「怪我5題」カテゴリーアーカイブ

5.点滴

「…ペッパー…」
か細い声に顔を上げると、琥珀色の大きな瞳と目が合った。
「トニー…大丈夫?」
小さく頷いたトニーだが、身体を動かした彼に猛烈な痛みが襲い掛かった。
「…いたい…」
顔を顰めたトニーは辛そうで、ペッパーはナースコールに手を伸ばした。が、
「…キスしてくれたら治る」
と、トニーはそれを遮った。
彼らしい答えだが、目覚めたことは知らせないといけない。
「キスはいくらでもしてあげる。でも、あなたが目を覚ましたことは知らせないと…」
唇に軽くキスをしたペッパーはナースコールを押した。
医師が看護師と共にやって来た。トニーを手早く診察した医師に指示された看護師は、点滴に鎮痛剤を入れ始めた。

程なくしてトニーはウトウトとし始めた。それでも先程のことはしっかり覚えているのだろう。唇を指さしたトニーは微睡み始めた瞳をペッパーに向けた。
クスクス笑ったペッパーは、ヒールを脱ぐとトニーの隣に横になった。そして点滴の邪魔にならないようにトニーに抱きついたペッパーは、彼の頬に何度も何度もキスをした。

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4.背中をさすさす

幸いにもナイフは急所を外れており、ペッパーは病院のベッドの上で眠り続けるトニーの手を握りしめていた。
麻酔で眠っているとはいえ痛むのだろう。時折唸り声を上げるトニーの身体をペッパーはそっと摩った。そうすると痛みは和らぐらしく、トニーは再び安らかに眠り始めるのだ。

犯人の女性は、トニーのファンだった。トニーとペッパーには知らされていなかったが、酷くストーカー紛いのことをし、何度も警察沙汰になりかけており、社の警備の間では有名だったらしい。
トニーと会えないのは、きっとペッパー・ポッツが邪魔をしているから。あの女がいなければ、トニーはきっと会ってくれる…。そう考えた女は、ペッパーをナイフで脅しトニーと別れるよう迫るつもりだったらしい。
が、女にとって予想外の事態が起きた。途中退席したペッパーが心配になり追い掛けてきたトニーがペッパーを庇ったのだ。ペッパー・ポッツを少しだけ脅すつもりが、愛するトニーを傷つけてしまった…。大変なことをしてしまった…と、泣きながら女は謝罪し続けているらしい。

「トニー…ごめんなさい…。あなたを傷つけてしまったわ…」
寝息を立てるトニーの頬を撫でたペッパーは、そっと額にキスをした。

5.点滴

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3.痛い

刺される…。

そう思ったペッパーだが、目を閉じた彼女の耳にトニーの声が聞こえた。
「ペッパー!!」
(トニー…ごめんね。もう、あなたのそばにいられないわ…)
と、目の前が暗くなった。刺されたのだと思ったが、いつまで経っても痛みは襲ってこない。
そっと目を開けると、トニーのネクタイが目の前で揺れていた。
「トニー?」
ペッパーはトニーに抱きしめられていた。彼の肩越しに見ると、先程の女が床に座りこみ、血塗れの両手を呆然と眺めていた。
自分は刺されていないのだ。それなのに女は手を血で染めている。つまり、それは…。
目を見開いたペッパーは、トニーを見つめた。脂汗をかいた彼の腕は小刻みに震えている。
「トニー…」
「だ…大丈夫か……」
と、トニーがペッパーに倒れ込んだ。力の抜けた彼の身体を慌てて支えると、左の腰にはナイフが刺さっており、ぬるりとした血が刺傷から流れ落ち、地面を朱色に染め始めた。
「トニー!い、いや…。しっかりして!」
ペッパーの涙が顔に降り注ぎ、トニーは彼女を安心させるように手を握り締めた。
「ペッパー…だ、だいじょ…っ…いたっ……」
激痛が下半身から襲いかかり、トニーは顔を顰めた。あまりの痛さに次第に意識は朦朧とし始めた。
(ペッパー…無事で良かった…)
泣き叫ぶペッパーの声を聞きながら、トニーは意識を手放した。

4.背中をさすさす

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2.早退

どうしてこんなに眩暈がするのだろう。いや、眩暈だけではない。何故か分からないが妙な胸騒ぎがする。ここにいてはいけない…という胸騒ぎが…。それに、こういう時の嫌な予感は残念ながらよく当たるのだ。
「早めに帰ろうってトニーに言った方がよさそうね…」
何度か深呼吸したペッパーは、トニーの元に戻ろうとした。その時…。

「あなたがペッパー・ポッツ?」
聞き覚えのない声に振り返ると、見知らぬ女が立っていた。
「えぇ。そうですけど」
嫌な笑いを浮かべた女は、カバンに手を突っ込んだ。
「あんたがいると、彼は私のものにならない。だから死んでくれる?」
女の言う『彼』がトニーだと悟った時には遅かった。カバンの中から何かを取り出した女はペッパーに向かってきた。それがナイフだと気付いたが、足が竦んで動けない。目の前に女が迫ってき、ペッパーは目を閉じた。

3.痛い

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1.立ちくらみ

朝から会議の連続で些か疲れたのだろうか。トニーと共にチャリティーパーティーに出席していたペッパーだが、気分が悪くて堪らない。
乾杯の挨拶の後、次々と料理が運ばれてきたが、全く手を付けようとしないペッパーに、ベラベラと話をしていたトニーも様子がおかしいと気付いた。
「ペッパー?」
不安げなトニーを安心させるように無理矢理笑みを作ったペッパーだが、外の空気を吸って来ようと席を立った。だが、立ち上がった瞬間、足元をふらつかせつペッパーにトニーは眉を潜めた。
「大丈夫か?」
机に手を付いたペッパーは、眩暈がするのか、額に手を当てている。
「えぇ…少し立ちくらみがして…」
慌てて立ち上がったトニーはペッパーを支えようとしたが、タイミング悪くパーティーの主催者が挨拶にやって来た。
挨拶もそこそこに済ませようとしているトニーにペッパーは
「すぐに戻るわ。一人で大丈夫だから」
と告げると、外へと向かった。

2.早退

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