「2015年クリスマス」カテゴリーアーカイブ

エスト6歳、エリ2歳

もうすぐクリスマス。
NYのスタークタワーのペントハウスには、天井を突き破りそうなくらい巨大なツリーが鎮座しており、その下では6歳になったエストと2歳のエリオットが遊んでいた。
ツリーの下にはたくさんのプレゼントが山積みになっている。スティーブやソー、ブルースにクリントとナターシャ、ローディにハッピーとお馴染みのメンバーからのプレゼントはもちろんのこと、2人には聞き覚えのない人物からの物など、一体どれが誰のものか分からない状態になっている。
が、エストはふと気づいた。自分たちは両親から毎年プレゼントをもらっているが、一度もあげたことがないと…。

「パパとママへクリスマスプレゼント、あげない?」
「ぷれぜんと?」
姉の言葉に、車のおもちゃで遊んでいたエリオットは顔を上げた。
「そう、いつもパパとママにプレゼントをもらうでしょ?だから私たちからもあげるの。エリは何がいいと思う?」
何がいいと聞かれても、両親が何を欲しいのか分からない。そういえば、父親はおやつを分けてあげると嬉しそうだと思い出したエリオットは、名案だと顔を輝かせた。
「うーんとねぇ……おかし!」
「それはエリがほしいものでしょ?」
姉の俊敏な答えにエリオットは口を尖らせた。弟の答えを切り捨てたものの、エストも両親が何を貰えば嬉しいのか分からなかった。とりあえず店頭で探せば何かいい物があるかもしれない。
「下のお店やさんに行ってみましょ?」
弟の手を取ったエストは、まずはお金がいるわね…と、部屋へと向かった。

部屋に戻ったエストは手伝いをして貰った小遣いを貯めているアイアンマンの貯金箱をひっくり返した。
「1、2……。えっと…全部で$20あるわ」
カバンの中にお金を突っ込んだエストは弟の手を取ると、今度はエレベーターホールへと向かった。

両親からは、子供たちだけで絶対に出歩いてはいけないと言われているのだから、ジャーヴィスが簡単にエレベーターを動かしてくれるはずがない。案の定渋るジャーヴィスに、エストとエリオットは必死に頼んだ。
「ジャーヴィス、パパとママへのプレゼントを買いに行くの。すぐ下のお店に行くだけだから…お願い!」
「じゃーびす、おねがい!」
上目遣いで見上げるその仕草は父親であるトニーにそっくりで、ジャーヴィスは思わずエレベーターを作動してしまった。
こっそりタワーを抜け出した2人は、タワーの隣の店へ向かった。母親に連れられ何度か訪れたことのある店のため、店員も顔見知りだった。
「あら?エストちゃんとエリくん。お父さんとお母さんは?」
子供たちだけの来店に正直不審に思った店員だが、エストとエリは声を潜めた。
「パパとママにクリスマスプレゼントを買いに来たの。だから…」
「しーなの!」
2人だけで秘密裏に買いに来たのだと悟った店員は、この可愛らしいサプライズに協力することにした。

店内を物色し始めた二人だが、なかなか見つからない。父親の好きそうなTシャツや母親の気に入りそうな靴はあるのだが、いかんせん予算というものがある。どうしようかと頭を悩ませるエストの服をエリオットが引っ張った。
「ねーね、これ」
エリオットが指さしたのは、アイアンマンのキーホルダー。
「えっと…1こ$10だから…2つ買えるわ!」
弟の発見に顔を輝かせたエストは、キーホルダーを2つ取ると、店員に渡した。
「これ、下さい!」
ここで店員は粋なサプライズを用意していた。通常は有料で行っているキーホルダーに付けるチャームに名前を彫るサービスを、この小さなサンタクロースにはサービスで行うことにしたのだ。
「エストちゃん、エリくん、このキーホルダーにはね、お名前を彫ったチャームが付けれるの。どう?やってみない?」
世界に一つしかない名前入りのキーホルダーは、最高のプレゼントになるに決まっている。手を叩いて喜んでいるエリを姉らしく制したエストは、ハートのチャームを指差した。
「えっと、このハートのにお願いします。名前は、トニーとペッパーにして下さい」
「分かったわ。少し待っててね」
この可愛らしいプレゼントに一体あのスターク夫妻はどんな反応をするのかしら…と、店員はラッピングしながら自分のことのようにドキドキした。

