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嫉妬(トニペパ×コールソン)

「フィル!無事だったのね!よかったわ…」

泣き出しそうな顔で駆け寄って来たミス・ポッツは、手を伸ばし私に抱きついてきた。
10センチはあるであろうヒールを履いた彼女は私よりも身長が高く、頭を抱え込まれたのはいいが、柔らかな胸に顔を押し付ける形となった私は目を白黒させた。しかも、胸元の大きく開いたドレスから彼女の胸の谷間が見え、その間からは彼の所有の印が無数に見え…。

これがミス・ポッツでなければ、私も少々嬉しいのだが…。

と思った矢先だった。
「おい、コールソン…」
地獄の底から聞こえるような低音の声が聞こえ、私は飛び上がった。
トニー・スターク。
ミス・ポッツの恋人。

全身からどす黒いオーラを漂わせた彼は、にこやかに笑ってはいるが…その目は殺気に溢れていた。
「す、す、す、スターク…」
さすがの私も全身を震わせると、ミス・ポッツから飛びのいた。
「死んでなかったのか。元気そうだな。よかったな」
棒読みのそのセリフは、裏を返せば『だれの許可を得てペッパーの胸に顔を埋めてるんだ?殺すぞ!』というところだろうか。
私から抱きついたわけでは決してないのだが、そんなことは関係ないのだろう。

「お陰様で…」
顔を上げた時には、スタークとミス・ポッツははるかかなた。
部屋の隅でミス・ポッツにキスをしていたスタークだが、彼女の腰が抜けたのを確認すると、彼女を抱きかかえパーティー会場を出て行った。

やれやれ…ミス・ポッツへの対応は慎重にしなければ、命がいくつあっても足りないな…。

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My Little Princess(トニペパ親子)

今日はスターク・インダストリーズのパーティー。
早々にタキシードに着替えたトニーは、娘の用意を手伝っている妻の様子を見るために、娘の部屋へ向かった。
すると…。
「エスト、お願いだからこっちを履いて。そのお洋服にその靴は似合わないわ」
「いやよ!これがいいの!」
「でも、パパとママがあなたのために選んだのよ?」
「いや!えすと、これがいいの!」
妻と娘が諍う声が聞こえ、トニーは部屋を覗き込んだ。

鏡の前では、ペッパーが困った顔をして座り込んでいる。そしてそのそばには、膨れっ面をしたエスト。先日トニーとペッパーが選んだ花柄のワンピースを着たエストの足元は、あろうことか、赤とゴールドのスニーカー。
「どうしたんだ?」
トニーに気付いたエストは、援軍が来たとばかりに顔を輝かせた。
「パパ!あのね、えすとね、パパとおなじがいいの!」
足元を指さし主張する娘。確かにエストの履いているスニーカーは、アーマーをモチーフにデザインした特注品。トニーとペッパーとエストとお揃いで作ったものであり、エストの一番のお気に入り。
「あなたと同じ靴がいいんですって。でもね、エスト。パパは今日は違うお靴を履いてるわよ?それじゃあお揃いにならないわよ?」
苦笑する母親と父親を交互に眺めていたエストだが、トニーがスニーカーではなく革靴を履いていることに気付くと、すごすごと靴を脱ぎ始めたが、ペッパーが 差し出したかわいらしいサンダルには見向きもしない。
「困ったわね。エスト、靴を履かないで行く気?おかしいわよ?」
頑固なんだから…とため息を付いた妻の横に座ったトニーは、俯いたままのエストの手を握った。
「なぁ、パパのかわいいお姫様?今日はパーティーなんだ。エストもシンデレラみたいにおめかししてパパと踊るんだろ?」
柔らかな頬にキスをすると、娘は顔を輝かせた。
「うん!えすとね、パパとおどるのよ!」
ペッパーの手から靴を奪い取ったエストは、あっという間に靴を履くと嬉しそうにトニーの手を握りしめたのだった。

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Grandparents’ Day(トニペパ親子)

