「2013年クリスマス」カテゴリーアーカイブ

クリスマス(トニペパ+エスト1歳1か月)

エストを抱きかかえたペッパーが玄関に向かうと、ドアの前に立っていたのは…クリスマスにはお馴染みのあの人物。
大きな白い袋を担ぎ真っ赤な衣服に白い髭のその人物と言えば…そう、サンタクロースだ。
初めて見るサンタクロースを、まるで不審者のようにじっと見つめていたエストだが、サンタは取って付けたような高笑いすると
「メリークリスマス!」
と大声で言いニヤリと笑った。
ポカンと口を開けてサンタを見たエストだが、その大きな目にはみるみるうちに涙が溜まり始め、やがて声を上げて泣き出した。
ペッパーにしがみついて泣くエストを見たサンタは、予想外の事態に大慌て。
サンタになった自分を見て大喜びする娘の図を思い浮かべていたサンタ…いや、トニーは、帽子と髭を取り、慌てて服を脱いだ。
「え、エスト!ほ、ほら!パパだ!泣くな!な?頼むから泣き止んでくれ!」
苦笑するペッパーの肩に顔を押し付けて泣いていたエストだったが、大好きな父親の声が聞こえてきたのだ。しゃくりあげながらも顔を上げると、目の前には先ほどまでいた知らないおじいさんの代わりに父親の姿。
途端に顔を輝かせたエストは、
「ぱぁぱ!」
と、満面の笑みを浮かべ父親に腕を伸ばした。
「ダメだったか…」
万全の準備を整えていたのに…と、ガックリと肩を落としたトニーに
「人見知りする方じゃないのにね」
とペッパーは必死で笑いをこらえている。
「仕方ないな。ほら、エスト。サンタクロースからのプレゼントを預かってきたぞ?」
不思議そうな顔をしているエストの涙を拭ったトニーは、その柔らかな頬にキスをした。

最初にいいねと言ってみませんか?

クリスマス(ハワード+トニー1歳半)

今日はクリスマス。
店先や家々は華やかなイルミネーションで彩られ、行き交う人々は家路を急いでいた。
それは、NYのスターク邸も例外ではない。庭の木々もそして家の外壁も、これでもかというくらい派手に飾られており、2年前のクリスマスでは見られない光景が広がっていた。
「社長…毎年派手になっていきますね」
家の前に車を停めた運転手は、後部座席で何やらごそごそとしているハワードに声を掛けた。
顔を上げたハワードは、隣に置いていた荷物を開封しながら得意げに話し始めた。
「当り前だ。かわいい息子のためだ。去年はまだ分からなかったようだが、今年はこの飾りを見て喜んでいるんだ。来年はもっと…」
だが、運転手が微笑ましい…と笑顔で自分を見つめているのに気づくと、慌てて咳払いをした。

車の中で用意していた服に着替えたハワードは、玄関の前に立つと呼び鈴を押した。ドア横の小窓から覗いていると、小さな息子がよちよちと走ってくるのが見え、深呼吸をするとハワードはドアを開けた。
「トニーくん、メリークリスマス!」
突然現れたサンタクロース。玄関先で仁王立ちしているサンタクロースに驚いたトニーは、足元で立ち止まるとじっと見つめた。
が、彼は気付いてしまった。サンタクロースの正体に…。
「パパ!」
サンタの足元にしがみ付いたトニーは、嬉しそうに声を上げた。これに慌てたのはハワード。こんな完璧な変装なのだ。絶対にバレないと自信満々だったのに…。
「おい、マリア。ばれたぞ!なぜだ?!」
リビングへと繋がるドアの陰で必死で笑いをこらえているマリアに向かってハワードは叫んだ。だが、抱っこしろと文句を言い始めたトニーを抱き上げると、ため息を付きながら真っ赤な帽子を脱ぎ捨てたのだった。

1人がいいねと言っています。

クリスマス(ハワード+トニー20歳 1990年)

もうすぐクリスマス。
出張先からNYの自宅へと戻って来たトニーは留守電に母親からのメッセージが何件も残されていることに気付いた。
ため息を付いたトニーだが、母親からの電話とあっては掛けないわけにはいかない。
数回の呼び出しの後、電話口から聞こえてきたのはマリア・スタークの声。
近況を聞かせろと言う母親と会話していたトニーだったが、しばらくしてマリアが遠慮がちに話を変えた。
「トニー、今年も帰ってこないの?」
クリスマスをLAで一緒に過ごそうということだが、トニーは口を噤んでしまった。
大学卒業後、LAの本社へ…と言われていたが、あの父親の元に戻るのが嫌で無理を言いNYの支社で働き始めたトニー。
大学に入って以来、クリスマスはいつも友達とパーティー三昧で、両親とはここ数年クリスマスを共に過ごしていなかった。そればかりか、最後に顔を合わせたのは1年前。
黙ったままのトニーにマリアは寂しそうに呟いた。
「そう…」
母親の声にトニーは慌てて言った。
「ゴメン…。でも…」
トニーが言いかける前に、息子の気持ちが分かっているマリアは慌てて口を挟んだ。
「いいのよ。でも、たまには帰ってきてね。ママはあなたに会いたいわ」
近々NYに行くからその時に会いましょ?と言うと、マリアは電話を切った。