数分後、キーホルダーをそれぞれ綺麗にラッピングして貰い、2人はコッソリと家に戻った。そしてプレゼントをツリーの下に置くと、何食わぬ顔をして遊び始めた。

クリスマス当日。
4人はツリーの下に置かれたそれぞれのプレゼントを朝から開封していた。だが、最後のプレゼントを子供たちに手渡したトニーは、見覚えのない2つの可愛らしい包みに眉を潜めた。
「これは?」
「あ!それ……」
思わず顔を見合わせたエストとエリオットだが、トニーは包みに張り付けてある『パパへ』『ママへ』と書かれたカードに頬を緩めた。
「おい、ペッパー、君の分だ」
『ママへ』と書かれた包みをペッパーに手渡したトニーは、自分の分を開けた。
中にはアイアンマンのキーホルダーが入っていた。そしてハート型のチャームには『TONY』と名前が彫ってある。
おそらくエストが小遣いを貯めたお金で買ったのだろう。同じく『PEPPER』と名前入りのプレゼントを抱きしめているペッパーとトニーの視線が交錯した。
二人とも子供たちのサプライズに胸がいっぱいになった。こんなに嬉しいプレゼントがあるだろうか…。
黙ったまま目を潤ませた父親と大粒の涙を零す母親を見比べていたエストとエリオットは、プレゼントが気に入らなかったのだろうかと不安になった。
「まま?どちたの?」
母親の膝の上に上ったエリオットは、彼女の頬をペチペチと叩いた。
「ママは嬉しくて泣いてるんだ。パパも嬉しくて泣きそうだ。エスト、エリ、パパもママもこんなに嬉しいプレゼント、貰ったことがないぞ」
腕を伸ばしたトニーは、エストとエリ、そしてペッパーを抱き寄せた。
「エスト、エリ、ありがとう。早速キーケースに付けるわね」
涙を拭ったペッパーは子供たちの頬にキスをした。
見たこともない程嬉しそうな両親の反応に、子供たちは胸をなで下ろした。
「ホント?」
「よかったね、ねーね」
ふふっと笑ったエストとエリオットは、父親と母親にギュッと抱き付いた。

こうして子供たちからの初めてのプレゼントは、2人のキーケースに付けられることになったのだが、それは長い年月が経とうと変わらない風景になったのだった。

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AoU後

「F.R.I.D.A.Y.、今年のペッパーへのプレゼントは何がいいだろうか?」
もうすぐクリスマスだというのに、トニーにしては珍しく、何も用意していなかった。
というのも、今年は色々ありすぎた。一度に色々なことが押し寄せてきて、しばらく何もする気が起こらなかった程だ。それ幸いにと、ペッパーと農場でのんびりするつもりだったが、『世界有数の超巨大企業を動かしているポッツ社長』はあまりに忙しすぎた。結局ものの数日で農場を後にすることになり、2人はNYへと戻ってきた。
が、多忙なポッツ社長は出張で不在なことが多く、二人はこの数か月、数えるほどしか共に眠っていなかった。毎日電話で話はしているが、実際に顔を合わせ話をすることはまれなため、彼女が今何を求め欲しているのか、トニーは正直なところ分からなくなっていたのだ。
ということで、有能な電脳執事に尋ねたのだが…。
『ポッツ様のことはボスが一番ご存じだと思います』
と返答されてしまった。分からないから聞いているのだが…と口を尖らせたトニーだが、そうかと言ってペッパーに直接聞く訳にはいかない。
頭を悩ます主人にF.R.I.D.A.Y.は提案した。
『ポッツ様は多忙ですから、ボスと2人きりで過ごすことが一番ではないでしょうか?』
「そうだよな!」
こんな単純なことが思いつかないなんて…と一瞬思ったトニーだが、そうと決まれば早速行動開始だ。
携帯を取り出したトニーは、ペッパーの秘書に電話をかけ始めた。
「スタークだ。至急確認して欲しいことがある。ペッパ…いや、ポッツ君のスケジュールだ。25日は何も入っていないと思うが、前日の24日はどうだ?…何?!D.C.でパーティーだと?! その予定はキャンセルしろ!24日だけではない!23日もだ!いいな!23日から26日までは、ぜーーったいに何も予定を入れるな!これは会長である私の命令だ!分かったな!」
と、捲し立てたトニーは相手の返事を待つことなく電話を切った。
「F.R.I.D.A.Y.!」
突然話を振られ、成り行きを黙って聞いていたF.R.I.D.A.Y.は人間ならば『ひぃ!』と叫んでいただろうが、そこは有能な電脳執事。
『23日から26日の間は、どなたの電話もお繋ぎしませんので、ご安心下さい』
と澄まして答え、トニーは「さすが私の作ったA.I.だ」と満足げに頷いた。

