「Until now I have been looking for you」カテゴリーアーカイブ

Until now I have been looking for you.㉑

週末のパーティーはスターク邸で行われたのだが、広大は屋敷は学園中の生徒で溢れかえっていた。フューリー校長を始め、教師も参加しており、誰もが皆楽しそうに話をしたり踊ったりしていた。
トニーはあちこちから引っ張りだこで、最初は一緒にいたペッパーだったが、いつの間にか離れ離れになってしまったが、トニーは友達の輪の中で笑っていた。心の底から嬉しそうに…。そんなトニーを見ていると、ペッパーは自分までもが嬉しくなってきたが、ふと数週間前の出来事を思い出してしまい、浮かんだ涙を隠すように慌ててバルコニーへ向かった。

しばらく風に当たっていると、そのトニーの声が聞こえた。
「ハニー、見つけた」
振り返ると、両腕を広げたトニーはペッパーを抱きしめると頬にキスをした。そしてペッパーの肩を抱き寄せたトニーは、夜空を見上げながら深呼吸をした。
「今までこういうパーティーは何度もしたけど、いつもつまらないものばかりだった。だけど、今日のパーティー、めちゃくちゃ楽しいんだ。楽しくて仕方ない」
笑みを浮かべたトニーは、ペッパーを見つめた。
「俺、やっと自分の居場所を見つけることができた。本当の俺を受け入れてくれる、本当の友達もできた。本気で誰かを好きになることなんかできないって思ってたけど、君と出会って、恋に落ちてさ…。君が初めてなんだ。本気で好きになった人って。だからあの時、勇気を出して告白してよかった…」
ペッパーの目に浮かんだ涙を拭い取ったトニーは、彼女の頬にそって手を添えた。
「ペッパーと会えて、本当によかった。君と恋に落ちて、本当によかった。ペッパー、ありがとう。俺のことを受け止めてくれて、本当にありがとう」
「トニー…」

恋に落ちてよかったのは、ペッパーも同じだ。
トニーに出会い、自分の人生は180度変わった。自分を変えることもできた。
だから感謝しているのはペッパーも同じだった。

うんうんと頷くペッパーをトニーはじっと見つめた。
「だからさ、俺、ペッパーのこと、 絶対に一生離さないからな」
「うん…私も…」
そう言うと、ペッパーは首を伸ばしトニーにキスをした。キスをしながらギュッとペッパーを抱きしめたトニーは、唇を耳元まで滑らすと、甘ったるい声で囁いた。
「まだ随分先の話になりそうだけど、ミセス・スタークになってくれ」

(つ、つまり…それって…)
突然プロポーズされ、耳の先まで真っ赤になったペッパーだが、トニーと永遠に共にいたいのは同じだったので、小さく頷いた。
するとトニーはペッパーの手を取ると、指輪を滑り込ませた。
「と、と、トニー?!こ、これって……」
このタイミングでプレゼントされる指輪といえば、ただ一つ。それは…。
「婚約指輪さ」
「こ、婚約指輪?!」
当然のように告げるトニーだが、目を見開いたペッパーは数秒経ってから大声で叫んだ。
あまりの大声に、賑やかだったパーティー会場は一瞬で静まり返ったが、すぐに悲鳴と歓声が響き渡った。
「え?!婚約?!」
「まじかよ!」
2人の前にはあっという間に人だかりができ、もはや制止できない程の大騒ぎになっている。
「そうさ!俺はペッパーにプロポーズして、ペッパーはOKしてくれたぞ!」
湧き上がる歓声に手を振り答えているトニーだが、恥ずかしさのあまりペッパーは文句を言おうとした。が、それを遮るようにトニーは唇を奪った。
トニーのキスは優しくそして温かく、この先何があっても愛し信じていけると確信したペッパーは、甘えるようにトニーに抱き付いた。