電話を終えたトニーは、酒を片手にバルコニーに出た。
冷え切った空気が体中を包みこみ、トニーは身震いした。先ほどの会話と、そして母親の寂しそうな声が蘇り、トニーは慌てて酒を煽った。

なぜだか分からないが、今年は帰らないといけない気がした。

クリスマス当日。
夜も更けた頃、トニーはLAの実家の前で車を降りた。
22時を過ぎ、辺りは猫の子一匹いない。
両親は眠っているかもしれない。そう思いつつそっと家の中に入ったトニーは、リビングで話し声がしているのに気付いた。
リビングでは、両親がワイン片手に寄り添い話をしていた。
何の前触れもなく突然戻って来た息子に驚きつつも、マリアは満面の笑みで抱きつき息子を自分に隣に座らせた。
ハワードは黙ったままだが、グラスを持ってくると何も言わずトニーの前に置きワインを注いだ。
「どうしたの?お友達とパーティーだったんでしょ?」
久しぶりに家族がそろったのだ。マリアは楽しそうに話をしているが、ハワードは相変わらず表情を崩さない。だが、父親の目がかすかに潤んでいることにトニーは気付いてしまった。
「たまには親孝行もいいかと思って…」
照れ臭そうにそっぽを向いたトニーだったが、ポケットから小さな箱を2つ取り出した。
「あと、クリスマスだから…。母さんには、これ。それと、いらないかもしれないけど…父さんに…」
遠慮がちに差し出したリボンのついた小さな箱。
「トニーったら…。あなた、このワインを送ってきてくれたじゃないの」
先ほど飲んでいたワインは、確かにクリスマスにと両親に送ったものだ。だが、それは部下に命じて送らせたものであって、トニーが自ら選んだものではなかった。
「これは俺が選んだんだ。だから…」
もごもごと口ごもった息子を愛おしそうに見つめたハワードとマリアは、箱を開け始めた。
「あら!素敵!ありがとう、トニー。大切にするわね。新年のパーティーに付けて行かなきゃ!」
ジュエリーのセットを箱から出したマリアは、早速身に着け始めた。
そしてハワードは、高級腕時計を箱から出すと腕に付けじっと眺めた。
「お前が選んだにしてはセンスあるな」
微かに顔を綻ばせたハワードは、顔を上げると珍しくニヤリと笑った。
どうやら父親は自分が選んだ時計を気に入ってくれたらしい。安心したようにホッと息を吐いたトニーは、グラスを取るとワインを飲み干した。
「いつまでいるの?」
「年明けまで。だから1週間はいる」
「あら、嬉しいわ。明日は買い物について来て。ハワードったら一人で行って来いって言うのよ。それから、夜は食事に行きましょ?」
嬉しそうな母親とそれを黙って見守る父親の穏やかな瞳。
ここ数年感じることのできなかった家族の温もりに、トニーは久しぶりに心の底から楽しいクリスマスを過ごした。

最初にいいねと言ってみませんか?

クリスマス(トニー21歳 1991年)

あの事故から1週間。
葬儀と事務的な手続きも終わり、トニーはNYの家を引き払いLAへ戻って来た。
世間はクリスマス。街を彩るイルミネーションも今年は色付いて見えない。
さすがに例年のようにどんちゃん騒ぎをしようとも思わないため、トニーは一人自宅で過ごしていた。
一人きりの家。しんと静まり返った静寂に耐えきれなくなったトニーはテレビを付けたが、奇しくも今年の重大ニュースの特番なのか、両親の死に関する特集をやっており、トニーは慌ててテレビを消した。

いるのが当たり前だと思っていた。どんなに反抗しても両親が自分の傍にいるのは…。
だが、1週間前のあの事故で突然奪われた。
母親は自分のことを愛してくれていたが、父親には疎まれていた。
家庭を顧みず酒に溺れる父親に反抗し、ここ数年はほとんど会話らしい会話をしてこなかった。
それでも両親の死は、トニーの心にぽっかりと大きな穴を作った。
どうしてもっと話をしなかったんだろうという後悔と、そしてもっと一緒にいる時間を作ればよかったという思いもある。

