Another World of 2012:NY…26

次にトニーが目を開けたのは、病院のベッドの上だった。
「気がついた?」
手を握っているペッパーに向かって、大丈夫だというように、トニーは笑みを浮かべた。
「あなたの心臓、相当ダメージを受けて…。エクストリミスでも完治は無理みたい…」
だから鼻から酸素のチューブを入れていても息苦しいのかとトニーは納得した。が、自分は助かったのだから、例え心臓が完治しなくても、良かったと思わなければとトニーは考えた。
「モーガンは…」
最後に見たモーガンは、一人敵に立ち向かっていたのだ。娘の状態が気になったトニーは、キョロキョロと視線を動かした。
「眠ってるわ」
ペッパーの視線の先を見ると、モーガンとハロルドはトニーの足元で身体を丸くてして眠っていた。
「この子に助けられたわ…」
娘の髪を撫でたペッパーは、トニーに顔を向けた。
「この子がやっつけたの…。この子の力が…あなたを救ったの…」
ペッパーが声を震わせた。
「怖かった…。あなたも…モーガンも…失うんじゃないかって…」
「ハニー……」
モーガンは一体どうやって敵を倒したのだろう…。だが何れにせよ、モーガンは自分を救ってくれたのだ。

と、そこへ、ポータルが開き、ストレンジがやって来た。
毎度ながら突然現れるストレンジに、トニーは思わず顔を顰めたが、ストレンジは気にする風でもなく、近くにあった椅子に腰を下ろした。
「スターク。話がある。お前の娘のことだ。将来的には息子にも繋がる話かもしれないが…」
そう前置きしたストレンジは、トニーが何か言う前に…と、語り始めた。
「数年前、お前を迎えに公園に行った時から、お前の娘のモーガンの底知れぬ力には気づいていた。だからお前が引退した後も、お前たち家族のことはずっと見守っていた」
トニーが眉を顰めた。
「おい、魔法使い。お前はうちの家庭を勝手に覗き見していたのか?」
眉を吊り上げたトニーにストレンジは鼻を鳴らした。
「私の仕事は、全てを見通しておくことだ。つまり、全てを見ている。勿論、お前と妻が……」
何か思い出したのか、顔を赤らめたストレンジはわざとらしいくらいの咳払いをした。
「それはさておき…モーガンの能力…それは人の心を感じ、そして見ることだ。今はまだその程度だが、そのうち、人の心を操ることもできるようになるだろう。だがそれは、エクストリミスのせいではない」
「え?」
ストレンジの言葉は、トニーとペッパーにとって思わぬものだった。目を丸くしている2人を見比べたストレンジは、トニーをじっと見つめた。
「スターク、お前の遺伝子のせいだ」
「私のせい?!」
トニーはベッドの上で飛び上がった。
「調べたことがないのか?トニー・スタークとあろう者が?まぁ、いい。現代の技術では調べても分からない程度だから…。お前の遺伝子には、人にはないものが僅かだが混じっている。産まれながらのものではない。リアクターのせいか、それとも2012年NYで宇宙人と接触したせいかもしれないが…。兎に角その遺伝子のため、モーガンは特殊な能力を持っている。それに加えて、彼女にはエクストリミスの力がある。お前たちとは比べものにならないほどの強大なパワーだ。スタークは見ていないだろうが…」
そう言うと、ストレンジは、モーガンが敵を倒した時の映像を映し出した。
娘の圧倒的な力に、トニーはゴクリと唾を飲み込んだ。
「お前がサノスを倒した時の力と似ている。エクストリミスの力だから当然なのだが…。だが…下手をすれば、この力は脅威になる。モーガンの生まれ持った能力とエクストリミスの力が合わされば…この娘は、地球の…いや、宇宙の脅威になるかもしれない。今回の敵もそれが狙いだった」
ふぅと息を吐いたストレンジは、無邪気な顔をして眠っているハロルドを見つめた。
「お前たちの息子の能力は…娘とは違う。まだ開花していないから、伝えないでおこう。だが、彼もまたモーガンに匹敵するような力を持っている。つまりだな…モーガンとハロルドの力が合わされば…宇宙は滅亡するかもしれない…」

我が子にそんな力が備わっていたなんて…。顔面蒼白になったペッパーは、
「どうすれば…どうすればいいの…」
と、泣き出した。トニーは妻の手を握りしめた。自分の遺伝子と、そしてエクストリミス…これも元はと言えば自分のせいなのだから、子供たちに申し訳ないことをしたと、トニーは悔やんだ。
「脅威は芽のうちに摘み取るのが一番だ」
ストレンジのあまりに静かな声に、トニーは目を見開いた。つまり彼は子供たちを…。
「ストレンジ!モーガンとハロルドに手を出すな!」
激昂したトニーは真っ赤に燃える瞳でストレンジを睨みつけたが、ストレンジはトニーを制した。
「スタークよ。私もそんな非道な男ではない。エクストリミスを除去しろと言っているんだ」
ストレンジの言葉に、トニーはふぅと力を抜いた。
「能力はどうすることもできない。お前たちが言うように、この子たちの個性だと思えばいい。だが、エクストリミスは取り除ける」
何度も子供たちからエクストリミスを取り除くことは考えた。だが、それと共に育ってきた彼らから取り除けば、逆に悪影響があるのでは…と、2人は出来ずにいたのだから…。
「大丈夫なの?この子たちは…」
ペッパーの言葉にストレンジは頷いた。
「大丈夫だ。取り除いても、子供たちは大丈夫だ…」

トニーはペッパーを見た。
子供達を守るためには、今すぐエクストリミスを取り除くしかない。
トニーの考えを察したペッパーは、小さく頷いた。そして眠っている娘の髪を撫でた。
「頼む…」
トニーの言葉に、ストレンジは頷いた。そして彼はモーガンとハロルドの頭に触れると、何やら唱えた。
2人の身体が光に包まれた。ほんの一瞬、辺りがオレンジ色の光に包まれた。

「終わったぞ」
フワフワと浮くオレンジ色の球体を箱にしまったストレンジは立ち上がった。
「ありがとう、ストレンジ…」
礼を言うトニーに、ポータルを開いたストレンジが振り返った。
「お前たちは…………」
と、言葉を切ったストレンジがくるりと目を回した。まるで、お前たちがどうして除去していないのか知ってるぞと言うように…。
「好きにしろ」
ご丁寧にウインクをしたストレンジは、ポータルの中に消えて行った。

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