「かわいいですね?お孫さんですか?」
ある秋の日。
1歳になったトニーを連れてセントラルパークへ来ていた私は、子連れの若い女性の声に振り返った。
幸いにも、相手は私が誰だか気付いていないようだ。
この私…ハワード・スタークがベビーカーを押して公園にいるなど、誰が想像するだろうか。だが、妻のマリアが友人との食事会で不在。母親がいないことに気付いたトニーは、何をしても泣くばかり。ほとほと困った私は、最終手段としてトニーを公園へ連れて行くことにしたのだが…。
確かに私は50歳を超え、頭に白いものも混じり、小さなトニーの父親には見えないのかもしれないが…。
祖父と孫に間違えられ、ガックリと頭を落とす私を大きな目でじっと見つめたトニーは、私を指さすと同時に女性の方へ向き、満面の笑みを浮かべた。
「ぱぁぱ!」
トニーの一言で私が父親と分かった女性は、先ほどの失言を詫びるかのように頭を下げた。
「す、すみません。お父様だったんですね…。それにしても可愛らしい坊やですね」
トニーの頭を撫でた女性は一礼すると、物凄い勢いでベビーカーを押して去って行った。
「さすがは私の息子だ!」
トニーを抱き上げ頬にキスをすると、先ほどまで泣いていたのがウソのように、息子はかわいらしい笑顔を浮かべた。
「ぱぁぱ!」
くすぐったそうに笑ったトニーをベビーカーに座らせた私は、先ほど通って来た道にアレがあったことを思い出した。
それは、トニーも私も大好きなソフトクリーム。
夕食前に甘いものなんて…と怒るマリアの顔を思い浮かべた私は、ソフトクリームを1つ買うとベンチに座り、トニーを膝の上に座らせた。
「おい、トニー。ソフトクリームを食べたのは、ママには内緒だぞ?」
「あい!」
手を叩いてねだるトニーの口にソフトクリームを運んだ私は、自分もペロリと舐めた。
なぁ、トニー。たまには男同士、こういうのもいいな?