“Engelsburg”のトニペパ

「おとうたま!あれやって!」
2才になった長女にせがまれたトニーが手をかざすと、庭に積もった雪が形を変え始めた。するとみるみるうちに大きな雪だるまがいくつも姿を現し、彼女は手を叩いて喜んだ。
娘の頭をくしゃっと撫でたトニーが再び手を動かすと、雪だるまは動き始めダンスを踊り始めた。
目を丸くして驚いた彼女は満面の笑みを浮かべると、父親の手を取り踊り始めた。

その様子を2階の窓から覗いていたナターシャは、クスッと笑みを浮かべた。
「トニー様は変わられましたね」
「ホントね」
もうすぐ1才の息子に服を着せながら、ペッパーは窓の外に目をやった。

今日はクリスマス。
数週間前から領内の村にはマーケットが立ち並び、どの村もいつにも増して賑わっていた。そして昨夜は城にて村人を招いてのパーティーが開催された。パーティーはペッパーがトニーと結婚し開催されるようになったのだが、今年はトニーが(強引に)連れてきた本場のサンタクロースまで登場したのだから、例年にも増して賑わったのは言うまでもない。
そしてクリスマス当日の今日は、一家で教会のミサに参加し、静かに夜を過ごすことになっている。
神に祈り感謝すること…これもペッパーと結婚しトニーが始めたことの一つだ。

「おとうたま!みて!」
雪だるまに抱きついた娘は、勢い余ってそのまま雪の中に突っ込んでしまった。一瞬顔色を変えたトニーだが、雪の中からケラケラと可愛らしい笑い声が聞こえ胸をなで下ろした。
(こんな平穏な日々がくるなんてな…)
クリスマスが楽しいものだと知らなかった。クリスマスだけではない。イースターや誕生日、感謝祭も…。今まで楽しみ方を知らなかった日々の生活は、ペッパーと出会い劇的に変化した。
300年生きてきて、トニーは初めて本当の意味での人生を謳歌していた。
ふと視線を上げると、そのきっかけを与えてくれた人物は、2階の窓越しに息子と共にニコニコとこちらを見て笑っている。
「そろそろ凍え死ぬぞ?」
雪まみれになり歓声を上げる娘を抱き上げたトニーは、愛する人の元へ戻っていった。

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