父親は死んだ時、去年のクリスマスに自分が贈った腕時計をはめていた。
ああいう父親だったが、彼なりに自分のことを愛していてくれたのかもしれない。
ハワードがどう思っていたのかは、結局分からずじまいだった。だが、一つだけ確かなこと。それは、ハワードは自分に背負いきれないような大きな責任を黙って遺していったこと。

ため息を付いたトニーは頭を抱えていたが、やがて立ち上がるとワイン片手に外へ出て行った。

トニーが向かったのは両親の墓。真新しい墓標には、訪れる人が止まないのだろう。たくさんの花が捧げられていた。
ワイングラスを父親と母親の墓標の前に置いたトニーは、座り込むとワインを注いだ。
去年のクリスマス、3人で飲んだワインと同じもの。
今思えば、虫の知らせだったのだろうか。家族で過ごした最後のクリスマスを思い出したトニーの頬を、冷たい物が流れ落ちた。
「父さん、母さん…メリークリスマス」
真っ暗な空を見上げると、二つの小さな星が寄り添って輝いているのが見えた。

その日、トニーは両親の死後、初めて涙を流した。

1人がいいねと言っています。

恋人になって初めてのクリスマス(トニペパ)

「メリークリスマス」
カチンとグラスのぶつかる音が響き、ペッパー・ポッツは目の前の男性に気付かれないように身体を震わせた。

海沿いの有名レストランも今宵はクリスマスということもあり満席。
店内でも一等席に座ったペッパーの目の前には、数か月前恋人になったばかりの男性…トニー・スタークの姿。
トニー・スタークと言えば、彼と過ごした一夜限りの女性は星の数ほどおり、どうやら隠し子(本人は知らないというが…)も数人いるというもっぱらの噂。天才・億万長者・プレイボーイと名高い彼だが、つい最近、『プレイボーイ』の代わりに『スーパーヒーロー』という称号と極上の美女を手に入れたわけだが、その美女であるペッパー・ポッツは周囲の目が気になって仕方ない。元々彼の秘書であり、つい最近CEOとなったばかりの彼女だから、トニー・スタークとの付き合いは長く、注目されるのには慣れているはずなのだが、『トニー・スタークの恋人』という目で見られるのはまだ慣れていなかった。
「おい、ペッパー。食わないのか?」
目の前の超高級料理に手を付けない彼女にトニーは声を掛けた。
「あ…、ご、ごめんなさい」
我に返ったペッパーは、慌ててフォークとナイフを手に取ると料理を口に運んだ。だが、黙々と料理を口に運ぶペッパーに、トニーは眉を潜めた。
「なぁ、ハニー。もし口に合わないなら…」
店内にいる全員がトニーの一挙一動に聞き耳を立てているのは間違いない。それ故にトニーが『マズイ』とでも言えば、明日からこの店には誰一人来なくなることは間違いないのだから…。
ペッパーは慌てて首を振った。
「ち、違うわ!ここの料理は最高よ。それにワインも。ただね…その…何だか恥ずかしくって…」
もじもじと顔を赤らめたペッパーをトニーは不思議そうに見つめた。
「なぜだ?今さら何を恥ずかしがるんだ?」
鼻を鳴らしたトニーだが、どうやら女の事情は違うらしい。チラりと辺りを見渡すと、客のみならず店員まで自分たちの方を盗み見しているし、窓の外ではパパラッチが大勢カメラを構えているではないか。
(なるほど…)
自分はこういう状況には慣れているが、ペッパーはまだ慣れていないということらしい。だが、せっかくのクリスマス。ペッパー・ポッツはトニー・スタークのオンナであることをアピールするには絶好のチャンスじゃないか。
気付かれないようにニンマリと笑ったトニーは、いつになく顔を真っ赤にしながらケーキを食べているペッパーをじっと見つめると手を取った。
「ハニー」
甘い声で囁かれペッパーが顔を上げると、目の前にはトニーの顔が迫っており…。
「ん…」
気が付いた時には、ペッパーはトニーから情熱的なキスをプレゼントされていた。
唇が触れる程度の軽いキスではない。逃げ惑うペッパーの舌を探り当てたトニーは、舌の根まで吸い取るように自分の舌を絡め始めた。こんな激しいキスは、まだベッドの中でしかもらったことはない。無意識にトニーのジャケットの襟元を握りしめたペッパーの口の端から飲み込み切れなかった唾液がつっと零れ落ちた。
辺りがしーんと静まり返る中、銀色の糸を引きながら唇を離したトニーは、すっかり腰が抜けぼんやりとしているペッパーを抱きかかえると
「美味かった」
と、颯爽と店を後にした。

3 人がいいねと言っています。