「えっちぃお題」カテゴリーアーカイブ

113.せきらら(アベアカ)

102.夜まで待って の続きです。

NYのアカデミーから帰宅した翌日。今日は月に1度のお茶会ということもあり、ペッパーの母親は朝から張り切って用意をしていた。
お茶会のことを知ったトニーは、お世話になったお礼だと、ハーニー&サンズの紅茶や、ベニーロのケーキ、ボーション・ベーカリーのマカロンなどをお土産にと用意してくれていたのだ。
中西部の街ではあまりお目にかかることのないNYの名物に、今日の話のネタが出来たと、ペッパーの母親は大喜びだった。

いそいそと用意をしていると、次々と友達がやって来た。そしてお茶会は始まったのだが、話題はもちろん、『ポッツさんは3週間もどこに行っていたのか?』だった。

「NYの娘の所よ。実はね、娘の彼氏が大怪我をして何ヶ月も入院してたの。で、退院することになったんだけど、暫く車椅子生活だっていうから、手伝いに行ってたのよ」
ポッツ家の一人娘のヴァージニアは、NYのアベンジャーズ・アカデミーに通っていることを思い出した友達は、うんうんと頷いた。
「それは大変だったのねぇ…」
と、ここで気づいた者がいた。その彼氏には世話してくれる身内はいないのか…と。それに、手伝いに行ったということは、ヴァージニアはその彼氏と同棲でもしているのだろうか…と。だがそんなことをストレートに聞くわけにはいかない。
「あら、この紅茶、美味しい!お菓子も美味しいわ!ポッツさん、どちらの?」
少しずつ切り崩していこうと頷きあった面々は、まずはどれもこの辺りには売っていないようなものばかり並ぶ今日のラインアップを褒めたたえてみることにした。
「NYの有名なお店のよ。娘の彼がね、私がお茶会を開くって言ったら、お土産に用意してくれたの!」
嬉嬉として叫んだペッパーの母親は、まるでこの3週間を思い出したのか、頬杖を付くとため息をついた。
「彼ね、本当にね、いい子なのよ。娘のことも凄く大切にしてくれてるし。いっそのこと、あのままお嫁にもらってくれないかしら…」
はぁ…ともう一度ため息をついたペッパーの母親は、紅茶を啜ると「あら、美味しいわ」と、マカロンを摘んだ。

娘だけではなくその母親までも虜にするヴァージニアの彼氏とは何者なのだろうか…。
顔を見合わせた友人達だが、その内の1人が我慢ならぬと本題を切り出すことにした。
「娘さんの恋人、本当に素敵な方みたいね。お名前は何とおっしゃるの?」
ようやく話に乗ってくれたというように、フフッと笑ったペッパーの母親は、ベラベラと話し始めた。
「トニーくんよ、トニー・スタークくん。彼はね、ご両親を早くに亡くされたんですって。詳しくは知らないんだけど。うちのヴァージニアよりも2つ年上なの。だけど凄く頭が良くって、アカデミーを卒業したらMITに行くそうよ。だからヴァージニアも卒業したらボストンの大学に行くって張り切ってるの。で、大学を卒業したら結婚するんですって。トニーくんは家業を継がなくちゃいけないらしいけど…。そう言えば、何をしているお家なのか聞かなかったわねぇ…」
うーんと首を傾げているペッパーの母親だが、友人達は口をあんぐりと開け固まってしまった。
静まり返った部屋に、ようやく気づいたペッパーの母親は、一体何事かと目を白黒させた。
「トニー・スタークって………」
ポツリと呟かれたその言葉を皮切りに、部屋中に絶叫が響き渡った。

「スタークって…あのスタークよね?!」
「トニー・スタークって、アイアンマンでしょ?!」
「嘘でしょ!あの…あのトニー・スターク?!」
「ポッツさん!あの、スタークなの?!」

「え…」
ギャーギャーと騒ぎ始めた友人達だが、状況が分からないペッパーの母親はポカンと口を開けたままだ。
というのも、ペッパーの母親は知らなかったのだ。元々ゴシップ記事には疎いし、ペッパーからもトニーの素性については詳しく聞いていない。しかも、追々聞けばいいかと思い、今回も詳しい話は聞いていなかった。

