「Pepperony 100」カテゴリーアーカイブ

70. Friends

「賑やかだな」
帰宅したトニーを出迎えたのは、家中に響き渡る子供の声。
「そうなの。みんな大はしゃぎで」
ペッパーキスをし、彼女の腕の中の息子の頭を撫でたトニーは、アーマーを脱ぐとシャワーを浴びるために寝室へ向かった。

「ハッピーがバーベキューをしてくれたの。でもみんな言ってるわよ。エストちゃんのパパに会いたいって」
腰にタオルを巻き、濡れた髪をタオルで擦りながら出てきたトニーに着替えを渡したペッパーは、ベッドに腰掛けた。
「そうか。急にすまなかったな」
本来なら父親である自分がいてやらねばならなかったのだが、急に呼び出されたため、ハッピーに代役を頼んだのだった。
「大丈夫よ。まだ続いてるから」
ペッパーが腕の中の息子の頬を突くと、彼は父親に手を伸ばした。
「だっだー!!」
腰のタオルを落としたトニーは急いで下着とジーンズを履くと、ペッパーから息子を受け取った。
「そのうちお前も友達を連れてくるんだろ?100人くらい入るように、もっと家を広げないといけないな」
息子の頭にキスをしたトニーは、呆れたように目をくるりと回したペッパーに向かってニヤリと笑った。

「みんな!パパがかえってきたよ!」
リビングに姿を見せたトニーに気付いたエストは、周りにいた友達に声を掛けた。
「おかえりなさい、パパ」
駆け寄ってきたエストを抱きしめたトニーは、次々と駆け寄ってきたエストの友達にあっという間に囲まれてしまった。
トニーを見た子供たちは目を輝かせた。
「アイアンマンだ!」
「トニー・スタークだ!」
だが…。
「おじさんがアイアンマンなの?」
と想像と違うと言わんばかりに首を傾げる子供たちもいる。挙句の果てに、
「アイアンマンじゃない!!」
と泣き出す子供たちまでいる始末。
「パパはトニー・スタークよ?パパのこと、しらないの?」
と、泣いている子供にエストは必死で説明しているが、その子供は、『アイアンマンではない。ただのおじさんだ』と泣くばかり。

『ただのおじさん』と言われたトニーは軽くショックを受けたが、所詮子供なんてそんなものだと思い直した。だが、ここで株を上げなければ娘と友達の信頼問題に関わると思ったトニー。
「ちょっと待ってろ!」
と叫んだトニーはラボへと駆け下りて行った。

しばらくして、アーマーを着たトニーが急いで戻ってきた。
アイアンマンの登場に、先ほど泣いていた子供も、羨望の目で見ていた子供もみんな拍手喝采だ。
「アイアンマンだ!!!」
と、大歓声を上げて飛びついてきた子供たちを一人ずつ抱き上げていると
「いったでしょ?エストのパパはアイアンマンよって」
と、エストも鼻高々だ。
だが、子供というものは残酷である。アイアンマンが登場したからには、他のヒーローも見たくなる。それが子供の心理なのだろう。
「キャプテン・アメリカは?」
「ソーはいないの?」
「ぼく、ハルクがすきなんだ!ハルクよんできてよ!」
「アイアンマンより、ホークアイのほうがカッコイイんだよね!」
と、ひとしきりアイアンマンと触れ合った彼らは、口々に他のヒーローの名前を言い始めた。
先ほどまで自分の父親に会いたいと言っていた友達が、手のひらをひっくり返したように好き勝手なことを言っている。脹れっ面をしたエストはアイアンマンにしがみついた。
「パパ!もういいよ!せっかくパパがアイアンマンになったのに!パパはアイアンマンのおしごとでつかれてるのよ?だからアイアンマンはあたしだけのもの!もうみせてあげない!」
と、トニーをリビングから連れ出そうとした。
が、その時、タイミングがいいのか悪いのか、HUBの中でジャーヴィスの声が響き渡った。
『トニー様、ロジャース様からAssembleコールが入りました』
まだ揉めている子供たちの中から逃げ出すには好都合。
そばで苦笑いしているペッパーに子供たちを任せたトニーは、これ幸いにと出かけて行った。

(やれやれ…。子供はかわいいが、大勢になると…。それにしても、父親ってのも大変だな…)

何やかんだ言って、やはりアイアンマンはヒーローなのだろう。
バルコニーから『アイアンマン!がんばって!』と叫んでいる子供たちに手を振ったトニーは、空高く飛び上がった。

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69. Electric(トニペパ+クリナタ)