「パパ?もうすぐおじいちゃまとおばあちゃまのひだね?」
9月に入ったある日曜日、眠い目を擦りながらキッチンへ降りてきたトニーは、待ち構えていた娘に質問された。
「え…」
突然何を言うんだ?と、まだ寝ぼけた頭でトニーが考えていると、エストは悲しそうな顔をした。
「あのね…ママのおじいちゃまとおばあちゃまはいるのに、どうしてパパにはいないの?」
Grandparents’ Dayには、毎年ペッパーの両親がLAまでやって来て、食事をしたりカワイイ孫と遊んで帰るのが、ここ数年の恒例の行事になっている。だが、トニーの両親 にはもちろん会ったこともなければ、写真すら見せたことがないかもしれない…。そう、トニーはエストには亡き両親のことを話していなかった。
まだ小さいから分からないだろう…と思っていたが、いつの間にかそういうことを理解できる年になったのか…。
「エストね、パパのおじいちゃまとおばあちゃまにあいたい…」
口を尖らせたエストだが、今は亡き両親には会わせたくても会わせられないのだ。
どうやって説明すればいいんだ?と頭を捻らせていたトニーだが、ペッパーが横から助け船を出してくれた。
「トニー、お父様とお母様に会いに行きましょ?」

妻と子供たちを連れてやって来たのは、ハワードとマリアの眠る墓地。
昔はあまり足を運んでいなかったこの場所も、ペッパーと恋人になり結婚してからは、自分が来られない時は彼女が時折足を運んでくれているため、常に母親が大好きだった薔薇の花束が飾られていた。
「ここにパパのパパとママが眠っているんだ」
寄り添うように並んだ二つの墓標。父親と母親の名前が刻まれた部分にそっと触れたトニーは、そばに立つエストの手を取ると手を重ね合わせた。
「おじいちゃまとおばあちゃまのおうち?」
家といえば家なのだろうか。ただ確かなことは、この下で父親と母親は永遠の眠りについていること。背後からエストを抱きしめたトニーは、静かに語り始め た。
「そうだ。おじいちゃんとおばあちゃんは、ここにいるんだ。あのな、エスト。おじいちゃんとおばあちゃんは、ずーっと昔にいなくなったんだ。だから、ママにもエストとエリにも会ったことはないんだ。でもな、おじいちゃんとおばあちゃんは、空からエストとエリと…それにパパとママのことも見守ってくれているんだ」
父親はうんと昔に両親を亡くしたらしいと、幼いなりに理解したエストは、クルリと向きを変えると父親に抱きついた。
「パパにはパパとママがいないの?パパ、かわいそう…」
涙ぐんだエストは、トニーのジャケットをギュッと握りしめた。嗚咽を漏らし始めた娘の背中を撫でたトニーは、眠っているエリを抱き歩いて来たペッパーの手をそっと握った。
「いや、違うぞ。パパにはママとエストとエリがいる。だから、パパはさみしくない。それに、おじいちゃんとおばあちゃんは、パパが辛い時に何度も夢の中でパパのことを助けてくれたんだ」
父親の両親は姿こそ見えないが、自分たちを…そして父親を見守ってくれている。
涙を拭ったエストは、トニーに向かい笑顔を浮かべると、小さな手で墓標を撫でた。
「おじいちゃまとおばあちゃま、エストにあえてうれしいかなぁ?」
その笑顔はペッパーにそっくりなのだが、どことなく記憶の中にある母親に似ている気がした。
「当たり前だ。おじいちゃんもおばあちゃんも、エストとエリが会いに来てくれて喜んでるぞ?」
頭をくしゃっと撫でると、エストは照れ臭そうに笑った。
「エストもね、おじいちゃまとおばあちゃまにあえて、うれしいよ」

隣に立つペッパーの手を握り直したトニーは、背後に気配を感じ振り返った。もちろん、そこには誰がいるわけでもないのだが、目線の先にある大きな木をじっと見つめたトニーはゆっくりと目を閉じた。
遠い昔、まだ自分が本当に幼かった頃。父親と母親と三人で大きな木の下で遊んだ記憶を思い出したトニーは、目から零れ落ちそうになった涙をぐっと堪えた。その瞬間、暖かく心地よい風がトニーたちの周りに吹いた。
生きている時は感謝などしたことなかったトニーは、両親の墓標の前で一人静かに祈り続けた。
(親父、お袋…ありがとう。これからも見守っていてくれ…)