トニーの根回しの甲斐もあり、クリスマス前後の4日間を2人は誰にも邪魔されることなく過ごすことができたのだが、終いには足腰が立たなくなり、結局年末まで2人きりで過ごす羽目になったとか…。

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“禁じられた関係”のトニペパ

今日はクリスマス。久しぶりに家族の揃った聖なる夜、スターク一家は馴染みの教会のミサに参加していた。
トニーが戻って来たことへの感謝の祈りを捧げた一家は、ミサも終わり家に向かっていた。窓の外の風景を楽しんでいたトニーは車窓から見える町並みにふと懐かしさを覚えた。
「止めてくれ」
運転手に命じたトニーは車から降りると歩き始めた。
「どうしたの?」
慌てて追いかけたペッパーを呼び寄せたトニーは、彼女の肩を抱き寄せた。
「ここだよ、俺が全てを思い出すきっかけをくれた場所は…」
「ここが…」
そこは小さな教会だった。
1年前の今日、トニーは自ら命を絶とうと考えた。それを思いとどまらせたのがこの教会だと思うと、ペッパーは胸が締め付けられそうになった。が、華やかさはないが、どこか落ち着く雰囲気のある教会に、ペッパーの心は自然と落ち着きを取り戻した。

眠たいと愚図るAJは両親が先に連れて帰ってくれることになり、トニーはペッパーを連れて教会の中に入っていった。
ミサも終わった教会では、神父が帰りゆく人々を見送っていた。
この半年、連日のようにメディアが取り上げていたのもあるだろうが、2人の正体に気付いた神父は笑顔で迎えてくれた。
「これはスターク様。ミサに来られたんですか?残念ながら先ほど終了したんです」
折角来て頂いたのに…と心底残念そうな神父だが、トニーは小さく首を振った。
「違うんです。お礼を言いに参りました」
スターク一家とは何の関わりもないのにと首を傾げる神父に、ペッパーの手を握りなおしたトニーは静かに話し始めた。
「神父様、私は1年前あなたに救われました。クリスマスの翌朝、あなたは記憶を失い自暴自棄になっていた私に声を掛け、パンとスープをご馳走してくださいました。そして一部の新聞を下さいました。それがきっかけで私は全てを思い出し、大切なものを取り戻すことができました。そしてその時あなたから頂いた言葉は私の生き方を変えてくれました。ずっとお礼に伺いたかったのですが、この場所がどこか分からず出来ませんでした。ですが、クリスマスの今日、偶然にもここを見つけることができました。お礼が遅くなり申し訳ありませんでした。神父様、本当にありがとうございました」
頭を下げるトニーに神父は1人の男の姿を思い出した。1年前のクリスマス、悲しみと絶望を背負い、雪の中で静かに祈っていた男の姿が…。
あの時の男性が目の前にいる男性だとはにわかに信じられなかった。というのも、彼はトニー・スタークなのだ。裕福で恵まれた環境にいる彼と、あの時の貧困に苦しむ男性が同一人物だとはどうやっても結びつかなかった。だが神父は思い出した。2年もの間行方不明だった彼が突然社会に復帰し、今は恵まれない人々の救済に力を注いでいることを…。あの時彼にどういう言葉を掛けたのか、神父は正直覚えていなかった。だが彼は自分の言葉を道しるべに、今生きているということははっきりと分かった。
「そうですか…あの時の…」
何度か頷いた神父はそばにあった燭台を手に取ると、2人を導くように手を差し伸べた。
「スターク様、今日はクリスマスです。今宵あなたがこちらへいらっしゃったのも、きっと神様の思し召し…。よければ温まっていかれませんか?」
「はい、是非」
1年前と同じ温かな言葉に、トニーは隣で微笑むペッパーの手を握ると神父のあとに続いた。

