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200. Speech

“The Power Woman Award”をペッパーが受賞することになり、そのプレゼンターとしてトニー・スタークに白羽の矢が立った。
そこで当日行うスピーチのチェックをローディにして貰おうと、彼を呼び出したトニーだったが…。

『私と彼女の出会いは、かれこれ10年以上前に遡る。それから彼女はすっと私のそばにいてくれた。彼女は私の全てを知っているし、私も彼女のことをよく知っているつもりだ。
ペッパーは、私が知っている限り、世界一の女性だ。彼女の仕事ぶりは非常に優秀だ。それは彼女が決して妥協しないから。だが同時に、引き際をしっかり見極めることができるという柔軟性も持ち合わせている。
彼女が完璧なのは仕事だけではない。彼女はプライベートでも完璧な女性だ。料理はプロ並みに上手い。どんなに疲れていても、彼女の手料理を食べれば元気になれる。それにベッドの中でも……』

「おい、トニー。そこはいらないだろ」
突然中断され、トニーは不満げに唸った。
「ベッドの中のペッパーは、お前だけが知っていればいいんだ。それにお前はいいのか?お前だけが知らないペッパーの姿を他の男に知られて…」
眉を吊り上げたローディに、確かにそうだとトニーは目をくるりと回した。
「では…続けるぞ…」
ゴホンと咳払いをしたトニーは、続きを読み始めた。

『…彼女の手料理を食べれば元気になれる。つまりペッパーは、私にとってなくてはならない存在だ。彼女は私の生き方を変えてくれた。彼女はいつも私を正しい方向に導いてくれる。いや、私だけではない。彼女はスターク・インダストリーズのCEOとしても、そして1人の女性としても、世界に多大なる影響を与えている。その彼女が今宵、The Power Womanに選ばれた。彼女ほど、この賞にふさわしい女性はいない。彼女はパワフルな女性なのだから…。では、紹介しよう。私の美しい婚約者、ヴァージニア…』

「おい、トニー。ペッパーを婚約者だと自慢したいのは分かるが、お前達の婚約会見じやないんだぞ?」
再び中断され、トニーは再び不満げに唸った。
「いいじゃないか。ペッパーは私の婚約者だ。自慢してもいいだろ?」
「だが、主役はペッパーだ。お前じゃなくてな」
そうだろ?と、念を押すように告げるローディに、トニーは口を尖らせた。
「分かった」

ローディの忠告どおり、授賞式当日は、なるべく目立たないようにしていたトニーだが、結局ステージ上でペッパーに熱烈なキスをプレゼントしたものだから、結局翌日の一面は、2人のキス写真でもちきりだったとか…。

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199. Street

「完成だ…」
数日前から作っていた物がついに完成したと、トニーはその場で大きく伸びをした。
「よし、J.A.R.V.I.S.、早速動かしてみよう」
『了解しました』
トニーの忠実なA.I.は、主人に言われた通りに起動した。するとトニーの目に前のモニターに、街の光景が映し出された。

トニーが作っていたのは、G●▲gleでお馴染みのストリートビュー。
それもリアルタイムで更新できるというハイテク機能付きだ。
「これがあれば、現場の様子もすぐに確認できる」
トニーが適当に地図を選択すると、サンタモニカの通りが現れた。
と、トニーが見慣れた後ろ姿に気付いた。
「あれは…ペッパーか?!」
見間違えるはずがない。それは彼の最愛の女性、ペッパー・ポッツだったのだから…。
「J.A.R.V.I.S.、ペッパーの後を付けろ」
『了解しました』
今日は友達とショッピングに行くと出掛けたペッパーだが、その友達の姿は見当たらない。この後待ち合わせしているのかもしれないが、何故か胸騒ぎがして仕方ない。

数分後、某高級ジュエリーショップに入って行ったペッパーだが、あろうことか見知らぬ男と店を出て来たではないか。
「なぁ…J…。あれはどう見ても男だよな…」
『はい、トニー様。生物学的にも立派な男性でございます』
友達と言うのだから、てっきり女友達と出掛けていると思っていたのに、どうして男と一緒にいるのだろうか。
しかも2人は随分と親し気だった。腕こそ組んでいないが、男性はペッパーよりも背が高く、傍から見れば恋人のように見える。と、男性がペッパーに何か囁いた。すると頬を真っ赤に染めたペッパーは嬉しそうにクスクス笑い出したではないか。
モニターを呆然と見つめるトニーの目の前で、2人はそのまま近くのホテルへと消えて行った。

「・・・・・・・・」
今からホテルの部屋に乗りこんで、どういうことだと問い詰めるべきなのかもしれないが、そんなことをすれば後をつけていたことがペッパーにバレてしまう。
絶句したまま椅子に倒れ込んだトニーに、ホテルの宿泊名簿を調べたJ.A.R.V.I.S.が声を掛けた。
『トニー様、ポッツ様とご一緒だった男性ですが…』
「いや、J…いいんだ…」
これ以上聞きたくないというように首を振ったトニーは、うなだれるとモニターを消すよう命じた。