【END】

2 人がいいねと言っています。

Until now I have been looking for you.⑳

それから数週間たったある日。
「週末にさ、俺の家でパーティーを開くんだ。みんなに迷惑かけたんだから、お袋が張り切っててさ。それで…」
放課後、校内を歩きながらペッパーに話をしていたトニーだが、誰かに気がついたのか、立ち止まると小さく舌打ちした。トニーの顔ばかり見ていたペッパーが彼の視線の先に目を向けると、向こうからよく知った女性が手を振りながら走ってくるではないか。
「ペッパーちゃーん!!」
「来た……」
はぁと溜息を吐いたトニーだが、駆け寄ってきたマリアは、息子を無視するとペッパーの手を握りしめた。
「ペッパーちゃん、トニーから聞いたかもしれないけど、週末にパーティーを開くの。うちのバカ息子が皆さんにご迷惑をおかけしたでしょ?だからそのお詫びに、お友達を大勢呼んで…」
「今話してたところだ」
母親を遮ったトニーだが、マリアはそんな息子を睨みつけた。
「トニー、あなたは黙ってて」
こうなったら何を言っても無駄だと、トニーは肩を竦めた。
「それでね、ペッパーちゃんにも色々手伝ってもらいたいの」
「えっ?わ、私がですか?!」
スターク家のパーティーを家族でもない自分が手伝ってもいいのかと、驚いたペッパーは飛び上がった。だが、マリアはさも当然のように頷いた。
「えぇ。だって、パーティーの用意を娘と一緒にするのが私の夢だから!」

(む、娘って……えぇぇ!!)

娘ということは、つまり…と、流石のペッパーも頭の中は大混乱。見るからに慌てふためいているペッパーに、マリアはふふっと笑みを浮かべた。
「そうよ!あなたたち、どうせ結婚するんでしょ?あなたがトニーのお嫁さんになるんなら、ペッパーちゃんは私の義理の娘になるってことでしょ?だからね、私、あなたのことをもう娘だと思ってるのよ!」
一人盛り上がる母親と、固まっている恋人を見たトニーは、母親に向かって鼻を鳴らした。
「お袋、ペッパーが迷惑がってるだろ」
が、流石はトニーの母親だ。彼女の方が一枚上手だった。
「あら、トニー。あなたはペッパーちゃんと結婚しないの?散々手を出しておいて、それはないでしょ?責任取って結婚しなさい!それとも、何?結婚しないつもりなの?ママ、知ってるのよ。あなたたち、ここのところ毎日セッ……」
「か、母さん!!」
顔を真っ赤にしたトニーは叫ぶように母親の言葉を遮った。
頭から湯気が出そうなくらい顔を赤らめているペッパーの手を握りしめたマリアは、
「ということで、ペッパーちゃん、もう授業は終わったのよね?行きましょ?」
と言うと、ペッパーを連れてあっという間に消えてしまった。

後に残されたトニーは、その場で立ちすくんでいたが、様子を伺っていた仲間たちがニヤニヤ笑いながら近寄ってきた。
「おい、トニー!お前たち、いつ結婚するんだ?」
「もしかして、週末のパーティーは婚約パーティーか?!」
からかうようにトニーの肩を叩いたクリントとソーだが、トニーは相変わらず固まったままだ。
「ペッパーは幸せねー。結婚前からお姑さんに気に入られて」
「そ、そうだね…」
ナターシャとブルースまでもが加わり、トニーをからかい始めたため、その場は大盛り上がり。
その時の様子は、こっそり見ていた他の生徒たちから次々と伝わっていき、『トニーとペッパーは週末結婚式を挙げる』という噂が広がっていたとか…。

㉑へ…

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Until now I have been looking for you.⑱

翌朝。
「トニー、いってらっしゃい」
目を潤ませたマリアだが、笑顔を作るとトニーに向かって手を振った。そしてトニーは迎えに来たペッパーと共に学校へと向かった。

トニーにとっては1ヶ月ぶりの登校。車で送ると母親は言ってくれたが、トニーは歩いていくと母親の申し出を断った。だが、大勢の中を歩きたくないと、授業中のタイミングを狙ったのだが、それでも誰とも顔を合わせたくないと、トニーは深々とフードを被っていた。

