「Pepperony 100」カテゴリーアーカイブ

100. Stark

「…スターク……ミセス・スターク?」
隣に座る社員に肩を突かれ、私は慌てて顔を上げた。
何度も呼んでいたのだろう。部屋中の人間が私をじっと見つめていた。
「ごめんなさい。次の議題は?」
手元の書類を揃えた私は、ふと左手に視線を落とした。
左指には、先週までなかった銀色の証が輝いている。

そう、私はミセス・スタークになった。
ヴァージニア・スターク。
ペッパー・スターク。
スターク夫人。

つまり、スタークに…。

些細なことかもしれないけど、それは彼と結婚したという明確な証。
最愛の男性が私だけのヒトになったという証。

ふふっと笑った私は、会議が終わったら彼に電話をしてみようと思いながら、議論の輪に入っていった。

※新婚さん

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99. Believe

トニー・スタークが信じるもの。
それは自分自身と、彼にとって欠かすことのできない彼女…つまりペッパー・ポッツだけ。
だから、言葉では『信じている』『信頼している』と言うが、心の底から信頼してるのは、彼女だけなのだろう。
今回のペッパー・ポッツ誘拐事件で、それがはっきりと露見した。
というのも、仲間の援護を待たずに単独で救出に向かったトニーは、案の定待ち伏せされ危うく死にかけたのだから…。

***
「スターク、私たちは信頼できないか?」
見舞いに来るなりスティーブに責め立てられ、トニーは目をくるりと回した。
「そんなことはない。君たちのことは信頼している」
彼にしては珍しく素直に言ってみたが、今この有様なのもあの時自分が単独で行動したせいなわけで、どうも説得力がない。
それが分かっているのだろうか、それとも本当に腹を立てているのだろうか、唇を噛みしめたスティーブは真っ赤な顔で怒鳴りつけた。
「それなら、なぜ単独で動いたんだ!君が一刻も早く彼女を救出したかったのは分かる!だが、君は死にかけたんだぞ?それがどういうことか、君は分かっているのか!我々は君を失うところだったんだ!!」

トニーはようやく気付いた。スティーブが怒っている理由を。
単独で動き死にかけたことよりも、自分たちを信頼していないということに腹を立てているのだと。
だからこそ、トニーも本心を告げることにした。
「…すまなかった…。だが、あの時はペッパーを助けたい一心だった。だから気が付いたら単独で動いていた。だから君たちを信じていないということではない。だが…すまなかった。許してくれ…」
ベッドに横たわったまま頭を軽く下げたトニーに、スティーブはしかめっ面を崩すと彼の手を取った。
「スターク。我々はチームだ。だから仲間を信じてくれ。いや、全てを信じなくてもいい。だが、君を失いたくない。君は大切な仲間なのだから…。それだけは信じてくれ」
トニーの手を軽く叩いたスティーブに、顔を上げたトニーも笑顔で頷いた。

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98. Pretend

ペッパーは有能だ。
どんな仕事でも彼女の手にかかれば必ず成功する。それは私の私生活に関しても同じだ。

「あの秘書、有能ね。私たちのこともきちんと『処理』するんでしょ?」
コトが終わり、ベッドに起き上がり煙草を吸う私に、先程まで身体を重ねていたオンナが告げた。
オンナの名前は…忘れた。いや、正確には最初から覚えていない。なぜなら、私が名前を憶えていたい女性はただ一人。それは…。
「あなたはあの秘書が嫌いなんでしょ?口うるさいし。仕事が出来すぎるのも善し悪しよね?」
クスクス笑ったオンナは、私に手を伸ばした。
「だから私が満足させてあげるわ…」
そう言うと、オンナはシーツの中に潜り込み、私の足元に顔を埋めた。

再び沸き起こる感覚に私は身震いした。

違う。断じて違う。嫌いなはずがない。
気がないふりをしているだけだ。
一夜限りのオンナと同列にしたくないだけだ。
なぜなら私は彼女のことを…。

(…愛してるんだ)

