。
「少々お酒が過ぎたようですね…。ミス・ポッツ、今日は早くお休みに…」
が、いつものお色気作戦も、トニーには効果がなかったようだ。そこでヴァージニアは、単刀直入に告げることにした。
「トニー、お願い。セックスしましょ?」
トニーの目に再び迷いが生じた。もう一押しだと感じたヴァージニアは、彼の目をまっすぐに見据えた。
「あなた、私の事が好きでしょ?」
「…」
まるで感情を悟られないように、黙ったままトニーは視線を伏せた。
相手は手強い。今までのどの男性よりも手強い。きっと彼は15年間、仮面を被り続けて生きてきたのだから…。
だが、手強い相手との交渉なら手馴れていると、ヴァージニアはゴクリと唾を飲み込んだ。
「私はあなたが好き。愛してる。だから、利害一致してるわ。正当な理由になるでしょ?」
交渉だと思うと、どうも上から目線の物言いになってしまう。が、彼女の必死さにとうとうトニーは根負けしてしまった。
「…それはご命令ですか?」
上目遣いに目を瞬かせたトニーは、10歳以上も年上なのに可愛らしく見え、ヴァージニアは思わず笑みをこぼした。
「命令だと言ったら、私とセックスしてくれるの?」
もごもごと口ごもったトニーは、再び視線を伏せた。
「ご命令とあらば…」
『上司の命令で関係を持った』というのは、フェアではない。自分たちはビジネスライクな関係ではない…いや、絶対にそういう関係にはしたくないのだから…。おそらくトニーが乗る気でないのは、自分たちが『社長と秘書』という関係だからだろう。それならば、彼の前では一人の女性になろうとヴァージニアは決意した。
トニーの頬にそっと手を当てたヴァージニアは、彼の瞳を覗き込んだ。
「無理強いはしたくない。あなたは今までのビジネス上だけの人とは違うもの。私、本当にあなたとセックスしたいの。あなたに抱かれたいの。1人のオンナとして…。お願い、トニー。私のこと、好きなら…私のこと、受け止めて…」

それはヴァージニアの初めて見せた本心だった。
目の前にいるのは、CEOのヴァージニア・ポッツではなく、22才の等身大のヴァージニアだった。
彼女は自分の全てを包み隠さず見せようとしている。今まで勇気がなくて隠していたが、自分もトニー・スタークという一人の男になる時がきたのかもしれない。

しばらくして、トニーは顔を上げた。先ほどまでの困惑した表情は形を潜め、どこか吹っ切れたような顔をしている。
「私のこと、好き?」
ヴァージニアが再びそう聞くと、トニーは彼女の瞳をじっと捉えてはっきりと告げた。
「ずっと好きでした。いや…ジニー…」
ふぅと大きく息を吐いたトニーは、ヴァージニアを腕の中に閉じ込めた。
「俺は君のことを愛してる…。もう何年も君のことを…」
それは2人の思いがようやく通じた瞬間だった。社長と秘書ではなく、32歳と22歳のただの男と女として、2人の恋が叶った瞬間だった。
「よかった。私と一緒ね。私もあなたのこと、愛してるもの…。本当はずっとそうだったのに、最近まで気づかなかったけど… 」
クスクス笑い始めたヴァージニアは、こみ上げてくる嬉しさを抑えきれないのか、トニーの首筋にキスをし始めた。
「トニー…愛してるわ… 」
と、トニーがヴァージニアを抱き上げた。そして顔中にキスをしながら、トニーは寝室へと向かった。

R-18な⑥へ…
R-18飛ばして⑦へ…

***
ペッパーのセリフが若干東ラブ風なのは気にしないでくださいww ←年がバレるw

最初にいいねと言ってみませんか?

