28. Dry

「口の中がカラカラだった。この私…トニー・スタークがだぞ?言っておくが、そんなことは今まで経験したことがなかった。目の前に紅茶が出されていたんだが、何杯飲んでも渇きは癒されなかった。それだけ緊張していたんだろうが、あの時はとにかく必死だった。ここで認めてもらわなければ、私の夢は叶わないのだと。認めてもらわなくてもいいと彼女は言っていた。だが、そういうことはきちんとしておきたかった。意外と古風なんだよ、私は」
ペラペラと一気に話したトニーは、ふぅと息を付くとビールを飲んだ。
「でも、良かったじゃないか。認めてもらったんだろ?俺は正直無理だと思ってたんだ」
からかうようなローディの言葉にトニーはわざとらしく眉をひそめた。
「無理とは何だ。私を誰だと思っている。だが、お前の言うとおりだ。私の評判はあまり良くないからな。だが、今の私は違う。それはお前も知っているだろうが。それを彼女のご両親は分かってくれたんだ。ありがたいことに、本当の息子のように接してくれたんだ」
その時のことを思い出したのか、トニーは嬉しそうに笑みを浮かべた。
数十年間、孤独だった親友。彼を救ってくれた女性は恋人となり、そして彼と共に家庭を築こうとしている。そして彼女の家族は、彼を家族の一員に快く迎えてくれた…。
結婚するのだから当たり前のことなのかもしれないが、ローディーは涙が零れ落ちそうになった。だが、ここで泣けば『まだ泣くのは早い』と親友にからかわれるだろう。何度か瞬きしたローディーはグラスを持ち上げるとトニーのグラスに軽くあわせた。
「婚約おめでとう、トニー」

拍手お礼再掲。The Pepperony 100 Challengeより

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