全くもって状況の分かっていないポッツ夫人に、友人達は呆れたように目を見張った。
「まさか…知らないの?!トニー・スタークを!」
「そうよ!スターク・インダストリーズのCEOの!スターク・インダストリーズといえば、世界中で5本の指に入る大企業…つまり、アラブの石油王もビックリな大金持ちよ!!」
「しかも、天才・金持ち・ハンサムと3拍子揃った、今どき珍しい超優良物件よ!」
「それに、彼はアイアンマンでしょ!金持ちのヒーローとか、ハイスペック彼氏よ!」

『娘の彼氏のトニー・スタークはアイアンマン』と聞き、ペッパーの母親はようやく理解した。
数ヶ月前にアイアンマンは任務中に敵に捕まり、瀕死の重傷を負い救出されたと言っていた。だからトニーは何ヶ月も入院する程の大怪我を負っていたのだ。そして彼はあの『スターク』だったのだ。スターク・インダストリーズについては、さすがに知っている。先代のハワード・スターク夫妻の痛ましい事故についても、当時ニュース番組でも連日連夜放送していたのだから…。
だが、娘はそんなことは一言も言っていなかった。トニーが自分のことを心から愛してくれていること、彼といると楽しくて仕方ないこと…。毎日嬉しそうに電話やメールで報告してくるヴァージニアにとって、トニー・スタークは、ただ単に2歳年上のアカデミーの仲間だったのだ。そのため、彼は何度も自分のことを守ってくれたから、彼の所有するタワーに引っ越すことにしたと告げられても、特に反対はしなかった。そしてトニーが事故に合い大怪我を負ったと告げられても、まさかそれがアイアンマンの任務中の怪我とは考えもしなかったのだ。

「そのスタークみたいね」
暫くして、やっとの思いでそう呟いたペッパーの母親だが、周りの盛り上がりは落ち着きそうにない。
ハイスペック彼氏かどうか知らないが、トニー・スタークは娘にとっては最高の恋人なのだ。それは彼が金持ちでヒーローだからではない。娘のことを心から愛してくれているからだ。
(来週トニー君がうちに来るって知ったら、みんな大騒ぎね)
こぼれる笑みを隠すように、ペッパーの母親は口元に手をやった。

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102.夜まで待って(アベアカ)

112.蜂蜜の使い方 の続きです。

ようやく退院することになったトニーだが、両足はまだ自由に動かすことができず、車椅子が欠かせなかった。
数ヶ月ぶりに自宅であるタワーに戻ってきたトニーは、エレベーターを降りるなり大きく伸びをした。
「やっと帰って来れた。懐かしい我が家!」
「お帰りなさい、トニー」
そう言いながら車椅子を押すペッパーも嬉しそうだ。
「そうだ。荷物は片付いた?」
「うん、そんなに沢山荷物はなかったから」
トニーが入院中、ペッパーは正式にタワーへと引っ越していた。タワーにはたくさん部屋があるが、ペッパーの部屋はトニーの向かいの部屋。だが、それは建前上であって、実際は2人の寝室で寝起きすることになるのだが…。
「もし足りない物があれば言えよ。それからさ…」
ペッパーの手を引っ張ったトニーは彼女を自分の前に立たせると、腰を撫でた。
「寝室のベッド、買い換えたんだ。前のより大きめのベッドに…」
それはペッパーも知っている。トニーの入院中、何が届いたのかと思いきや、キングサイズのとてつもない大きなベッドが届いたのだから…。
「だからさ…今から使い心地、試してみようぜ」
そう言うとトニーはペッパーにキスをしようと首を伸ばした。が、いつもなら恥ずかしがりながらも身を委ねるペッパーなのに、今日は何故か拒否したのだ。
「と、トニー、夜まで待って!」
身体を離したペッパーだが、突然拒否されたトニーは不満げに頬を膨らませた。が、きっと何か理由があるのだろとトニーは思い直した。
「どうしたんだよ?」
ペッパーが何か言おうと口を開きかけた時だった。
『トニー様、お客様です』
J.A.R.V.I.S.の声と同時にエレベーターのドアが開き、見知らぬ女性が部屋に入ってきた。
「えっと……」
突然乱入してきた面識のない女性にトニーは目をぱちくりさせていたのだが…。
「ママ、早かったわね」
隣にいたペッパーは、ニコニコと笑みを浮かべるとその女性に駆け寄ったのだ。
(ママということは…)
ペッパーとその女性を見比べていたトニーだが、その視線に気づいた女性はニッコリとトニーに向かって微笑んだ。
「初めまして、トニーくん。ヴァージニアの母です。いつも娘がお世話になっています」