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“Engelsburg”のトニペパ

「おとうたま!あれやって!」
2才になった長女にせがまれたトニーが手をかざすと、庭に積もった雪が形を変え始めた。するとみるみるうちに大きな雪だるまがいくつも姿を現し、彼女は手を叩いて喜んだ。
娘の頭をくしゃっと撫でたトニーが再び手を動かすと、雪だるまは動き始めダンスを踊り始めた。
目を丸くして驚いた彼女は満面の笑みを浮かべると、父親の手を取り踊り始めた。

その様子を2階の窓から覗いていたナターシャは、クスッと笑みを浮かべた。
「トニー様は変わられましたね」
「ホントね」
もうすぐ1才の息子に服を着せながら、ペッパーは窓の外に目をやった。

今日はクリスマス。
数週間前から領内の村にはマーケットが立ち並び、どの村もいつにも増して賑わっていた。そして昨夜は城にて村人を招いてのパーティーが開催された。パーティーはペッパーがトニーと結婚し開催されるようになったのだが、今年はトニーが(強引に)連れてきた本場のサンタクロースまで登場したのだから、例年にも増して賑わったのは言うまでもない。
そしてクリスマス当日の今日は、一家で教会のミサに参加し、静かに夜を過ごすことになっている。
神に祈り感謝すること…これもペッパーと結婚しトニーが始めたことの一つだ。

「おとうたま!みて!」
雪だるまに抱きついた娘は、勢い余ってそのまま雪の中に突っ込んでしまった。一瞬顔色を変えたトニーだが、雪の中からケラケラと可愛らしい笑い声が聞こえ胸をなで下ろした。
(こんな平穏な日々がくるなんてな…)
クリスマスが楽しいものだと知らなかった。クリスマスだけではない。イースターや誕生日、感謝祭も…。今まで楽しみ方を知らなかった日々の生活は、ペッパーと出会い劇的に変化した。
300年生きてきて、トニーは初めて本当の意味での人生を謳歌していた。
ふと視線を上げると、そのきっかけを与えてくれた人物は、2階の窓越しに息子と共にニコニコとこちらを見て笑っている。
「そろそろ凍え死ぬぞ?」
雪まみれになり歓声を上げる娘を抱き上げたトニーは、愛する人の元へ戻っていった。

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Kiss The Teacher&Need You Nowのトニペパ

12月24日。毎年恒例のスターク・インダストリーズのクリスマスパーティーだが、今年はLAの高級ホテルで行われていた。会場に姿を現したのはトニー・スターク。妻子は一緒ではないのかとガックリと肩を落としたマスコミだが、トニーは知らぬ顔でさっさと会場へ入っていったが…。
ものの30分も経たぬうちに彼は会場から立ち去った。一体どうしたのだろうかと首を傾げるマスコミだが、答えは明白だった。
というのも、今年は2週間前に産まれたばかりの娘の初めてのクリスマス。ということで、ペッパーは産後ということもあり、娘と留守番。トニーは最初の挨拶をすると、妻と娘が待っているから…と、飛んで帰ったのだとか…。

「あれから一年経つんだな…」
暖炉の前に座り込んだトニーは、娘を抱いたペッパーを抱き寄せた。1年前のクリスマスのパーティーは2人にとって辛い思い出だった。両親と交わした最後の言葉は1年経った今でもまだトニーの胸の内で燻り続けていた。
「トニー…」
あまりに切ない声に思わず顔を見ると、トニーは目に涙を滲ませていた。
「この子を見せたかったな。特にお袋はペッパーのことを本当の娘のように思ってたし…」
無邪気な顔をして眠る娘の頬を擽ると、トニーはペッパーにキスをした。
「俺さ、クリスマスがこんなに楽しみなのは初めてだ。子供みたいにワクワクしてる」
明日はペッパーの実家でクリスマスを祝うことになっている。2年前は一人ぼっちだったクリスマス。それが去年はペッパーと迎え、今年はさらに娘と、そしてペッパーの親戚と大勢で迎えることになる。
「トニー、これからは毎年…」
と言いかけたペッパーに、わざとらしく眉を釣り上げたトニーは
「そうだ。毎年家族を増やさないといけないな」
とニンマリ笑うと、真っ赤になったペッパーの唇を奪った。

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