その一言を言えたらどんなに楽だろう。

オンナに気付かれないようにため息をついた私は、私の心に住み続ける唯一の女性を思い起こしながら、目の前のオンナに欲をぶつけた。

※IM1直前

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97. Protect

『君だけは必ず守る』
そう言うと彼は私を小部屋に隠し、自分は飛び出して行った。
ドアに耳を付け、外の様子を伺う。

叫び声と共に、いくつもの銃声が聞こえた。
そして静寂が訪れた。

そっとドアを開け部屋を出ると、彼がいた。
血塗れでボロボロになった彼が…。
「トニー?」
真っ赤な海に跪き顔に触れる。
閉じかけた瞳に光はない。
つまり彼は…。
「いや……いやよ!嫌!!!」
冷たくなった身体に縋り付き、ただひたすら彼の名前を呼び続けると、冷酷な声が聞こえてきた。
「スタークは死んだ。自業自得だ」
振り返ると、彼のかつての仲間がいた。その手には彼の命を奪った物を持って…。
「…どうして…」
どうしてかは知っている。どうしてこんなことになったのかは知っている。でも、本気だとは思っていなかった。まさか命を奪うとは思っていなかった。
「やらなければこっちがやられる。だからだ」
彼は命を奪おうとまでは思っていなかった。現に、彼はアーマーも着ておらず武器も持っておらず、生身で彼らに向かって行ったのだ。彼はただ、私や彼の大切な人を守りたかっただけなのに…。
「お前も死ね」
銃口が一斉に私に向けられた。

どうして私には彼を守る力がないの?
いつも守られてばかりだった…。
お願いします…。今度生まれ変わったら、彼を守る力を私にも下さい…。
もう二度と彼を失いたくないから…。

銃口から弾が飛び出すのを見届けた私は、目を閉じた…。

※もしもトニーがアベンジャーズの敵となったら…

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96. Motion

「ボス…またいますよ?」
運転席に座るハッピーは前方を睨み付けるとため息を付き、後部座席を振り返った。

NYのマンハッタンにそびえたつスタークタワー。その前に、奇抜な格好をした人々が集結するようになったのは、あのNYでの出来事からだ。
それぞれお気に入りのヒーローに扮した彼らは、何をする訳でもないが、タワーを背景に思い思いのポーズで記念写真を撮っていた。
今や名物になっているNYの光景。
だが、大人しくしている人々ばかりではないのも事実な訳で…。

「また彼女か…」
チラリと前方に視線を送ったトニーはため息をつくと目を閉じた。
先のエキスポで従えていたダンサーの衣装はアイアンマンファンの女性の定番コスプレになっているのだが、その集団の内の1人が問題だった。あのダンサーと同じ…いや、あのダンサーよりも露出度の高い自作のアイアン・ガール風衣装を身に纏った女性は、自称『トニー・スタークの恋人』。そうは言っても彼女も初めは普通のファンだった。アイアンマンのTシャツを着て、群衆に紛れトニーに向かい手を振っている1人のファンだった。それが方向転換してしまったのは、今から1か月程前のこと。きっかけは些細なことだ。トニーの登場に沸き立つ人々に、いつもは手を振る程度のトニーが珍しく近寄って行った。滅多にない出来事に観衆は沸き立った。少しでも近づこうと押し合う群衆。その群衆に押され、一人の女性がトニーの方へ倒れた。トニーにしてみれば、目の前で倒れかけた女性に手を貸すのは人として当たり前のことだと思っている。だが彼女は違った。『トニー・スタークは自分に気があるから助けてくれた』と思ったらしい。
その日以来、彼女は超熱狂的なトニー・スタークファンになったのだ。

『トニー、愛してる』
『私を好きにして!』
『トニー、結婚して』
段々とエスカレートしているメッセージボードは、派手な装飾が施され、否応が無しでもトニーの目に付き、トニーも彼女の存在を認識するようになっていた。

「トニー!!!」
トニーの車に気付きた女性は車に駆け寄って来た。ハッピーがクラクションを鳴らしても臆することもない。そして、あろうことかフロントガラスにメッセージボードを掲げた。
『子供ができたの。あなたのよ♡』
また一段とエスカレートした内容に、トニーは頭を抱えた。だが、彼女とは初対面だったペッパーは違った。
メッセージボードを見たペッパーは、目を吊り上げた。
「子供ですって?!」
ジロっとトニーを睨みつけたペッパーは、彼の首根っこを掴んだ。
「どういうことなのよ!!!」
目を三角にしたペッパーは、トニーのネクタイを締めあげる。
「ぺ、ペッ…パ……く、くるし…」
ジタバタと抵抗したトニーは、何とかペッパーの手から脱すると、苦しそうに咳き込んだ。
「おい、君を毎日抱いているんだ。他のオンナを抱く暇がないのは、君が一番よく知っているだろう」
冷静に考えれば分かりそうなものなのに、その事実に気づいたペッパーは、
「そ、それもそうね…」
と頭を垂れた。
モジモジとするペッパーはとても可愛らしく、ニヤリと笑ったトニーは肩を抱き寄せるとキスをした。
「外出はやめだ。家で大人しくしておこうじゃないか。なぁ、ハニー?」
その『大人しく』が実は決して大人しくないことを知っているペッパーは、今夜も眠れそうにないわね…と、頬を赤らめた。

※『スタークタワーのコスプレ女』がいるらしいというのは、エージェントオブ・シールドS1-1より

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