On Your Side Forever④

数日後。その日はチャリティーパーティーだったのだが、酔い潰れたヴァージニアはキリアンと数人の男達に支えられるように帰ってきた。
「ミス・ポッツは酷く酔っておいでですから、今日はお引き取り下さい」
何故か悪い予感のしたトニーはキリアンたちを追い返そうとしたのだが…。
「大丈夫だ、スターク。お前は引っ込んでろ」
と、逆に家から追い出されてしまった。

翌朝、時間になってもヴァージニアは部屋から出てこない。不安になったトニーはドアをノックした。
「ミス・ポッツ。お時間です…」
何度ノックしても返事はない。何かあったのでは…と、そっとドアを開けるとヴァージニアはベッドの中で泣いていた。
「ジニー!」
思わず彼女の幼い頃の呼び名を叫ぶと、起き上がった彼女はボロボロと大粒の涙を零しているではないか。それに、彼女は酷い状態だった。腫れ上がった顔、体中に残る痣と傷、手首に残る手錠の跡…。
彼女に何があったのか瞬時に悟ったトニーは、顔色を変えた。

「トニー…」
か細い声と共に腕を伸ばした彼女を抱きしめると、ヴァージニアは声を上げて泣き始めた。
「あなたの言う通りだったわ…。あいつ…私のことを…」
子供のように泣き続ける彼女は酷く幼く見え、トニーは彼女が小さい頃のように、ギュッと彼女を抱きしめた。
「しー、ジニー。大丈夫だ。もう大丈夫だから…」
ゆっくりと背中を撫で続けると、ヴァージニアは次第に落ち着きを取り戻した。
恐れていたことがついに起こってしまった。彼女を傷つける奴は、誰だろうと許さない…。
「あなたのことは私が絶対に守ります」
怒りに震えるトニーは、その日一日中彼女のことを抱きしめ続けた。

その日から、トニーはひと時もヴァージニアのそばを離れなかった。まるで彼女を全ての物から守るように…。
夜になると、ヴァージニアはうなされ目を覚ました。眠れない彼女がリビングに向かうと、トニーがいた。いつもは自宅に帰るトニーだが、あの事件以降、彼はヴァージニアの家に寝泊まりしていたのだ。
「眠れないの。そばにいて?」
そう告げると、トニーはヴァージニアが眠るまで手を握り続けた。

いつも温かく、そして優しく包み込んでくれるトニーの存在は、ペッパーの心の拠り所になっていた。
そしてヴァージニアは、長年心の中にあった自分の本当の気持ちに気づいた。
(そうだわ…。私…トニーのことが…好きなのよ…)
幼い頃から彼は憧れだった。知的でユーモアに富み、優しさに溢れた彼は、一人っ子だった自分にとって、兄のような存在だった。
それが男性として意識するようになったのは、数年前。大学入学と同時に、家を出て世間に飛び出したヴァージニアは、トニー以上の男性は見つけることが出来なかった。誰と会ってもトニーと比べてしまうのだ。彼のような男性に出会おうと、大勢の男性と関係を持ったが、誰一人として心を満たしてくれなかった。
自分の恋心をようやく認めたヴァージニアだが、彼は自分のことをどう思っているのかが分からない。
自分のそばにいても、昔から彼は数多の女性から羨望の目で見られているのは知っている。だが、女性にもてるのに、浮いた話は1つもない。両親は見合いを勧めていたが、彼は頑なに断っていた。そしていつしか両親も見合い話を持ってこなくなった。
(もしかして…トニーも私のことを…)
だが確証はない。それに否定された時のことを考えると、ヴァージニアは怖くて聞けなかった。

