昔は誕生日当日にド派手はパーティーを開き祝ってもらっていたが、結婚してからは家族だけで祝うようになっていた。それでも11年前のあの出来事以降は、宇宙を救ったヒーローであり、スターク・インダストリーズの会長であるトニー・スタークの誕生日を是非祝わせてくれと、会社主催のパーティーがその週末に開かれるようになっていた。トニー自身は勘弁してくれと毎年頼んでいるにも関わらず…。
ということで、今年もトニー・スターク誕生日パーティーが盛大に開催された。ここ数年は少しだけ大人しめだったのに、今年はやたら派手だった。というのも、半年前事件に巻き込まれ重傷を負ったトニーの快気祝いも兼ねていたのだ。
最近人気の俳優や女優、人気アーティストのライブなどなど、一体どれだけ派手なのかと、さすがのトニーも頭を抱えた。
「ハニー、いくらなんでも派手すぎるんじゃないか?」
隣に座っているペッパーに向かってしかめ面をしてみたが、彼女は慌てて首を振った。
「知らなかったのよ。毎年企画部に任せてるから…。こんなに派手になるって分かっていたら、止めてたわよ」
頬を膨らませたペッパーの様子からすると、本当に知らなかったようだ。
が、モーガンは両親とは反対に喜んでいた。というのも、ゲストの1人は、モーガンが大好きな映画シリーズの主演男優だったのだ。大ヒットしている映画ということもあり、彼は今、ハリウッドで一番人気のある俳優だった。パーティーの客は、こんな機会はもう二度とないかもしれないと、彼の元に向かっているが、モーガンは恥ずかしくて近づくこともできなかった。
「モーガン、せっかくだからお話ししてきたら?」
モジモジしている娘にペッパーは声を掛けたが、トニーはあんな奴のどこがいいんだと言わんばかりに、眉間に皺を寄せた。が、可愛い一人娘は彼の大ファンなのだから、ここは自分がどうにかしようと、モーガンの手を掴んだトニーは、立ち上がるとその俳優の元へと向かった。
「えっ?!パパ?!!」
心の準備ができていないと慌てふためくモーガンだが、私も実はファンなのよね…と、母親まで付いてきているではないか。そうこうしているうちに、トニーは俳優に声を掛けた。
「お誕生日おめでとうございます、スタークさん。この度はご招待、ありがとうございます」
白い歯が眩しい笑顔を向けた俳優に、どことなく若い頃のキャプテン・アメリカに…もちろん、ロジャースの方だが…似ているな…と思ったトニーだが、一言二言礼を言うと、娘を引っ張りだした。
「ところで、うちの娘が君の大ファンなんだ」
トニーの言葉に、俳優はモーガンを見つめた。
「も、モーガンです」
真っ赤な顔をしたモーガンに、俳優は笑いかけた。
「モーガンさん、よかったらお話ししませんか?」
「は、はい!!」
バルコニーに向かう2人を見送りながら、ペッパーはトニーに告げた。
「あらあら、モーガンったら嬉しそうね」
が、トニーはありえない程眉間に皺を寄せているではないか。
「どうしたの?」
首を傾げる妻を、トニーはジロリと睨みつけた。
「あいつは要注意人物だ」
「え?」
一体どういうことなのだろうか。ポカンとしているペッパーにトニーは頬を膨らませた。
「分かるんだ。あいつは大昔の私と一緒だ」
「つまり?」
「女癖が悪い。ロジャースの方のキャプテンの若い頃に顔は似ているが、あいつはキャプテンとは違って、クソ真面目ではなさそうだ」
どうしてそういう発想になるのだろうか…と、ペッパーは溜息を吐いた。
「トニーったら、モーガンはファンだから、ただお話ししてるだけよ」
だが、ふんっと盛大に鼻を鳴らしたトニーは、大きな目を見開いて、2人のいるバルコニーの方に目をやった。
「モーガンに指一本でも触れてみろ。あの完璧な白い歯をへし折ってやる」
どこかで聞いたことがあるセリフに、ペッパーが頭を抱えていると、頬を赤く染めたモーガンが興奮気味に駆け寄ってきた。
「お話しできた?」
嬉しそうな娘の素振りに、ペッパーは笑みを浮かべた。
「う、うん!写真も一緒に撮ってもらったの!それからね、今度の映画のレッドカーペットに招待されちゃった!」
すると、トニーはほら見ろというようにペッパーを睨みつけた。が…。
「パパとママも一緒にどうぞって!今度の映画、ヒーローものだから、パパが来てくれたらみんな喜びますって!」
娘の言葉に、トニーはやれやれというように大きく息を吐いた。
「どうしたの?」
必死で笑いを堪えている母親と、気まずそうにソッポを向いている父親に、自分が離れている間に何かあったのかと、モーガンは首を傾げた。
「あなたがお嫁に行く時は、パパは大騒ぎして大変ねって思ったの」
モーガンは不思議そうな顔で両親を見つめていたが、不貞腐れている父親の機嫌を取るように抱きついた。するとトニーがデレっと鼻の下を伸ばした。
そんな父と娘の姿を見つめながら、モーガンが結婚…いや、恋人を連れて来る時のことを想像したペッパーは、先が思いやられるわね…と、一人考えていたとか…。