5月になりトニーはアカデミーを卒業し、MITへ戻ることになった。ということで、ペッパーもアカデミーを辞め、一緒にボストンへ行く予定だったのだが…。
「嘘だろ…」
ボストンでの家も決め、後は引越しの準備をするばかりだったのに、その日遅く帰宅したペッパーは、しょんぼりとトニーに告げた。
「頼むからもう1年いてくれって…校長に土下座して頼まれたから、断れなくって…」
ペッパーの同僚が家庭の事情で急遽辞めることになり、同時に2人も退職されると困る…と、フューリーが泣きついたらしい。
事情が事情だし、それだけペッパーが頼りにされているということなのだから、喜ばしいことには違いない。だが、ペッパーとしてもやはりトニーのそばを離れたくない。となると、残された道はだた一つ。
「でもね、私はあなたのそばにいたいの。だから…」
『仕事は辞める』と告げようとしたペッパーだったが、何やら考えこんでいたトニーは、
「分かった。君はこの仕事が好きだろ?だから君はこっちに残れ。それにもし何かあっても、フューリーがいるアカデミーなら安全だ」
と、告げるとペッパーをぎゅっと抱きしめた。
「…いいの?」
てっきり『嫌だ。一緒に来い』と言われるものだと思っていたのに、あまりにあっさりと言われ、ペッパーは拍子抜けしてしまった。
そんなペッパーの心境を分かったのか、トニーはわざとらしく顔を顰めた。
「おい、ハニー、国内だぞ?東と西海岸じゃぁ時差もあるし、すぐに駆け付けれる距離じゃないけど…。でも、俺たちは離れてても、ここで繋がってるだろ?」
そう言うと、トニーはペッパーの胸に指を当てた。
1年前なら彼はきっと駄々を捏ねただろう。だが、あの事件を乗り越え、2人の絆は誰にも壊されない程強固なものになったのも事実だ。
(今の私たちなら大丈夫よ…)
「うん…」
ニッコリ笑ったペッパーは、トニーの胸元に抱き付いた。
ということで、1年間離れ離れになることになった2人だが、『月に1回は帰ってくるから』と言っていたトニーも予想外に忙しく、結局クリスマス休暇まで戻って来ることができなかった。そのクリスマスも恒例のパーティーに参加しなければならなかったのだから、結局2人きりでゆっくりする暇もなく、やっぱり強引に付いて行けばよかったかしらとペッパーが考えていたのだが…。
3月になり、突然トニーが戻って来た。
「どうしたの、突然…」
連絡もなしに突然戻って来たのだから、何かあったのかとペッパーは不安そうにしている。
「ようやく時間が出来たから。それに一刻も早く直接話したかったんだ」
コーヒーを一口飲んだトニーは、ふぅと息を吐くとペッパーを見つめた。
「卒業できそうなんだ。だから6月には戻って来る」
ポカンと口を開けたペッパーは、数秒経ってようやく意味を理解したのか、叫び声を上げた。
「卒業…。う、うそ!!!」
つまりトニーは全単位を1年で習得したということなのだろうか…。しかもよくよく聞けば、修士号まで取ったのだと言うではないか。
天才とは…まさに彼の事を言うのだろうか…。
「ほら、アカデミーに行く前に大学に行ってたって話しただろ?あの時にもうほとんど単位取ってたんだ。しかも休学扱いになってたから…」
呆気に取られているのか黙ったままのペッパーに、トニーはごにょごにょと告げたが、彼が凄いことには変わりない。
何度も深呼吸して落ち着かせたペッパーは
「じゃあ、一緒に暮らせるのね?」
と笑みを浮かべると、トニーに抱き付いた。
「それより3か月ぶりの再会だぞ?」
な?とニッコリ笑ったトニーは、ペッパーにキスすると抱き上げ寝室へ向かった。
3か月ぶりの情事は、とびっきり甘いひと時だった。
中で何度も果てたトニーなのに、彼はまだ続きを求めてくる。いい加減ぐったりとしているペッパーを腕の中に閉じ込めトニーは
「後3か月離れていないといけないんだぞ?だから、もう一回…」
と囁くと、再び覆いかぶさった。
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