⑤へ…

1人がいいねと言っています。

On Your Side Forever③

翌日は日曜日で休日だったが、ヴァージニアはトニーを呼び出した。
何事かとやって来た彼は、いつものスーツ姿とは違い、Tシャツにジーンズというラフな格好をしていた。

「ねぇ、トニー。今日はお休みだから、仕事の話は抜きね」
そう言いながらトニーをソファーに座らせたのだが、彼は眉間にシワを寄せた。
「火急の用事と聞きましたが?」
せっかくの休日を潰され怒っているのだろうか…。
いつになく不機嫌なトニーのご機嫌を取るように、ヴァージニアは彼の腕に自分の腕を絡ませた。
「大切な用事よ。昨日ね考えたの。私、あなたのことを詳しく知らないわ。だから今日はお互いの話をしましょ?」
急にどうしたのだろうと思ったトニーだが、休日といっても特に予定もないのだから、たまにはいいかと思い直した。
「私の話など、つまらないです」
首を振ったトニーにヴァージニアはようやく乗る気になってくれたと顔を輝かせた。
「ううん。あなたのこと、もっと知りたいの。まずは…趣味は?」
「趣味ですか?機械弄りです。こちらの警備システムも私が開発しました」
「そうなの?すごい…。じゃあ、次は…」

ヴァージニアは様々なことを尋ねた。
好きな食べ物、好きな色、好きな音楽にお酒…。些細なことだが、ヴァージニアはトニーについて何も知らなかったのだ。

夕方になってもヴァージニアの質問攻めは続いていた。そろそろ質問ネタも尽きてきた頃だろうと思ったトニーだが、ヴァージニアは一番尋ねたかった質問をぶつけてきた。
「恋人はいるの?」
と、トニーが視線を伏せた。まるで彼女の視線から逃げるように…。
「恋人はいません。ミス・ポッツのお世話だけで精いっぱいです」
何故か視線を合わせないトニーにヴァージニアは首を傾げたが、トニーは自分の気持ちを悟られないよう必死だった。

本当は彼女のことが好きだ。15年前、当時7歳の彼女と会った時から、彼女は自分の心を捉えてしまった。それでも当時はまだ、幼い彼女は妹のような存在だった。それが一人の女性として見るようになったのは、5年前。当時大学生だった彼女が久しぶりに帰省した。そしてすっかり大人の女性へと変貌していた彼女に一瞬で心を奪われた。
だが、この恋心は決して叶うことのないもの。彼女は自分の上司なのだ。それゆえに、決して口に出してはならない気持ち…。
それでもトニーも男だ。欲を発散させるためにたまに抱く女は数人いる。だが、彼女たちは決して彼の心を満たしてはくれなかった。

黙ってしまったトニーに、ヴァージニアは何か言いたくない事情があるのだろうと、慌てて話題を変えた。
「トニーはどうしてずっとパパの秘書をしてたの?それに、どうして私の秘書も快く引き受けてくれたの?」
昨晩、キリアンから聞いた話では、トニーは秘書に収まっているような器ではないはずだ。それなのに、彼は15年にも渡り秘書を続けている。独立しようと思えば機会はいくらでもあったはずなのに…。じっと見つめてくるヴァージニアの視線を感じながら、トニーはこの15年間のことを思い返した。

トニーにも昔は野心があった。いつかスターク・インダストリーズを再興するという野心が…。父親が開発した製品がポッツ・インダストリーズの名の元、世に送り出されていくのを見るのは辛かった。だから先代の社長に重役にならないかと言われた時、断った。ライバル会社のポッツ・インダストリーズで出世はしたくないと。いつの日か、自分で会社を起こし、皆を見返してやるとずっと思っていた。
だが、トニーはそうしなかった。機会ならいくらでもあったが、出来なかった。それは彼女がいるから…。兄のように慕ってくれている彼女を守らなければならないという使命感がトニーを繋ぎ止めていたのだ。それに、約束があった。先代である彼女の父親との約束が…。
5年前、彼女が大学に入った年、彼女の父親は言った。
『私たちに何かあった時のために君に伝えておく。トニー、ヴァージニアのことを頼む。君になら安心して娘を任せられる。君になら我が社を任せられる。娘を支えてやってくれ。そしていつの日か、スターク・インダストリーズを再興してくれ』
彼は自分の小さな野心と、そしてヴァージニアへの想いに気づいていたのだ。それでも彼は、自分にビジネスや会社運営のノウハウなど、全てを教えてくれたのだ。私生活でも家族のように自分を可愛がってくれたのだ。その時、トニーは誓った。何があっても彼女を支えていくと。それが実の息子のように可愛がってくれたポッツ夫妻への恩返しになるはずだから…と。