クリントとナターシャがマリブのスターク邸にやって来たのは、5月のある夜。
突然の訪問にも関わらず快く出迎えてくれたスターク夫妻だが、ナターシャはともかくクリントは妙に居心地が悪そうにしている。
どうしたのかとトニーとペッパーが聞こうとする前に、ソファに座ったナターシャが放った一言で事態は一変した。

「結婚したの」

その一言に、スターク邸はおろか、マリブ全体が静まり返った。
一瞬、何の話か分からなかったトニーとペッパーは顔を見合わせたが…。
「け、け、結婚?!」
目を見開いたトニーは、コーヒーのカップをテーブルに置いた。が、投げつけるように置かれたカップは見事にひっくり返り、読みかけのPC雑誌は琥珀色に染まってしまった。
「結婚式…。来月だったでしょ?!」
ポカンと口を開けていたペッパーだったが、やっとの思いで一言発すると、気が動転しているのだろう、隣に座るトニーの膝の上に座った。
「あぁ…それが…」
言葉を濁したクリントは、隣に座るナターシャをチラリと見た。
「そうなの。あ、でも、式もパーティーも予定通りするから。是非家族で出席してね」
一人冷静なナターシャは、コーヒーを啜るとお土産だと持ってきたケーキを頬張った。

しばらくしてペッパーとナターシャは女同士で盛り上がり始めたため、トニーはクリントを連れてバーカウンターに移動した。
祝いの酒だとクリントにとっておきのスコッチを出したトニーは、結局未だに分からない真相について聞いてみることにした。
「おい、バートン。一体どうしてまた急に…。お前、そんなに待ちきれなかったのか?」
グラスを軽く掲げたクリントは、スコッチを飲むとため息をついた。
「スターク。俺がそんなに辛抱のない男に見えるか?」
首を振ったトニーの脳裏に、あの女性の顔が浮かんだ。
「…ロマノフか…」
首を縦に振ったクリントは、ペッパーと楽しそうに話をするナターシャをちらりと見ると頬杖をついた。

二人が電撃結婚に至った経緯はこうだ。

任務先で銃撃戦に巻き込まれた二人。
結婚前に死にたくないと冗談めいたクリントの言葉に
「じゃあ、今しましょ?」
とナターシャは銃弾が飛び交う先を指さした。
偶然なのか、陰謀なのか、その先には教会があるではないか。
ナターシャに半ば強引に引っ張られ、教会に向かったクリントは、その場で夫婦の誓いを立てたとか…。

話を聞き終わったトニーは苦笑い。
「成る程…。お前たちらしいじゃないか」
来月には結婚する予定だったのだし、その場で拒否しなかったのだから、クリントにもその気はあったのだろう。
「確かに俺たちらしいだろ?それに、ナットが喜んでた。俺はそれだけで十分だ」
そう言って笑ったクリントは実に幸せそうだ。
「そうだな。バートン、結婚おめでとう」
グラスを合わせ乾杯したトニーは、友人の背中をポンと叩いた。

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68. Female

ふと、遠い昔のことを思い出した。
あれは彼女が私の秘書になって数年経った頃だった。
海外出張で泊まった小さな街のホテル。諸事情あり、私たちは初めて同じベッドで眠った。

あの夜、私は彼女を初めて『オンナ』として意識した。
今思えば、彼女も何か感じ取っていたのかもしれない。同じ気持ちだったのかもしれない。

白く美しい肌、長く美しい赤毛、化粧を取った素顔にも溢れかえる可愛らしさと色気…。そしてその細く美しい身体から醸し出される甘い香り…。

全てが私の本能を駆り立てた。

赤く誘うような唇を奪いたい。柔らかな胸に触れたい。白い肌に己の印を刻みたい…。そして心も身体もモノにしたい…。

彼女をモノにしたいという欲望と、彼女との関係だけは大切にしたいという理性と、必死に戦った夜だった。

そうだ、覚えているか聞いてみるか。彼女のことだ。きっと覚えているだろうが…。
せっかくだ。またあの思い出のホテルに泊まってみるのもいいかもしれない。今度こそ抱き合い眠るために…。

※67.Maleのトニーサイドです。

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67. Male

仕事中、ふと思った。
トニーを男性として意識し始めたのはいつだったんだろうと…。

ハッキリと意識したのはいつだろう。彼のことを『愛している』と自覚した時にだろうか。
正直な話、彼のことは出会った時から『好き』だった。でもそれは上司として、そして年の離れた兄のような存在としての『好き』だった。『好き』という感情が、異性として彼を意識し、やがて愛情に変わっていったのはきっとあの出来事以降だろう。

