エスト6歳、エリ2歳

もうすぐクリスマス。
NYのスタークタワーのペントハウスには、天井を突き破りそうなくらい巨大なツリーが鎮座しており、その下では6歳になったエストと2歳のエリオットが遊んでいた。
ツリーの下にはたくさんのプレゼントが山積みになっている。スティーブやソー、ブルースにクリントとナターシャ、ローディにハッピーとお馴染みのメンバーからのプレゼントはもちろんのこと、2人には聞き覚えのない人物からの物など、一体どれが誰のものか分からない状態になっている。
が、エストはふと気づいた。自分たちは両親から毎年プレゼントをもらっているが、一度もあげたことがないと…。

「パパとママへクリスマスプレゼント、あげない?」
「ぷれぜんと?」
姉の言葉に、車のおもちゃで遊んでいたエリオットは顔を上げた。
「そう、いつもパパとママにプレゼントをもらうでしょ?だから私たちからもあげるの。エリは何がいいと思う?」
何がいいと聞かれても、両親が何を欲しいのか分からない。そういえば、父親はおやつを分けてあげると嬉しそうだと思い出したエリオットは、名案だと顔を輝かせた。
「うーんとねぇ……おかし!」
「それはエリがほしいものでしょ?」
姉の俊敏な答えにエリオットは口を尖らせた。弟の答えを切り捨てたものの、エストも両親が何を貰えば嬉しいのか分からなかった。とりあえず店頭で探せば何かいい物があるかもしれない。
「下のお店やさんに行ってみましょ?」
弟の手を取ったエストは、まずはお金がいるわね…と、部屋へと向かった。

部屋に戻ったエストは手伝いをして貰った小遣いを貯めているアイアンマンの貯金箱をひっくり返した。
「1、2……。えっと…全部で$20あるわ」
カバンの中にお金を突っ込んだエストは弟の手を取ると、今度はエレベーターホールへと向かった。

両親からは、子供たちだけで絶対に出歩いてはいけないと言われているのだから、ジャーヴィスが簡単にエレベーターを動かしてくれるはずがない。案の定渋るジャーヴィスに、エストとエリオットは必死に頼んだ。
「ジャーヴィス、パパとママへのプレゼントを買いに行くの。すぐ下のお店に行くだけだから…お願い!」
「じゃーびす、おねがい!」
上目遣いで見上げるその仕草は父親であるトニーにそっくりで、ジャーヴィスは思わずエレベーターを作動してしまった。
こっそりタワーを抜け出した2人は、タワーの隣の店へ向かった。母親に連れられ何度か訪れたことのある店のため、店員も顔見知りだった。
「あら?エストちゃんとエリくん。お父さんとお母さんは?」
子供たちだけの来店に正直不審に思った店員だが、エストとエリは声を潜めた。
「パパとママにクリスマスプレゼントを買いに来たの。だから…」
「しーなの!」
2人だけで秘密裏に買いに来たのだと悟った店員は、この可愛らしいサプライズに協力することにした。

店内を物色し始めた二人だが、なかなか見つからない。父親の好きそうなTシャツや母親の気に入りそうな靴はあるのだが、いかんせん予算というものがある。どうしようかと頭を悩ませるエストの服をエリオットが引っ張った。
「ねーね、これ」
エリオットが指さしたのは、アイアンマンのキーホルダー。
「えっと…1こ$10だから…2つ買えるわ!」
弟の発見に顔を輝かせたエストは、キーホルダーを2つ取ると、店員に渡した。
「これ、下さい!」
ここで店員は粋なサプライズを用意していた。通常は有料で行っているキーホルダーに付けるチャームに名前を彫るサービスを、この小さなサンタクロースにはサービスで行うことにしたのだ。
「エストちゃん、エリくん、このキーホルダーにはね、お名前を彫ったチャームが付けれるの。どう?やってみない?」
世界に一つしかない名前入りのキーホルダーは、最高のプレゼントになるに決まっている。手を叩いて喜んでいるエリを姉らしく制したエストは、ハートのチャームを指差した。
「えっと、このハートのにお願いします。名前は、トニーとペッパーにして下さい」
「分かったわ。少し待っててね」
この可愛らしいプレゼントに一体あのスターク夫妻はどんな反応をするのかしら…と、店員はラッピングしながら自分のことのようにドキドキした。

数分後、キーホルダーをそれぞれ綺麗にラッピングして貰い、2人はコッソリと家に戻った。そしてプレゼントをツリーの下に置くと、何食わぬ顔をして遊び始めた。

クリスマス当日。
4人はツリーの下に置かれたそれぞれのプレゼントを朝から開封していた。だが、最後のプレゼントを子供たちに手渡したトニーは、見覚えのない2つの可愛らしい包みに眉を潜めた。
「これは?」
「あ!それ……」
思わず顔を見合わせたエストとエリオットだが、トニーは包みに張り付けてある『パパへ』『ママへ』と書かれたカードに頬を緩めた。
「おい、ペッパー、君の分だ」
『ママへ』と書かれた包みをペッパーに手渡したトニーは、自分の分を開けた。
中にはアイアンマンのキーホルダーが入っていた。そしてハート型のチャームには『TONY』と名前が彫ってある。
おそらくエストが小遣いを貯めたお金で買ったのだろう。同じく『PEPPER』と名前入りのプレゼントを抱きしめているペッパーとトニーの視線が交錯した。
二人とも子供たちのサプライズに胸がいっぱいになった。こんなに嬉しいプレゼントがあるだろうか…。
黙ったまま目を潤ませた父親と大粒の涙を零す母親を見比べていたエストとエリオットは、プレゼントが気に入らなかったのだろうかと不安になった。
「まま?どちたの?」
母親の膝の上に上ったエリオットは、彼女の頬をペチペチと叩いた。
「ママは嬉しくて泣いてるんだ。パパも嬉しくて泣きそうだ。エスト、エリ、パパもママもこんなに嬉しいプレゼント、貰ったことがないぞ」
腕を伸ばしたトニーは、エストとエリ、そしてペッパーを抱き寄せた。
「エスト、エリ、ありがとう。早速キーケースに付けるわね」
涙を拭ったペッパーは子供たちの頬にキスをした。
見たこともない程嬉しそうな両親の反応に、子供たちは胸をなで下ろした。
「ホント?」
「よかったね、ねーね」
ふふっと笑ったエストとエリオットは、父親と母親にギュッと抱き付いた。

こうして子供たちからの初めてのプレゼントは、2人のキーケースに付けられることになったのだが、それは長い年月が経とうと変わらない風景になったのだった。

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