つまり、この女性はペッパーの母親で…。

ようやく事態を把握したトニーは、車椅子の上で飛び上がりそうになった。
彼女の母親が来るとは聞いていない。おそらくペッパーが先ほど話そうとしたのは、このことだったのだろうが…。いや、それよりも、まさか初対面がこのような形になるとは…。

目を白黒させていたトニーだったが、姿勢を正すと慌てて頭を下げた。
「は、初めまして。トニー・スタークです。ペッパー…いや、ヴァージニアさんとお付き合いさせて頂いてます」
頭を深々と下げるトニーにニッコリ笑いかけたペッパーの母親は、荷物をカウンターに置くと手際よく片づけ始めた。
「トニーくんの話は娘からいつも聞いてるのよ。あなたと出会ってから、毎日楽しくて仕方ないし、今までの自分と違う自分になれるって」
それは例の謹慎処分も含まれているのだろうかと、一瞬ビクっとしたトニーは思わずペッパーを見つめた。が、トニーの考えを読んだのか、ペッパーはまるで『そこまで話していないわ』というように眉を吊り上げた。
2人が見つめ合っているのに気付いたペッパーの母親は、微笑ましいわねとクスクス笑い声を上げた。
「それでね、トニーくんが退院って聞いて、いてもたってもいられなくなって。だって、まだ色々と大変でしょ?ヴァージニア1人だと手が足りないと思って、厚かましいかもしれないけど、手伝いに来たの」
楽しそうに笑みを浮かべたペッパーの母親の仕草はペッパーにそっくりで、トニーは眩しそうに目を細めた。
と、ペッパーの母親が真面目な表情になった。
「トニーくん、大変だったわね。それなのに、お見舞いに行けずにごめんなさいね。本当は何度も伺おうかと思ってたの。でもね、御挨拶もまだなのに、いきなり私たちが押しかけても迷惑かと思って、なかなか行かれなかったの…」
突然真面目な話になり、トニーも再び姿勢を正した。
「いえ、こちらこそ。ポッツさん、その……ご挨拶にもお伺いせず…申し訳ありませんでした」
いつか機会を伺ってペッパーの両親へは挨拶に行こうと思ってはいた。両親の許可なしに同棲を続けるのも如何なものかと、トニーは内心考えていたのだ。
珍しくモゴモゴと口篭ったトニーに、ペッパーの母親はパッと顔を輝かせた。
「あらあら、いいのよ。ヴァージニアったら、今まで誰ともお付き合いしたことなかったから、恋人が出来たって聞いた時は私も主人も大喜びで…。それもこんなにしっかりした紳士で素敵な方が…。この子にはもったいないくらいだわ!ヴァージニアのことを一途に思って下さっているようだし、あなたになら安心して娘を預けられるって、主人とも話してたの」
どうやらペッパーは、恋人になる前のトニーの噂は両親には話していないようだし、彼女の両親もまた、ゴシップ関係には疎いのか知らないようだ。
ふぅと気づかれないように息を吐き出したトニーは、額の汗を拭った。
幸いにもそんなトニーに気づいていないのか、ペッパーの母親はトニーの車椅子に手を掛けると押し始めた。
「トニーくん、まずは着替えましょうね?それから髪の毛が伸びてるから、切ってあげるわ」
「い、いや…その…」
着替えはペッパーに手伝ってもらおうと思っていたのに、まさか彼女の母親が出てくるとは…。
目を白黒させるトニーだが、恋人を母親に取られそうだとペッパーは大慌て。
「ママ!トニーは私の恋人なのよ!だから私がお世話するの!」
「いいじゃないの。ママにもお世話させて。息子が出来たみたいで楽しいんだから」
まさか自分の身にも、恋人と恋人の母親による取り合いが起こるとは思わなかった。頭を抱えたトニーだが、トニー争奪戦は結局トニーの足が治り、ペッパーの母親が帰るまで3週間に渡り続いたとか…。

