『エスト様、エリオット様、機会を伺ってあなた達を脱出させます』
車のエンジンを掛けたジャーヴィスは、主人の命令通り、子供たちを脱出させようと機会を伺っていた。
「でも…パパがまだいるわ!」
『ですが、エスト様とエリオット様を無事に脱出させるのが、トニー様…お父様のご命令ですので』
喚く子供たちを諭すようにジャーヴィスは告げたが、子供たちには通用するはずがない。
「ジャーヴィス!ドアを開けて!このままだとパパが死んじゃうわ!」
『ですが…』
ガチャガチャとドアを開けようとするエストに、ジャーヴィスは迷った。主人の命令通り、アベンジャーズに救援を求めた。後は子供たちを脱出させるだけなのだが、2人はトニー・スタークの子供だ。スタークの遺伝子を引き継いだ子供たちは、これまで大人が思いつかないような奇想天外なことをやって来た。だからもしかしたら、この2人なら、父親を助ける手段を知っているかもしれない…と。
「じゃーびす、パパ、しんじゃうの?」
泣き出したエリオットにジャーヴィスは決意した。この2人にかけてみようと…。
ジャーヴィスがドアのロックを解除するや否や、車のドアを開けたエストは、モニターの前に向かった。
「ジャーヴィス!パパは?!」
モニターに映し出されたのは、プールサイドに倒れている父親の姿だった。全身血塗れの父親が立ち上がろうとする度に、複数のドローンは父親の身体を痛めつけている。
「パパ!」
目に涙を溜めたエリオットは、涙を拭うとキョロキョロと辺りを見渡した。
彼の目に入ったのは、アイアンマン。
アイアンマンならきっと父親を助けてくれる。そう考えたエリオットは、アイアンマンを指差すと、姉の服の裾を引っ張った。
「ねーね、アイアンマン!」
チラリと視線を弟に送ったエストは、イラついたように手を振った。
アイアンマンがいればドローンを退治してくれることはとっくに分かっている。だが残念ながら、あれは父親にしか操作できないのだ。ましてや、子供の自分たちがアーマーを装着して戦えるはずもない。
「分かってるわよ!でも、あれはパパしか着れないの!」
『エスト様、応援を要請しております。バートン様があと10分で到着されます』
「10分も…」
今すぐにでも父親を助けたいのに、幼い自分たちは何も出来ない…。エストは唇を噛み締めると、モニターを見つめた。
一方のトニーは、援護がくるまで持ちこたえようと踏ん張っていたが、相手は10体はいるであろうドローン。加えてこちらはアーマーも着ておらず、武器も持っていない生身。到底敵う訳もなく、トニーはただひたすらに痛めつけられていた。
「くっ…!」
先ほどから蹴られ続けている身体から、またボキっと嫌な音がした。もう何度聞いたか分からない音と共に、胸に激痛が走り、トニーは喘ぐように息を吸った。
それでも子供たちのいるラボへドローンを近づけてはならない考えたトニーは、
「おい…そんなもんか?」
と挑発するようにせせら笑いを浮かべたが、腹に一撃を食らった彼は、ゴホっと鮮血を吐き出した。
ドローンは攻撃の手を緩めることがなく、ぼんやりし始めたトニーだが、彼の頭には子供たちが無事に脱出したかということしかなかった。
(エスト…エリ…早く…)
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