幸いにもナイフは急所を外れており、ペッパーは病院のベッドの上で眠り続けるトニーの手を握りしめていた。
麻酔で眠っているとはいえ痛むのだろう。時折唸り声を上げるトニーの身体をペッパーはそっと摩った。そうすると痛みは和らぐらしく、トニーは再び安らかに眠り始めるのだ。
犯人の女性は、トニーのファンだった。トニーとペッパーには知らされていなかったが、酷くストーカー紛いのことをし、何度も警察沙汰になりかけており、社の警備の間では有名だったらしい。
トニーと会えないのは、きっとペッパー・ポッツが邪魔をしているから。あの女がいなければ、トニーはきっと会ってくれる…。そう考えた女は、ペッパーをナイフで脅しトニーと別れるよう迫るつもりだったらしい。
が、女にとって予想外の事態が起きた。途中退席したペッパーが心配になり追い掛けてきたトニーがペッパーを庇ったのだ。ペッパー・ポッツを少しだけ脅すつもりが、愛するトニーを傷つけてしまった…。大変なことをしてしまった…と、泣きながら女は謝罪し続けているらしい。
「トニー…ごめんなさい…。あなたを傷つけてしまったわ…」
寝息を立てるトニーの頬を撫でたペッパーは、そっと額にキスをした。
→5.点滴