113.せきらら

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037.唇をなぞる指先(アベアカ)

079.豹変 の続きです。

それから数日後。
ようやくまともに話ができるようになってきたトニーの元には、毎日のように仲間が見舞いに訪れていた。
今日も朝からブルースが実験の経過を話に来、昼前にはソーが見舞いの品を食べに…いや、顔を覗かせたかと思うと、スティーブがクリントやナターシャとやって来て…。朝から入れ代わり立ち代わり誰かがやって来たのだから、少々疲労感を覚えたトニーはいつの間にか眠ってしまっていた。

唇に何かが触れている…。
温かく柔らかな何かに気づいたトニーがゆっくりと目を開けると、彼の最愛の女性は悪戯の見つかった子供のように目を瞬かせた。
「ごめんなさい、起こしちゃった…」
小さく舌を出したペッパーは肩を竦めた。
「気分はどう?」
痩せてしまった頬を撫でると、トニーは擽ったそうに目を閉じた。
「身体中痛いし動けないし最悪…。でも、君がずっと傍にいてくれるから、悪くないな」
両手すら動かせないトニーをペッパーは、病院に寝泊まりし、付きっきりで看病していた。
ちなみに、ペッパー不在の時は誰がトニー・スタークの介助をするかという争いが看護師の中で勃発していることを、2人は知らない。

