トニーの家に入るなり、ペッパーはキスをしてきた。先程のバーでのキスとは違い、息を付かせぬ程の激しいキスに夢中になった二人は、貪りつくようにお互いを求めあった。一刻も早く一つになりたいと願った2人だが、ここは玄関先なのだ。滅多に来客などないスターク邸だが、ハッピーかローディが来る可能性は十分ある。唇を離したトニーはペッパーの首筋に唇を這わせながら尋ねた。
「先に一杯飲むか?」
だがペッパーは小さく首を振ると、燃え上がった瞳でトニーを見つめた。
「いいえ。お酒のせいにはしたくないから」
どういう意味だと思ったトニーだが、ペッパーはネクタイを引っ張ると、トニーの下半身にもう片方の手を這わせた。
「トニー…早く…。あなたが欲しいの…」
ズボン越しに股間を刺激され、トニーは身体を震わせた。トニー自身も、早くペッパーが欲しくて堪らなかったため、ペッパーの手を握りしめたトニーは足早に2階の寝室へと向かった。
ドアが閉まりきる前に、2人はどちらともなく抱き合い、激しくキスをし始めた。舌を絡め合いながら、お互いの服を脱ぎ捨て、ベッドに倒れ込んだ。
二人の間に言葉は要らなかった。
全身を愛撫される時も、トニーが中に入り込んで来た時も、ペッパーは声高々とトニーの名を叫び、ひたすらトニーを求め続けた。
ペッパーの妖艶な声と姿は、トニーをいつも以上に駆り立てた。もう何度もペッパーの中で果てたトニーだが、彼女の身体をギュッと抱きしめると腰を押し付け、あまりの快楽に半分失神しかけている彼女の奥深くで再び果てた。
(あぁ…ペッパー…君は最高のオンナだ…)
女性と一夜を共にして、こんなにも幸せな気分になったことはあっただろうか…。
眩い朝日の差し込む中、目を覚ましたトニーは、腕の中でまだ眠っているペッパーに視線を移した。
昨晩「幸せか?」と尋ねた時、彼女は「どうかしら…」と答えたが、自分と一夜を過ごした今、彼女は幸せなのだろうか。それとも後悔しているだろうか…。
そんなことを考えながらペッパーの髪を弄んでいると、腕の中のペッパーがもそもそと身動きして目を覚ました。
「おはよ、ハニー」
まだ寝ぼけているペッパーの額にキスをすると、何度か瞬きした彼女は
「トニー…」
と呟くと、ハッと息を飲んだ。
「私…昨日…あなたと…」
ようやく昨晩のことを思い出したのか、真っ赤な顔をしたペッパーはトニーの胸元に顔を埋めてしまった。
ただ単に恥ずかしがっているのか、それとも後悔しているのか…。ペッパーの本心が分からず、トニーは思わず眉間にシワを寄せた。
「後悔してるか?」
「後悔って?」
トニーの言葉に顔を上げたペッパーは、小首を傾げた。
「結婚しているのに、私とセックスしたことだ」
ペッパーはトニーの顔をじっと見つめた。そして彼の頬に手を当てると、唇に軽くキスを落とし、ニッコリ笑みを浮かべた。
「いいえ、後悔なんかしてないわ。今ね、私、凄く幸せよ。あなたは?」
ようやくペッパーから『幸せだ』という言葉が聞けた。それも自分と一夜を共にしたことで…。
その場で小躍りしたい気持ちを堪えたトニーは、軽く咳払いすると得意げに口の端を上げた。
「後悔なんかするもんか。ついに夢に見た瞬間が訪れたんだ」
つまりそれは、トニーが自分のことをずっと想ってくれていたということなのだろうか…。唇を震わせたペッパーに、トニーは申し訳なさそうに告げた。
「実は、愛する君とずっとこうなりたいと願っていた。遅すぎたがな…」
自傷気味に笑ったトニーだが、小さな嬉し涙を流したペッパーは、トニーに抱きつくと唇を奪った。
結局2人は週末をずっとベッドの中で過ごしていた。何度も求めあった2人はお互いかけがえのない存在だと気づいたのだが、今更どうすることもできなかった。
そして日曜日の夜、ペッパーは名残惜しそうに家へと帰って行った。
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