その日の夕方のトップニュースは勿論トニー・スタークのことだった。どこの局もトニーの会見のノーカットで放送し、そして彼がアイアンマンを引退することを大々的に伝えた。アイアンマンの活躍を描いた特別番組も放送され、数年前に公開されたトニー・スタークの映画も繰り返し放映された。
スターク・インダストリーズの前には大勢の人が押し寄せ、感謝の手紙やプレゼントを置いて行った。会社には世界中からも続々と手紙などが届いた。
が、トニーは勿論だが、ペッパーもモーガンもその騒動は知らなかった。
会見後は大騒動になると分かっていたので、3人は湖畔の家に1週間程篭ることにしていたのだ。
会見の2日後、ローディがやって来た。
モーガンが考えた自動水やりドローンの試作機を彼女と共に飛ばしていたトニーは、ローディに気づくと、空を見上げている娘に声を掛けた。
父親に言われローディに気づいたモーガンは、パッと顔を輝かせた。
「ローディおじちゃん!」
駆け寄ってきたモーガンを抱き上げたローディは、わざとらしく悲鳴を上げた。
「おいおい、モー。また大きくなったのか?」
「うん!だって、あたし、おねえちゃんだもん!」
モーガンの頬にキスをしたローディは、ゆっくり近づいてきたトニーの肩をポンっと叩いた。
「トニー、お疲れ様」
引退する話自体は、1年前に聞いていた。だが、ああやって彼自身の口から改めて聞くと、本当にそうなのだと、ローディは寂しさも覚えていた。
「もうお前と飛べないと思うと寂しいな…」
しんみりと告げたローディの肩を抱き寄せたトニーは黙って頷いた。
父親とその親友の会話を黙って聞いていたモーガンだったが、2人が寂しそうな顔をしているのに気づくと、わざと明るい声で告げた。
「ローディおじちゃん、あたしがいっしょにとんであげるよ!あたしね、おとなになったら、アイアンマンになるのよ!」
笑みを浮かべそう告げたモーガンはトニーそっくりで、ローディは自然と頬を緩めた。
「そうか、それは楽しみだな」
髪をくしゃっと撫でたローディはモーガンを降ろした。
「折角だ。昼飯、食っていけよ」
モーガンと手を繋いだトニーは、親友の肩を抱き寄せると家へと向かった。
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