***
その日の夜遅く、ペッパーが戻って来た。
いつもなら出迎えてくれるトニーなのに、今日は姿が見えない。それならまたアーマーの整備に熱中しているのかと思ったが、ラボにもその姿はなかった。
「J.A.R.V.I.S.、トニーは?」
『トニー様は部屋でお休みになられています』
そんなに遅くなったかしら…と時計を見たペッパーだが、時計の針は21時前を指している。こんな早い時間からトニーが眠ることなど、1年に1度あるかないかなので、体調でも悪いのかと、ペッパーは慌てて寝室へと向かった。

寝室をそっと覗くと、トニーはベッドに潜り込んでいた。
「トニー?」
そっと覗き込むと、もそもそとシーツの山が動き、トニーが顔を出した。
「遅かったな…」
声に全く覇気のないトニーに、ペッパーはやっぱり何かあったのかと心配になり始めた。
「遅くなってごめんなさい。それより、大丈夫?熱でもあるの?」
本気で心配してくれているようだが、例の映像が頭を過ったトニーは、首を振るとそっぽを向いた。
「私なんかより、デート相手のところに行けばいいだろ」
どうしてトニーがふさぎ込んでいるのかさっぱり分からないペッパーだったが、彼の言葉でようやく合点がいった。
「トニー。またつけてたの?」
眉を吊り上げたペッパーに、相変わらず視線を合わせずトニーは告げた。
「つけてはない。例のストリートビューを試していたら、偶然君を見つけただけだ」
ふぅとため息を付いたトニーは、起き上がるとペッパーを睨みつけた。
「で、あいつは誰だ」
不機嫌そうに唸ったトニーだが、何度か瞬きしたペッパーは、あろうことかクスクス笑い出した。
「トニーったら、彼はね、私のいとこよ!ジョン・ポッツ!」
「親戚なんかいたのか…」
今まで聞いたことのない存在に、トニーはポカンと口を開けたままだ。
というのも、ペッパーは一人っ子で両親は数年前に亡くなっているので、親戚どころか両親の話も殆ど聞いたことがなかったのだ。
そういえば話したことなかったわね、と目をくるりと回したペッパーは、靴を脱ぐとベッドの上に上がった。そしてトニーの隣に座ると、彼の手を取った。
「父方の親戚なの。父の父…つまり祖父の兄弟の息子さん。小さい頃に祖父の葬儀で一度会ったことがあるんだけど、顔も思えてなかったの。彼、IT関係の会社を経営しているらしくて、先日の会議で偶然再会したの。ほら、ポッツという苗字って珍しいでしょ?だからもしかしたら…と話をしていたら、親戚だと分かったの」
それがどうして今日の『デート』に繋がるのかと聞き出そうとしたトニーだが、彼の不安に気付いたペッパーが先に切り出した。
「彼、恋人にプロポーズするんですって。それで、エンゲージリング選びを手伝って欲しいと頼まれて…。そのお礼に、ディナーをご馳走してもらったの」
そう言って笑ったペッパーの左手には、先日トニーが贈ったエンゲージリングが光っていた。
つまり嫉妬していたのはお門違いだった訳で…。
「そうか、そういう理由だったのか」
安心したようにホッと息を吐いたトニーは、ペッパーの肩を抱き寄せた。彼の胸元に顔を押し付けたペッパーは、不安にさせてしまったことを謝罪しようと顔を上げた。
「あなたに話しておくべきだったわ。ごめんなさい」
いいんだと首を振ったトニーの頬を撫でたペッパーは、首を伸ばすとキスをした。
「トニー、私はあなたしか愛せないの。あなた以外の男性は、男として見てないから安心して…」
婚約者の可愛らしい言葉に気をよくしたトニーは、ペッパーを抱きしめると、嫉妬させた埋め合わせをしてもらおうと、そのままベッドに押し倒した。

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198. Couch

ラボから上がってくると、ペッパーはいつもリビングのソファーに座り、仕事をしていた。
彼女がその場で仕事をするようになったのは、いつからだろうか…。だが、ラボから上がってきても、寝室から降りてきても、一番に彼女の姿を見ることができるのだから、トニーは内心彼女の定位置が気に入っていたのだ。
そんなことをぼんやりと考えていると、トニーに気づいたペッパーが首を傾げた。
「何故いつもそこで仕事をしているんだ?」
思い切ってそう尋ねると、ペッパーは肩を竦めた。
「ここだと、社長がラボから上がってこられてもすぐに分かりますから」
クスクス笑い声を上げたペッパーは可愛らしく、眩しそうに彼女を見つめたトニーは、胸の高まりを悟られまいと軽く咳払いした。そして彼女の隣に腰を下ろすと、テーブルの上にあったピザを1切れ口に押し込んだ。

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197. Flag

「降参だ」
相手に向かって白旗を振ったトニーだが、生憎先方は勝負をやめる気はないようだ。
「ダメ。最後までちゃんと勝負しましょ?」
怖い程の笑みを浮かべたペッパーは、J.A.R.V.I.S.の指示した色に足を延ばした。

2人が興じているのは、ツイスター。
毎朝ヨガで身体を鍛えているトニーだが、それならペッパーも負けてはいない。トニーよりも経験年数の長いペッパーは、同時に彼よりも熱心に取り組んでいるため、今やインストラクターにでもなるのかと言うくらいの腕前だった。
つまり、ペッパーは非常に身体が柔らかい訳で…。
ペッパーが指示された青に足を延ばした。長い足を軽々伸ばしたペッパーだが、彼女が動きやすいようにトニーは身体をのけ反らせた。が、ただでさえ海老反りに近い体勢だったのを更にのけ反らせることになり…。

グギっ!

