Another World of 2012:NY…25

トニーは動けなかった。
傷は治ったが、鷲掴みにされた心臓は一向に落ち着く気配がない。手足が痺れ出し、息もできない状態だった。
トニーは胸元をギュッと掴んだ。
何度も深呼吸するが落ち着かない。逆に余計に痛み出した。
「くそっ……」
咳き込んだトニーは再び血を吐き出した。

と、目の前に人の気配がした。顔を上げると、あの女が立っていた。そして持っていた杖をトニーの胸元に当てた。
エクストリミスがあっても、心臓を撃ち抜かれれば、一巻の終わりだ。
これまでか……と、もはや自分では動けないトニーは目をぎゅっと閉じた。

と、その時だった。
「パパをいじめないで!!!!」
モーガンの声がした。
目を開けたトニーは、女の背後に娘が立っているのを見ると、叫んだ。
「モーガン!」
目を真っ赤に光らせたモーガンの全身はオレンジ色に光り輝いていた。
モーガンは必死だった。母親と羽の生えた妖精のようなお姉さんを振り切ってここまでやって来た。父親を守りたい…その一心だった。
「ほう…ついに目覚めたか?」
女はククッと笑い声を上げた。
「モーガン、逃げろ!」
トニーは再び叫んだ。が、女がトニーに向かって手を差し出すと、トニーは首元を締められたまま宙に浮かんだ。
息ができなくなり、トニーはジタバタもがいたが、余計に首元は締まり、そして見えない鎖が身体にまとわりついた。ギュっと鎖が締まり、息を詰まらせたトニーは意識を手放した。
「娘よ。私と共に来い。お前の力で、宇宙を支配しよう。歯向かうと、お前の父は死ぬぞ?」
モーガンは父親を見た。父親の顔は死人のように青くなっており、彼女は唇を噛み締めた。
「いや!あたしは、パパとママとハリーと、いっしょがいいの!!!」
睨みつけてくるモーガンに、女は大袈裟に首を振った。
「仕方ないな…」
女が手を振った。するとトニーは湖へと投げ飛ばされた。
「スタークさん!」
スパイダーマンが慌ててトニーの後を追い、湖に飛び込もうとしたが、敵に捕まってしまった。
「パパ……」
湖へと姿を消した父親に、モーガンは涙が止まらなかった。
(このおばちゃんは、パパをころそうとしてる!)
モーガンは女を睨みつけた。彼女は怒りを解き放った。
そんなモーガンに、女は微笑んだ。
(この力よ…。この力があれば…宇宙は我が手に…)
このままモーガンを連れ去ろうとした女は、モーガンの手を掴もうとした。が、彼女に触れた瞬間、女の掌が焼け焦げた。
悲鳴を上げた女の腕を、モーガンは逆に掴んだ。
女の身体が炎に包まれた。モーガンの身体も…。
モーガンは手を離さなかった。女が断末魔のような声を上げても、自分の身体が燃え始めても、決して離さなかった。

やがて女は燃え尽き、灰になった。

女が生き絶えると、敵も灰と化した。
動けるようになったピーターは、急いで湖に飛び込んだ。
湖の底にトニーは鎖で縛り付けられていた。
鎖を引きちぎったピーターはトニーの身体を抱きかかえると、水面に向かって急いだ。

「モーガン!」
敵が消えたのを確認したペッパーは、娘の元に駆け寄った。
真っ黒に焼け焦げた娘は呆然と立ち尽くしており、ペッパーの頭を最悪の事態が過った。
と、モーガンが動いた。
「ママ……」
か細い声で母親を呼んだモーガンの火傷は、みるみるうちに治っていった。
「モーガン……」
ペッパーは娘を抱きしめた。泣き出した娘をペッパーは力強く抱きしめた。
「パパは……」
母親にしがみついたモーガンは、湖に目をやった。丁度ピーターが岸辺に父親を寝かせているのが見えた。

「スタークさん!しっかりして!」
トニーは息をしてなかった。ピーターが心臓マッサージを始めたが、トニーはピクリとも動かなかった。
「どけ!」
ピーターを押しのけたストレンジが何やら呪文を唱えた。するとトニーがビクッと動いた。口から水を吐き出したトニーは咳き込んだ。そして、一瞬目を開いたトニーだが、すぐに目を閉じてしまった…。

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