Paradise of the immorality④

月曜日になり、マークが出張から帰ってきた。
「俺だけのペッパー」と言いながら抱きついてきた夫だが、ペッパーは素直に喜べなかった。そのまま寝室へと連れて行かれたペッパーは、夫に抱かれたのだが、トニーと結ばれた今となっては、何もかもが虚しく感じた。
何もかもが物足りない…。身体もだが、心も何一つ満たされないのだ。
そのため、夫が中で達した時も、ペッパーは達することが出来なかった。

夫が眠ってしまうと、ペッパーはバスルームへと向かい、手早くシャワーを浴びた。夫は気づいていなかったが、身体のあちこちには週末の情事の痕が残っていた。
鏡の中の自分は、何とつまらなそうな顔をしているのだろう…。トニーと過ごした週末は楽しくて仕方がなかったのに…。
それに、トニーと関係を持ったことに罪悪感は一切感じていなかった。夫に対して申し訳ないとは正直感じなかった。
「トニー……」
トニーが付けた痕に触れると、彼のキスや愛撫、甘い囁きが蘇り、ペッパーはその場に座り込んだ。
(どうしよう…。私はこんなにもトニーのことを愛していたのに…。それなのに…どうして逃げてしまったの…)
情けなかった。悔しかった。自分に嘘をついていたということが…。想いは同じだったのに、それを信じることができず、衝動的に全てを投げ出してしまったことが…。

その日、ペッパーは一晩中静かに涙を流し続けた。

***

翌日、社長室のドアの前で、ペッパーは立ち止まった。
どんな顔をして会えばいいのだろう。何事もなかったかのように振る舞えばいいのだろうか……。それともトニーはキスの一つくらいしてくれるだろうか…。
何度か深呼吸をして気持ちを落ち着けたペッパーは、ドアをノックすると部屋へと入った。

「ペッパー、この書類を頼んでいいか?」
普段と何の変わりなく接してくるトニーは、週末のことを話題にすることもなく、珍しく黙々と仕事をこなしている。2人きりになれば…と、心のどこかで期待していたペッパーは、素っ気ない態度のトニーに少々拍子抜けしてしまった。
ペッパーの視線に気づいていないのか、トニーは書類にひたすらペンを走らせ、溜まった書類にサインし続けている。暫くその様子を見つめていたペッパーだが、心の奥底から沸き起こる感情に抗えなくなった彼女は、心の声をつい口に出してしまった。
「……愛してる…」
「何だって?」
ようやく顔を上げたトニーは、ポカンと口を開けペッパーを見つめた。本音を口に出してしまったと顔を赤らめたペッパーだが、隠しても仕方ないと覚悟を決めると、すぅと深呼吸をした。
「あなたと…ずっといっしょにいたいの…」
軽く目を見開いたトニーだったが、いつになく真剣な表情になるとゆっくり立ち上がった。
「私…気づいたの…。あなたのこと、愛してるって…。いいえ…本当はずっとあなたのこと愛してた…。でも…その気持ちに気づかないふりをしてた…。でも…もう…遅いわよね…。もう…どうしようもないもの…」
止まらかった。トニーへの思いを一気に吐露したペッパーだが、トニーは黙ったままだ。
(やっぱり…もうどうしようもないわよね…)
俯いたペッパーだったが、次の瞬間、彼女は背後からトニーの大きく広い腕の中に閉じ込められた。
(トニー…)
目を閉じたペッパーは、そっとトニーの腕に触れた。
ギュッとペッパーを抱きしめたトニーは、首筋に何度もキスをすると甘く掠れた声で囁いた。
「私も同じだ。君へは思いは止めることはできない。いいさ、君となら一緒に地獄へでもどこでも行ってやる…。堕ちるところまで堕ちてやる…」

ようやくお互い素直になれた2人だったが、この先、この道がどこへ続いていくのかは全く分からなかった。

⑤へ…(R-18)

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