あの事故から1週間。
葬儀と事務的な手続きも終わり、トニーはNYの家を引き払いLAへ戻って来た。
世間はクリスマス。街を彩るイルミネーションも今年は色付いて見えない。
さすがに例年のようにどんちゃん騒ぎをしようとも思わないため、トニーは一人自宅で過ごしていた。
一人きりの家。しんと静まり返った静寂に耐えきれなくなったトニーはテレビを付けたが、奇しくも今年の重大ニュースの特番なのか、両親の死に関する特集をやっており、トニーは慌ててテレビを消した。
いるのが当たり前だと思っていた。どんなに反抗しても両親が自分の傍にいるのは…。
だが、1週間前のあの事故で突然奪われた。
母親は自分のことを愛してくれていたが、父親には疎まれていた。
家庭を顧みず酒に溺れる父親に反抗し、ここ数年はほとんど会話らしい会話をしてこなかった。
それでも両親の死は、トニーの心にぽっかりと大きな穴を作った。
どうしてもっと話をしなかったんだろうという後悔と、そしてもっと一緒にいる時間を作ればよかったという思いもある。
父親は死んだ時、去年のクリスマスに自分が贈った腕時計をはめていた。
ああいう父親だったが、彼なりに自分のことを愛していてくれたのかもしれない。
ハワードがどう思っていたのかは、結局分からずじまいだった。だが、一つだけ確かなこと。それは、ハワードは自分に背負いきれないような大きな責任を黙って遺していったこと。
ため息を付いたトニーは頭を抱えていたが、やがて立ち上がるとワイン片手に外へ出て行った。
トニーが向かったのは両親の墓。真新しい墓標には、訪れる人が止まないのだろう。たくさんの花が捧げられていた。
ワイングラスを父親と母親の墓標の前に置いたトニーは、座り込むとワインを注いだ。
去年のクリスマス、3人で飲んだワインと同じもの。
今思えば、虫の知らせだったのだろうか。家族で過ごした最後のクリスマスを思い出したトニーの頬を、冷たい物が流れ落ちた。
「父さん、母さん…メリークリスマス」
真っ暗な空を見上げると、二つの小さな星が寄り添って輝いているのが見えた。
その日、トニーは両親の死後、初めて涙を流した。