「Pepperony 100」カテゴリーアーカイブ

30. Drink

「美味そうに飲むなぁ」
一心不乱に母乳を飲む息子をトニーはペッパーの隣に座り眺めている。
しばらくしてミルクを飲み終わった息子を受け取ったトニーは、彼を抱きかかえると背中を優しく撫でた。盛大なげっぷをした彼をベビーラックに寝かせると、 満面の笑みを浮かべた彼は小さな手足を動かし始めた。
「腹一杯で嬉しいのか?」
柔らかな頬を突くと、彼はあろうことかトニーがよくするようにニタ―と笑ったのだ。
「え…」
顔立ちは母親にそっくりな息子なのに、自分そっくりな仕草をする息子にトニーは思わずたじろいだ。
「エストは顔もあなたにそっくりだから分かるんだけど、エリもねあなたにそっくりなの。特にねミルクを飲んだ時よ。2、3日前からね、時々さっきみたいな顔をするの。あなたがお酒を飲んで嬉しそうにしている時と、同じ顔をするんだから」
苦笑するペッパーに内心嬉しくてたまらないトニーは顎鬚を撫でるとわざとらしく鼻を鳴らした。
「仕方ない、スターク家の男だ。なぁ、息子よ」
その父親の言葉に同意するように、エリオットは両腕をバタバタと動かしたのだった。

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29. Food

「どうして言わなかったんだ!」
「ごめんなさい…」
顔を真っ赤にしたトニーは思わず怒鳴りつけたが、ベッドに横たわり青い顔をしているペッパーが涙声なのに気づくと、彼女の頭をそっと撫でた。

事の発端はこうだ。
知人から美味しいイチゴをもらったトニー。一人では食べきれないからと、秘書であるペッパーにも食べさせたのだが、しばらくしてペッパーは全身に湿疹が出 始め、程なくして呼吸困難に陥ってしまった。その場で倒れたペッパーにトニーは大慌てで救急車を呼んだ。幸いにも早期だったため大事には至らなかったのだ が、落ち着いペッパーから彼女は『イチゴアレルギー』だと聞かされ、今に至る訳だ。
一歩間違えれば彼女は死に至っていたかもしれないのだ。それなのに、何故イチゴを勧められた時に言わなかったのかと問うと、彼女は泣きながら答えた。
「だって社長が二人で食べようと勧めてくれたんですよ。あなたの嬉しそうな顔を見ると言えなくて…。それに、いつもはこんなに酷くないんです。痒くなる程度だから…」
出会って3ヶ月。まだ遠慮があるのだろうが、こういうことは言ってくれなければ困る。なぜなら君は私にとって特別な存在なのだから…。
頭を抱えていたトニーだが、まだぐすぐすと泣いているペッパーの頬を優しく撫でると、手を取り握りしめた。
「ペッパー、君は大切な人だ。…いや、その…大切な秘書だ。君を失いたくないんだ。だから遠慮なんてするな。それと、覚えておく。君にとってイチゴは特別 だ」
彼の言うとおりだ。遠慮などする必要はなかったのだ。もし命をおとしていたら、彼とこうやって話すことすら出来なくなっていたのだから…。トニーの言葉に小さく頷いたペッパーは、力強く温かい手を握り直したのだった。

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28. Dry

「口の中がカラカラだった。この私…トニー・スタークがだぞ?言っておくが、そんなことは今まで経験したことがなかった。目の前に紅茶が出されていたんだが、何杯飲んでも渇きは癒されなかった。それだけ緊張していたんだろうが、あの時はとにかく必死だった。ここで認めてもらわなければ、私の夢は叶わないのだと。認めてもらわなくてもいいと彼女は言っていた。だが、そういうことはきちんとしておきたかった。意外と古風なんだよ、私は」
ペラペラと一気に話したトニーは、ふぅと息を付くとビールを飲んだ。
「でも、良かったじゃないか。認めてもらったんだろ?俺は正直無理だと思ってたんだ」
からかうようなローディの言葉にトニーはわざとらしく眉をひそめた。
「無理とは何だ。私を誰だと思っている。だが、お前の言うとおりだ。私の評判はあまり良くないからな。だが、今の私は違う。それはお前も知っているだろうが。それを彼女のご両親は分かってくれたんだ。ありがたいことに、本当の息子のように接してくれたんだ」
その時のことを思い出したのか、トニーは嬉しそうに笑みを浮かべた。
数十年間、孤独だった親友。彼を救ってくれた女性は恋人となり、そして彼と共に家庭を築こうとしている。そして彼女の家族は、彼を家族の一員に快く迎えてくれた…。
結婚するのだから当たり前のことなのかもしれないが、ローディーは涙が零れ落ちそうになった。だが、ここで泣けば『まだ泣くのは早い』と親友にからかわれるだろう。何度か瞬きしたローディーはグラスを持ち上げるとトニーのグラスに軽くあわせた。
「婚約おめでとう、トニー」

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27. Warm

NYの冬は厳しい。
「やはり冬はマリブがいいな」
深夜帰宅したトニーはアーマーを脱ぐと、凍えそうな身体を擦りながら寝室へと向かった。
パジャマに着替え、ふかふかのベッドの中に潜り込んだトニーは、すでに夢の中にいる温もりに手を伸ばすと、冷え切った身体を温めるように抱きしめた。
(温かくて…柔らかくて……最高だ……)
シャンプーの香り漂う髪の中に顔を埋めたトニーがうとうとしかけた時だった。
「くしゅんっ!」
小さなくしゃみが一つ。
首を伸ばして確認したが、どうやら目を覚ました訳ではないようだ。
すっかり温まった身体で、今度は腕の中の存在を温め直すかのように、トニーはペッパーを抱きしめ直すと眠りについた。

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26. Cold

ペッパーが風邪を引いた。体調管理には十分気を配っているペッパーなのに、今回の風邪はしぶといらしく、3日経っても良くならない。
「珍しいな、こんなに寝込むなんて」
ベッドサイドに腰を降ろしたトニーは彼女の汗ばんだ額を撫でた。
「ごめんなさい…」
弱々しい声で謝るペッパーにトニーは思わず顔を顰めた。
「なぜ謝るんだ?謝ることはない。疲れているんだ。ゆっくり休め」
トニーの言葉に頷いたペッパーは目を閉じた。

いつも自分が寝込んだ時、ペッパーは甲斐甲斐しく看病してくれる。それならば今度は自分が…と思ったトニーだが…。

「ペッパー、食べれそうか?」
トニーの声に目を開けたペッパーだが、薬が効いたのだろうか、先ほどよりも随分と楽になった気がした。
「えぇ」
起き上がったペッパーにトニーは持ってきたトレーを差し出した。飲み物のカップと共に載せられているのは、リンゴ…それも不揃いだがウサギらしき形をしているではないか。あれだけ何でも出来るのに、なぜか料理に関しては全くと言っていい程何もできない彼が自分を喜ばせようと一生懸命切ってくれたのだろう。 トニーの指に先程までなかったバンドエイドが数枚巻かれているのに気づいたペッパーはリンゴを一つフォークで突き刺すとトニーに向かって笑いかけた。
「リンゴのウサギね」
鼻の頭を擦ったトニーは、心なしか得意げに言った。
「あぁ、うさちゃんだ」
クスッと笑ったペッパーはリンゴを一口齧った。トニー特製のリンゴのウサギは、いつものリンゴよりも甘い気がした。

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