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Granpa!(ハワード×トニー)

「かわいいですね?お孫さんですか?」

ある秋の日。
1歳になったトニーを連れてセントラルパークへ来ていた私は、子連れの若い女性の声に振り返った。

幸いにも、相手は私が誰だか気付いていないようだ。
この私…ハワード・スタークがベビーカーを押して公園にいるなど、誰が想像するだろうか。だが、妻のマリアが友人との食事会で不在。母親がいないことに気付いたトニーは、何をしても泣くばかり。ほとほと困った私は、最終手段としてトニーを公園へ連れて行くことにしたのだが…。

確かに私は50歳を超え、頭に白いものも混じり、小さなトニーの父親には見えないのかもしれないが…。
祖父と孫に間違えられ、ガックリと頭を落とす私を大きな目でじっと見つめたトニーは、私を指さすと同時に女性の方へ向き、満面の笑みを浮かべた。
「ぱぁぱ!」
トニーの一言で私が父親と分かった女性は、先ほどの失言を詫びるかのように頭を下げた。
「す、すみません。お父様だったんですね…。それにしても可愛らしい坊やですね」
トニーの頭を撫でた女性は一礼すると、物凄い勢いでベビーカーを押して去って行った。

「さすがは私の息子だ!」
トニーを抱き上げ頬にキスをすると、先ほどまで泣いていたのがウソのように、息子はかわいらしい笑顔を浮かべた。
「ぱぁぱ!」
くすぐったそうに笑ったトニーをベビーカーに座らせた私は、先ほど通って来た道にアレがあったことを思い出した。
それは、トニーも私も大好きなソフトクリーム。
夕食前に甘いものなんて…と怒るマリアの顔を思い浮かべた私は、ソフトクリームを1つ買うとベンチに座り、トニーを膝の上に座らせた。
「おい、トニー。ソフトクリームを食べたのは、ママには内緒だぞ?」
「あい!」
手を叩いてねだるトニーの口にソフトクリームを運んだ私は、自分もペロリと舐めた。

なぁ、トニー。たまには男同士、こういうのもいいな?

2 人がいいねと言っています。

Secret

「なぁ、トニー。お前、ペッパーのことが好きなんだろ?」
突然のローディの発言に、トニーは飲みかけていたコーヒーを吹き出した。
「なっ!お、おい!何を…」
慌てて飛び散ったコーヒーを拭くトニーだが、その顔は真っ赤に染まっている。
「素直になれよ、トニー。みんな気づいてるんだぞ?」
ニヤニヤと笑みを浮かべるローディだが、トニーはムスっと口をつぐんでしまった。
「それに、彼女もお前のこと…」
「ローディ。そこまでだ」
何を照れているんだ…と言いかけたローディは、言葉を飲み込んだ。トニーはいつになく真剣な顔をしており、そしてその瞳には深い悲しみが浮かんでいた。
「知ってるさ。ずっと前から知ってる…。だが、今はダメだ。ダメなんだ…」

ペッパーにもローディにも言っていない。ジャーヴィスだけが知っている秘密。
私は長く生きられない。もうすぐ死ぬ。
私の命を守るはずの胸のリアクターが、命を奪おうとしている。
苦しみしかない世界に…大切な彼女は連れて行けない。
悲しむ顔を見るよりも、何も知らなくてもいい。ただ、そばにいて笑ってくれていればいいんだ。

一瞬潤んだその瞳から何か感じ取ったのだろう。だが、ローディは何も聞かなかった。いつかトニー自身が自ら話すまで聞かないつもりだった。
「そうか…。でも、トニー。お前も幸せになる権利はあるんだぞ?だから…いつの日か…」
そう、彼は幸せにならなければならない。人一倍脆いくせに、人一倍虚栄を張って生きている。そんな彼を全て受け止め愛してくれる存在…彼のすぐそばにいる存在と幸せになるべきなんだ…。

「あぁ、ありがとう」
肩に置かれた手にそっと触れると、トニーは笑みを浮かべた。

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