それは彼の秘書になって数年経った時だった。
ヨーロッパへ出張へ向かった私たちは、とある国の人里離れた小さな街に降り立った。だが、予約していたホテルは手違いでダブルの部屋。しかもその日に限りホテルは満室。同行していたスタッフが部屋を譲ると言ったが、冬空の下に彼らを放り出すなんて私もトニーもできなかった。
「大丈夫だ。どうにかなる」
そう言ったトニーは私を部屋へ引っ張り込んだ。
だが、さすがに一緒に寝るのはマズイと思ったのか、彼はソファで眠ると言い始めた。部屋にあるのは小さなソファが一つ。長旅でクタクタなのだから、そんな小さなところでは休めるはずがない。だから、体の小さな私がソファで眠ると言うと、
「女性をソファに寝かせられると思うか?」
と、彼は断固として譲らない。
しばらくお互い譲り合っていたが、終わりの見えない議論に飽きたのか、
「分かった。端と端で眠ろう」
と彼は提案してきた。

大きなベッドの隅っこで落ちそうになりながらも横になった私たち。
でもなかなか眠れなかった。彼と同じベッドにいるという状況に、私は胸が高まった。
何度も寝返りを打つ私に同じく起きていた彼は
「ペッパー…」
と私の名前を呼んだ。
「な、何です?」
彼のいつもより低い声に、私は口から心臓が飛び出そうになった。
その時、ギシっとベッドが軋んだ。彼の気配が先ほどよりも身近に感じる。

もしかしたら…と期待してしまった。

クルリと身体の向きを変えると、彼は私をじっと見つめていた。
今まで見たことがないような情熱的で色っぽい瞳。
距離が縮まり、彼の息遣いがいつもより間近に感じる…。

その胸に飛び込みたい…。
広く力強い腕の中に飛び込みたい…。

その唇で…繊細な指で…星の数程の女性を愛したように…私も…。

あらぬ考えが浮かび、私は慌てて頭を振った。
ちらりと彼を見上げると、彼はまだ私を見つめていた。そして彼の瞳に燃え上がるものを見つけてしまった私は、キュっと目を閉じた。
「お、おやすみなさい…」
シーツを被り目を閉じた私だけど、結局一晩中眠ることができなかった…。

そう、あの夜、私は彼の『男性』としての魅力を初めて感じた。そして自分の恋心に気付いてしまったのだ…。

帰ったら聞いてみようかしら。あの夜のことを覚えているかって……。
彼は『忘れた』というかもしれないけど、きっと本当は覚えているわよね。だって私たちの記念すべき『初めての夜』だったんだから…。

クスっと笑ったペッパーは、急いで荷物をまとめると、部屋を後にした。

※68.Femaleのペッパーサイドです

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66. Constant 

会社からの帰り道。
後部座席に座り車窓から外の景色を眺めていたトニーは、鼻歌を歌う運転席の男に気づくとチラリと視線を送った。
そういえば、この男とは長い付き合いだ。実は、恋人であるペッパーよりも付き合いが長いのだ。
どのくらい長いかというと…。
「お前と出会ってもう何年だ?」
不意に聞こえてきた声に、ハッピーはバックミラー越しに視線を送った。
「20年以上ですよ、ボス」
相変わらず景色を眺めている彼のボスだが、その口元に笑みが浮かんでいるのにハッピーは気が付いた。
「覚えてますか?最初に顔を会わせた時のこと」
横目でハッピーを見たトニーだが、彼が自分を見つめているのに気付くと、視線を逸らせた。
「…忘れた」
「そうですか。遠い昔ですもんね」
そう言うと、ハッピーは楽しそうに笑いながら鼻歌の続きを歌い始めた。

照れ臭くて忘れたと言ったが、本当は覚えている。
ボクサーのくせにボコボコにされるあいつをバーで見かけた時、放っておけなかった。
興味本位で助けただけなのに、あいつは翌日から私に付きまとうようになった。根負けした私は、あいつをボディーガード兼運転手として雇うことにした。それからあいつは私の忠実な部下になった。誰よりも信頼のおける忠実な部下に…。
だが、それだけではなかった。あいつは私の友人となったのだ。

そうだ。興味本位だけじゃない。あいつを初めて見た時から、この男となら、上手くやっていけそうな気がしたんだ。
だから助けた。あいつは私に救われたと言うが、実際のところ救われたのは私の方だ。

きっとあいつは分かっている。私が『忘れていない』ということを。
あんなに楽しそうに鼻歌なんか歌ってるじゃないか…。

「なぁ、ハッピー。帰ったら、久しぶりに一勝負しないか?」
「いいですね。やりましょう」

リングの上で語り合おうじゃないか。二人だけの思い出話を…。

※原作でも、ハッピーはトニーが助けた縁でボディーガードになりました。

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