「賑やかだな」
帰宅したトニーを出迎えたのは、家中に響き渡る子供の声。
「そうなの。みんな大はしゃぎで」
ペッパーキスをし、彼女の腕の中の息子の頭を撫でたトニーは、アーマーを脱ぐとシャワーを浴びるために寝室へ向かった。
「ハッピーがバーベキューをしてくれたの。でもみんな言ってるわよ。エストちゃんのパパに会いたいって」
腰にタオルを巻き、濡れた髪をタオルで擦りながら出てきたトニーに着替えを渡したペッパーは、ベッドに腰掛けた。
「そうか。急にすまなかったな」
本来なら父親である自分がいてやらねばならなかったのだが、急に呼び出されたため、ハッピーに代役を頼んだのだった。
「大丈夫よ。まだ続いてるから」
ペッパーが腕の中の息子の頬を突くと、彼は父親に手を伸ばした。
「だっだー!!」
腰のタオルを落としたトニーは急いで下着とジーンズを履くと、ペッパーから息子を受け取った。
「そのうちお前も友達を連れてくるんだろ?100人くらい入るように、もっと家を広げないといけないな」
息子の頭にキスをしたトニーは、呆れたように目をくるりと回したペッパーに向かってニヤリと笑った。
「みんな!パパがかえってきたよ!」
リビングに姿を見せたトニーに気付いたエストは、周りにいた友達に声を掛けた。
「おかえりなさい、パパ」
駆け寄ってきたエストを抱きしめたトニーは、次々と駆け寄ってきたエストの友達にあっという間に囲まれてしまった。
トニーを見た子供たちは目を輝かせた。
「アイアンマンだ!」
「トニー・スタークだ!」
だが…。
「おじさんがアイアンマンなの?」
と想像と違うと言わんばかりに首を傾げる子供たちもいる。挙句の果てに、
「アイアンマンじゃない!!」
と泣き出す子供たちまでいる始末。
「パパはトニー・スタークよ?パパのこと、しらないの?」
と、泣いている子供にエストは必死で説明しているが、その子供は、『アイアンマンではない。ただのおじさんだ』と泣くばかり。
『ただのおじさん』と言われたトニーは軽くショックを受けたが、所詮子供なんてそんなものだと思い直した。だが、ここで株を上げなければ娘と友達の信頼問題に関わると思ったトニー。
「ちょっと待ってろ!」
と叫んだトニーはラボへと駆け下りて行った。
しばらくして、アーマーを着たトニーが急いで戻ってきた。
アイアンマンの登場に、先ほど泣いていた子供も、羨望の目で見ていた子供もみんな拍手喝采だ。
「アイアンマンだ!!!」
と、大歓声を上げて飛びついてきた子供たちを一人ずつ抱き上げていると
「いったでしょ?エストのパパはアイアンマンよって」
と、エストも鼻高々だ。
だが、子供というものは残酷である。アイアンマンが登場したからには、他のヒーローも見たくなる。それが子供の心理なのだろう。
「キャプテン・アメリカは?」
「ソーはいないの?」
「ぼく、ハルクがすきなんだ!ハルクよんできてよ!」
「アイアンマンより、ホークアイのほうがカッコイイんだよね!」
と、ひとしきりアイアンマンと触れ合った彼らは、口々に他のヒーローの名前を言い始めた。
先ほどまで自分の父親に会いたいと言っていた友達が、手のひらをひっくり返したように好き勝手なことを言っている。脹れっ面をしたエストはアイアンマンにしがみついた。
「パパ!もういいよ!せっかくパパがアイアンマンになったのに!パパはアイアンマンのおしごとでつかれてるのよ?だからアイアンマンはあたしだけのもの!もうみせてあげない!」
と、トニーをリビングから連れ出そうとした。
が、その時、タイミングがいいのか悪いのか、HUBの中でジャーヴィスの声が響き渡った。
『トニー様、ロジャース様からAssembleコールが入りました』
まだ揉めている子供たちの中から逃げ出すには好都合。
そばで苦笑いしているペッパーに子供たちを任せたトニーは、これ幸いにと出かけて行った。
(やれやれ…。子供はかわいいが、大勢になると…。それにしても、父親ってのも大変だな…)
何やかんだ言って、やはりアイアンマンはヒーローなのだろう。
バルコニーから『アイアンマン!がんばって!』と叫んでいる子供たちに手を振ったトニーは、空高く飛び上がった。