学校へ近づくに連れ、トニーの足取りが重くなり始めた。息遣いも荒くなり、汗をかいたトニーは震え始めた。
「トニー、今日はもう帰って、また明日にする?」
トニーの異変に気付いたペッパーはそう声を掛けた。が、ペッパーがいるから大丈夫と考えたトニーは首を振ると、再び歩き始めた。

結局、校内に入ったのは、2時間目も半分過ぎた頃だった。静まり返った廊下を2人で手を繋ぎ歩いていると、ペッパーが悪戯めいた笑みを浮かべた。
「私ね、今日が初めての遅刻なの。つまりね、1限目は無断でサボっちゃったの。授業サボったのって、あの時以来かも…」
小声で囁いたペッパーは、ふふっと笑った。
「でも、トニーと一緒だもの。ドキドキしてるけど、楽しくて仕方ないわ」
ペッパーの笑顔は出会った頃から何の変わりもなく、トニーは眩しそうに彼女を見つめた。

気づけば、教室の前に来ていた。
暫く立ち止まっていたトニーだが、何度も何度も深呼吸をすると、ドアをそっと開けた。
すると…。
「「おかえり!トニー!!」」
トニーが戻ってくるのを待ち構えていたクラスメイトは、立ち上がるとトニーの元に駆け寄った。
「トニー!無事でよかった!」
「誘拐されたって聞いたから、酷いことされたんじゃないかって、心配したんだぞ?」
「お前がいないと、学校中がめちゃくちゃ暗くてさぁ」
大勢の友達が歓迎の言葉を口にしている。中にはブルース・バナーのように、号泣している者もいるではないか。
騒ぎは隣の教室にも伝わり、廊下には大勢の生徒が飛び出してきた。
皆、ニコニコと嬉しそうで、こんなにも温かく歓迎されたことはなかったトニーは、驚くと同時に胸が熱くなってきた。
何もかも初めてだった。自分のことを心配してくれていることも、自分のことを本当に友達だと思ってくれていることも…。

もう大丈夫…。もう平気だ…。
こんなにも素晴らしい仲間が大勢いるんだ…。今までとは違う本当の仲間が…。

鼻をすすったトニーは小さな涙を流した。
「ごめん、心配かけて。でも、もう大丈夫だから」
袖口で顔を乱暴に擦ったトニーは、フードを脱ぐと笑みを浮かべた。
そこにはいつものトニーがいた。
(よかったわね、トニー)
楽しそうに友達に声をかけながら席に着くトニーを見つめながら、ペッパーもトニーの隣に腰を下ろした。

⑲へ…

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Until now I have been looking for you.⑰

それから1週間が経った。
退院はしたが、トニーは外に出るのが怖いと部屋に篭っていた。
ペッパーは毎日見舞いにやって来た。スティーブやローディたちもトニーに会いたがっていたが、トニーはペッパー以外にはまだ会う自信がないと断っていたのだ。そのため、彼らは手紙などをペッパーに託けていた。が、ペッパーもトニーと話をすることはなかった。カーテンを閉め切った真っ暗な部屋に、トニーは閉じこもっていたから…。部屋の隅かベッドの上に座り込んだトニーは、話をするどころか、ペッパーに目を合わせようともしなかった。

今日もペッパーは沢山の物を託されてやって来たのだが、トニーはベッドの上にボンヤリと座っていた。
「トニー」
呼びかけても、トニーは返事をしない。
アーム型ロボットのダミーが小さな電子音を出した。ダミーのそばには、2台目だと作っていた『ユー』と名付けられたロボットが置かれているが、こちらはスイッチが入っていなかった。
荷物を置いたペッパーは、トニーの隣に腰を下ろした。そして彼の背中にそっと手を置いたのだが、トニーはビクッと身体を震わせた。目をギュッと閉じたトニーは顔面蒼白で、ペッパーは慌てて手を離した。
「ごめんなさい」
あの事件以来、トニーは身体を触れられることを拒んだ。それはペッパーでも…。
ペッパーが悲しそうに顔を歪めたのに気づいたトニーは、視線を伏せたまま呟いた。
「ごめん…」
悲痛な声に、ペッパーは胸が締め付けられた。何とかしたかった。だが、どう声を掛けていいのか分からない。トニーは頑張っているのだから、今更『頑張れ』なんて安っぽい言葉を掛けられるはずもなかった。
持って行き場のない感情を握りつぶすように、ペッパーは膝の上で拳を握りしめた。