「先代との約束があるからです」
静かにそう告げたトニーの瞳は真っ直ぐで嘘偽りなど一つもなかった。
「そう…」
自分のために残ってくれていると思っていたヴァージニアは、父親との約束と聞き、少々拍子抜けしてしまった。
どうしてこうもトニーのことが気になるのだろう…。その感情の正体を突き止めるべく、今日彼と話をしたのだが、結局突き止めることは出来なかった。

④へ…

最初にいいねと言ってみませんか?

On Your Side Forever②

そんなある日の事。
社に向かう車中でトニーは今日のスケジュールを読み上げていた。今日は正直、気が進まない予定が入っている。だがビジネスには欠かせない相手だ。
「ミス・ポッツ、今日の会合のお相手ですが…」
いつも冷静沈着なトニーにしては珍しく、声のトーンを落とした彼に、ヴァージニアは眉を吊り上げた。
「知ってるわ。アルドリッチ・キリアンでしょ?」
「はい。AIMの創設者ですが、キリアン氏にはあまりよくない噂もありますのでご注意下さい」
そういうことね…と、ヴァージニアは目をクルリと回した。キリアンの噂はヴァージニアも知っている。大勢の女性と関係を持っており、気に入った相手とは会ったその日に関係を持つとか…。だが、彼は今、勢いのある企業のCEOなのだ。彼と良好な関係を持てば、今後のビジネスにおいて強みになる。そう思い、今回の会合をセッティングしたのだ。
「トニー。彼の噂は知ってるわ。大丈夫。子供じゃないんだから」
笑み浮かべたヴァージニアだが、トニーは心配でたまらなかった。彼は今までの男性とは違う何かがある、だから気をつけろと本能的に感じたのだ。だが、これは彼女が決めること。秘書である自分は、そこまで口を出すことは出来ないのだ。唇を噛み締めたトニーは、気を紛らわせようと書類に目を通し始めた。

その夜、案の定キリアンといい雰囲気になったヴァージニアは、一夜を共に過ごそうと、彼を家へと連れて帰ってきた。
2人のことが心配でヴァージニアの家で待ち構えていたトニーは、帰宅した2人を出迎えたのだが、トニーを見た瞬間、キリアンは目を丸くした。
「これはこれは、スタークじゃないか。久しぶりだな」
楽しそうに笑い声を上げたキリアンは、トニーを見下すように鼻で笑った。
「知り合いなの?!」
まさか2人に面識があると思ってもみなかったヴァージニアは、本気で驚いているが、チラリとキリアンを見たトニーは2人に向かって頭を下げた。
「では、ミス・ポッツ。私はこれで失礼します」
そして彼は足早に家を後にした。

「アルドリッチ、あなたトニーと知り合いなの?」
寝室へ向かう途中も、ヴァージニアの頭の中はトニーとキリアンが知り合いだったという事で一杯だった。
「あぁ。MITで一緒だった。あいつは将来有望なスターク・インダストリーズの次期社長。俺はしがない一学生だった。だから向こうは俺のことなんか知らないだろうけどな。それにしてもあのスターク・インダストリーズの御曹司だった男が、今やただの秘書をやってるなんてな。落ちぶれたもんだぜ」
面白い話だと言いながら、キリアンはヴァージニアの服を脱がせ始めたのだが、彼女はトニーのことを考えていた。

そういえば、トニーのことは詳しく知らない。
一回り近く年の違う彼は、15年前から亡き父の秘書をしており、自分が幼い頃は家庭教師をしてくれた。おかげでハーバード大に入学することができたと言っても過言ではないだろう。
どうしてこうも彼のことが気になるのか分からない。彼はただの秘書のはずなのに…。

結局その夜、キリアンに抱かれながらも、ヴァージニアは一晩中トニーのことを考えていた。

③へ…

2 人がいいねと言っています。