鈍い音が聞こえ、トニーがグエっと妙な声を出した。

「と、トニー?!」
見ると涙目になったトニーは腰を抑え悶絶しているではないか。

まさかツイスターでぎっくり腰になるとは思ってもいなかった2人だが、後の祭り。
動けないトニーの肩を担いだペッパーは、ツイスターは禁止ね…とため息を付いた。

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196. Camping

子供たちにせがまれ、この日スターク一家はキャンプ場へやって来た。
はしゃぎ回る子供たちだが、トニー・スタークは内心焦っていた。というのも、彼はキャンプなどしたことなかったのだから…。
子供たちは父親が『何でも出来るスーパーヒーロー』だと思っている(と、トニーは少なくとも思っている)。そのため、ここでメンツが潰れるようなことがあれば、今後の父と子の関係にヒビが入ってしまうと、トニーは勝手に考えていたのだ。

車から荷物を下ろしたトニーだが、次は何をすればいいのかと、辺りをこっそりと見渡した。すると皆一様にテントを立てているではないか。
(テントを立てればいいんだな!)
そうと分かれば早速…と、トニーはテントを取り出した。
5分もあれば余裕で組み立てられると店員に勧められたのだから、きっと上手くいくだろうと教わった通りに組み立て始めたものの、5分どころか10分経ってもテントは完成しない。
汗をかきつつ奮闘するトニーの元へ、長男のエリオットがやって来た。
「パパ、まずはこのポールを立てるんだよ」
小声でそう告げたエリオットは、こっそりと手伝い始めた。
「何だ、エリはキャンプをしたことあるのか?」
「うん。この間、学校で行ったんだ」
そう言えば、2、3週間ほど前にそんなことを言ってたな…と思い出したトニーだが、息子の手助けもあり、テントは何とか完成した。
が、家族は6人なのに、部屋も仕切ることができ、大人が10人は寝られそうな大きなテントに、ペッパーと子供たちは絶句してしまった。
「パパ…大きすぎない?」
エストが思わずそう口に出すと、完成したテントを満足そうに眺めていたトニーは、眉を吊り上げた。
「大きいに越したことはないだろ?」
確かに狭いよりは広い方がいい。マットレスまで用意してあるのだから、寝るのも快適に違いないから…。
だが、あまりに巨大なテントは否応がなしに目立っていた。ただでさえ、『トニー・スタークがキャンプ場にいる』と辺りは騒がしくなってきたのに…。
苦笑するペッパーと、ため息を付いたエストは顔を見合わせた。
「そろそろ晩御飯の支度をしましょ?」
晩御飯はバーベキューをすることになっている。道中スーパーで購入した食材を用意し始めたペッパーを見たトニーは腕まくりをした。
「よし!パパが火を…」
先日家でバーベキューをした折に、火柱が上がるほど盛大に着火させた父親を思い出したエストとエリオットは顔色を変えた。
「僕がやりたい!」
「パパはアビーとルーカスと遊んでて!」
実に見事な長男と長女の見事な連携プレー。反論しようとしたトニーだが、ヨチヨチと近寄って来たルーカスとアビーに気づくと口を噤んだ。
「パパ!あちょぶー!」
腕を伸ばす双子を両腕に抱き上げたトニーは、ペッパーたちの邪魔にならないようにと、遊具のある広場へと向かった。

バーベキューを堪能した一家だが、はしゃぎ疲れた子供たち…特に下の双子は、早々に眠たいと愚図り始めた。
『パパとママと一緒に寝る』と聞かない子供たちを制したトニーは、部屋の仕切りを取ると、マットレスを並べた。
トニーとペッパーが両端に寝転ぶと、子供たちは2人の間の思い思いの場所に寝転び、両親にピッタリと抱きついた。が、疲れ果てた子供たちはすぐに寝息を立て眠り始めた。

「…暑い…」
双子がペッパーに抱きついているためか、トニーにはエストとエリオットが抱きついて眠っている。こんなに広いテントなのに、どうしてくっついて眠るハメになるのだと嘆くトニーに、ペッパーは楽しそうに小声で囁いた。
「みんな、嬉しいのよ。パパとキャンプに来られて。凄く楽しいって喜んでたわよ」
子供たちだけではなく、トニー自身も楽しかった。子供たちと誰の目を気にする訳ではなく、大はしゃぎしたのは、久しぶりだったから…。
娘と息子の背中を軽く撫でたトニーは、ペッパーに向かって笑みを浮かべた。
「そうか。また来ような」

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