暫くは他愛もない話をしていた2人だが、真剣な面持ちをしたトニーが切り出したのは、真っ赤な夕日が窓から差し込み始めた頃だった。
「なぁ、ペッパー。話、聞いてくれるか?」
「いいわよ」
姿勢を正したペッパーに、トニーはふぅと息を吐き出した。
「リアクターのこと…、そろそろ話しておこうと思って…」
トニーは今まで話してくれなかったことを話そうとしている。それは恐らく、トニーの心の奥底にある辛い体験。気づかれないようにゴクリと唾を飲み込んだペッパーは、スカートの裾をキュッと握りしめた。
「これ、何であるか知ってる?」
視線をリアクターに向けたトニーに、ペッパーは頭を振った。
「いいえ。詳しくは知らないわ。あなたの噂って、女の子との噂ばかりでしょ?だからあなたと出会うまで、リアクターのことは知らなかったの」
正直に言ったつもりなのに、トニーは可笑しそうにクスクス笑い出した。
「確かに俺の噂はオンナとのものばかりかもな。それなら、驚いただろ?胸にこんな物が埋まってるなんてさ」
確かに最初は驚いた。初めて彼に抱かれた時、胸に光る見たことがない物に一瞬恐れ慄いた。だが、彼の優しさと愛に包まれると、彼には普通はない物があることもすっかり忘れてしまったのだ。
うん…と小さく頷いたペッパーだが、慌てて首を振った。
「でもね、それはあなたの一部でしょ?だから今じゃあ、リアクターのないあなたって考えられないわ」
真剣な面持ちのペッパーに気持ちが少しだけ楽になったトニーは、深呼吸すると明るめの声を出した。
「これはさ、俺の心臓を守ってる。実は俺の胸元には、爆弾の破片が沢山埋まってるんだ」
「え……」
どういうことなのだろうか…。彼は身体に爆弾を抱えて生きているのだろうか…。
唇を震わせたペッパーは、トニーの腕にそっと触れた。
「リアクターは、破片が心臓に突き刺さるのを防いでる…言わば、俺の命綱なんだ」
ふぅと息を吐き出したトニーに、ペッパーは震える声で呟いた。
「一体…何があったの?」
ペッパーを見つめたトニーだが、視線を伏せるとポツリポツリと話し始めた。
「数年前のことだ。その頃のスターク・インダストリーズは、軍用の武器を製造してた。ある日、紛争地域に新しいミサイルのデモをしに行った。その時、テロリストに襲撃された。一緒にいた何人もの軍人は殺された。俺は逃げ出したけど、傍にミサイルが着弾した。それも…うちの会社のミサイルに…。後で分かったことだけど、親父の腹心だった男がテロリストに武器を売りさばいてた。俺が作った武器で罪のない人が大勢命を落していた…。だから俺は武器製造を止めたんだ」
ふぅと息を吐き出したトニーは、一息つくと再び話し始めた。
「テロリストは俺を洞窟に閉じ込めた。そして俺を拷問した。そこは、誰もいない暗闇と静寂しかない世界だった。誰も助けてくれる人はいなかった。俺を痛めつけて、みんな笑ってた…。ペッパー…あの世界には絶望しかなかった…。胸にはミサイルの破片があるし、いつ死ぬか分からない恐怖に震えながら…俺は過ごすしかなかった」
トニーの身体が震えだした。目を閉じたトニーは当時のことを思い出したのか、必死で恐怖と戦っているようだった。
「トニー…もういいわ…」
トニーが苦しむ姿は見たくなかった。堪らなくなったペッパーは、ギブスで固定されたトニーの右手をそっと握りしめた。が、何度も頭を振ったトニーは、息を整えると再び話し始めた。
「拷問は何日か続いた。すっかり抵抗する気力がなくなった俺は、別の場所に移された。そしてテロリストは、俺に最新鋭のミサイルを作れと命令した。今度は一人ぼっちじゃなかった。近くの村に住んでた科学者が一緒だった。彼は住んでいた村が襲撃され、家族を殺され、連れて来られてた。俺は最初、その人のことも信じられなかったんだ。だから一人の世界に閉じ籠ろうとした。だけどその人に言われたんだ。君が生き残ったのには意味があるって…。君を待っている人がいるって…。その言葉に俺は目が覚めた。その人の力を借りて、俺はミサイルを作るふりをして脱出するためにアーマーを作った。俺の目を覚まさせてくれた人は…俺を逃がすために命を落とした。だから俺は誓った。俺の助けを必要としている人たちを一人でも多く救ってやるって…。だから俺はアイアンマンになったんだ」
想像以上に壮絶な話だった。トニーは今までどれだけの重荷を1人で背負い闘ってきたのだろう…。
黙ったままのペッパーだったが、その目からは涙が次々と零れ落ち、トニーの身体を濡らしていった。恋人の涙に気づいたトニーは頬を緩めた。ペッパーが自分のために涙を流してくれていることが嬉しかったから…。
「今までさ、この話を詳しくしたのは、ローディだけだったんだ。君にもいつか話さなきゃって思ってたけど、なかなか勇気が出なくってさ…。でも、ペッパー、君なら俺のこと、全て受け止めてくれるって…そう思ったから、今日、君に話をした。ありがとう、聞いてくれて」
そう言って微笑んだトニーはとてもスッキリした顔をしていた。
その笑顔を見たペッパーは心に誓った。
話を聞き思いを受け止めることで彼が救われるのなら、これから先、何があろうとも彼のことを受け止めてみせる…と。
涙を拭ったペッパーは、トニーの唇を指で触れるとそのまま頬を両手で包み込んだ。
「ありがとう、トニー。話してくれてありがとう…」
そのまま頬に何度かキスをすると、トニーはわざとらしく顔を顰めた。
「早く君のこと抱きたい…」
すっかりいつもの口調に戻ったトニーにひと安心したペッパーも調子を合わさるように肩を竦めた。
「あら、残念。でも、もう少し我慢して…」
頭を軽く撫で猫っ毛の髪の毛を梳くと、トニーは気持ちよさそうに目を閉じた。

112.蜂蜜の使い方

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