しばらくして、トニーがポツリと呟いた。
「…怖いんだ……」
顔を上げたペッパーはトニーを見つめた。相変わらず視線を伏せたままのトニーは、目をギュッと閉じ、小さく震えていた。
「誰かと話すのも…顔を合わせるのも…怖い…。もう…ここから出たくない…」
ポツリポツリとトニーの目から涙が流れ落ちた。そして呻き声を上げたトニーは、頭を抱えると、自分を守るかのように身体を丸めた。

トニーの心の根深いところに植え付けられた恐怖。その張本人であるホイットニーの顔を思い浮かべたペッパーは、思いつく限りの罵りの言葉を心の中で叫んだ。が、同時に思い出した。あの時トニーが彼女に向かって告げた言葉を…。
『ペッパーが俺に本当の愛を教えてくれた。ペッパーは、ありのままの俺を受け止めてくれる。愛してくれる』

力不足かもしれない。だが、今のトニーを受け止め、そして共に歩き始めることができるのは、自分だけ…。例え何年かかろうとも…。

すぅと深呼吸したペッパーは、立ち上がるとトニーの目の前に跪いた。そして膝の上で震える彼の手をそっと両手で包み込んだ。
「トニー、私がそばにいる。あなたの手、絶対に離さないから…。これから先、何があっても、絶対に離さないわ。だから大丈夫よ。信じて…」

ペッパーの言葉に、トニーの震えが止まった。

前へ進まなくてはと分かっている。だが、その一歩を踏み出すのが怖かった。
学園の友達が、自分をどんな目で見るのか…もし、またひとりぼっちになったらと思うと、その一歩を踏み出す勇気がなかった。
だが、ペッパーの手は温かかった。全てを包み込み、そして受け止めてくれるように温かかった。だから、この温もりがあれば、もしかしたら…大丈夫かもしれない…。

そう考えたトニーは、小さく頷くと顔を上げた。
怯えたような瞳をしたトニーだが、ペッパーをまっすぐに見つめると、か細い声を出した。
「…手…握っててくれないか…」
「いいわよ」
そう言うと、ペッパーはトニーの手を両手で包み込んだ。そしてそのまま自分の胸元に当てた。
彼女の鼓動が微かに伝わってきた。心地よいリズムにトニーはそっと目を閉じた。先程までの暗闇の世界とは違い、そこには明るい世界が広がっていた。ペッパーがそばにいてくれるだけで、世界はこんなにも変わるのだ。だからこそ、彼女となら、きっと乗り越えることができる…。そう考えたトニーは、ゆっくりと目を開くと、何度も深呼吸をした。
「…キスしてくれ…」
大丈夫かしらと思いつつも、ペッパーはトニーの頬にそっと触れてみた。と、トニーが泣き出しそうな顔になった。慌てて手を離そうとしたペッパーだが、トニーはそれを押し留めた。
「大丈夫だから…」
目を閉じ恐怖と必死に戦っているトニーの唇にペッパーはそっと唇を合わせた。まるでファーストキスを思い出すような、軽い口づけだったが、トニーの震えが止まった。
「…もう一回…」
トニーの囁きに誘われるように、今度は先程よりも唇を押し付けてみた。
すると、トニーが腕を動かした。そしてゆっくりとだが、ペッパーの背中に触れた。そこでペッパーも恐る恐るトニーの背中に触れてみた。今度は大丈夫だった。
トニーはペッパーを力強く抱きしめた。
(トニー…)
キスをしながら、ペッパーの目からは嬉し涙が零れ落ちた。

⑱へ…

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