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Need You Now~絆編5~

一晩経ってもトニーとは連絡がつかない。自分たちの力ではどうすることもできないと考えたエミリーは、警察に連絡をした。
誘拐事件として捜査は開始したものの、犯人からの連絡は一切なく、何の手掛かりもなかった。
「身代金目的の誘拐ではなさそうです。引き続き全力で捜査しますので、何かあればご連絡を」
警察が引き上げた後も、エミリーはペッパーのそばにいてくれた。
「ペッパー様、大丈夫ですよ。トニー様は無事です」
泣き腫らし真っ赤な目をしたペッパーの背中を撫でながら、エミリーは自分に言い聞かせるように繰り返したのだった。

靄がかかったような頭が急にくっきりとし、トニーは目を開けた。すると、目の前にはマヤの悩ましげな顔があり、その口からは甘い声が絶えず零れ落ちているではないか。
目を見開いたトニーは、自分が置かれている状況に気づき愕然とした。
マヤは自分の下腹部に跨り腰を大きく動かしており、部屋には彼女の声と水音が響き渡っている。そして、いつの間にか拘束は解かれており、トニー自身も腰を動かしながら自由になった両手でマヤの胸や腰を撫で回しているではないか。
(どういうことだ!これは悪夢か?夢なら醒めてくれ!)
マヤの身体から慌てて手を離したものの、それに気づいたマヤは妖しげな笑みを浮かべながら身体を密着させてきた。胸元に何度もキスをしたマヤは、手を伸ばしサイドテーブルから何かを取った。
「あら?気がついた?薬が切れたのね?かわいそうに……」
耳たぶを甘噛みしたマヤは、トニーの唇を荒々しく奪った。逃げ惑うトニーの舌を自分の舌で捉えると、根元から吸い上げた。トニーが目を白黒させている間に、マヤは首筋に再び銀色の針を当てた。
「んー!!!!」
必死で抵抗するトニーだが、再び瞼が重くなり、目の前にペッパーが現れた。
(トニー…お願い…もっと激しくシて…)
可愛らしくおねだりするペッパーに我慢できなくなったトニーは、いつものような濃厚なキスをすると彼女を押し倒した。

トニーが行方不明になって3日後。
ペッパーの元に差出人のない郵便物が届いた。分厚く何が入っているのか外からは分からない。
不審な物かもしれない。開封する前にエミリーに相談しようかと思ったが、彼女は会社に行っており、戻ってくるのは数時間後。
「ジャーヴィス、中は何か分かる?」
素早く郵便物をスキャンしたジャーヴィスは、内容物が危険な物ではないと判断した。
『ペッパー様、写真でございます』
写真と知ったペッパーは、もしかしたらトニーに関する物かもしれないと思い、急いで開封した。
だが、中に入っていた写真を見た瞬間、ペッパーはショックのあまりその場に座り込んでしまった。
それは、トニーが他の女性と行為に及んでいるものだった。女性を抱きしめキスをするトニー、女性の下腹部に顔を埋めるトニー、そして四つん這いになった女 性の背後から覆いかぶさるトニー…。中には結合部がはっきりと写っているものもあり、トニーがペッパー以外の女性と愛し合っているのは一目瞭然だった。

「嘘よ…トニーが…私を裏切るなんて…」
何度も写真を見直したが、そこに写っているのは、自分の夫であるトニー・スタークだ。
「嘘よ…嘘……。いやぁぁぁ!!!」
写真を投げ捨てたペッパーは、頭を抱えた。蹲ったペッパーは両手を握りしめ、床を何度も叩いた。写真をスキャンしたジャーヴィスだが、何度確認しても合成ではなく、そこに写っていることは事実以外何者でもなかった。泣き叫ぶペッパーに、ジャーヴィスは何も出来なかった。

「ペッパー様、どうされ…」
家に入るなり聞こえてきたペッパーの悲痛な叫びに、エミリーは慌ててリビングへやって来た。
見るとペッパーがお腹を押さえ床に倒れているではないか。
「大変…。ペッパー様?ペッパー様!」
ペッパーの周りに何枚もの写真が散らばっているのに気づいたエミリー。そのうちの一枚を手に取った彼女は言葉を失った。
「社長……」
その時、ジャーヴィスが要請していた救急隊が到着し、エミリーは急いで写真をかき集めた。

「おい!起きろ!」
水を掛けられたトニーは、重い頭を振りながら目を開けた。頭が割れるように痛い。顔を顰めたトニーは、今までと視界が違うことに気付いた。研究室のような場所で斜めになった台の上に身体は拘束され、左右の腕には点滴の管が何本も刺さっているではないか。
「気分はどうですか?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、キリアンがニヤニヤと自分を見つめていた。
「最悪だな。君には男を縛る趣味があるのか?」
ぼんやりとした頭を覚醒させるためにトニーは軽口を叩いたが、ムッとしたキリアンは思いっきりトニーの腹を足で蹴った。
「う!!」
息が詰まったトニーは、ゴホゴホと苦しそうに咳き込んだが、冷めた目でトニーを見つめたキリアンは、ポケットから何か取り出した。
「あなたが彼女のことを諦めていれば、こんなことはしませんでした。言ったでしょ?あなたたちの絆を試させて頂くと」
キリアンが手に持っている球体を床に転がすと、トニーの目の前には映像が映し出された。

それはマヤを抱く自分の映像だった。マヤの妖艶な声や卑猥な音が部屋に響き渡る。
何度も何度も愛し合う二人。そしてその度に、トニーはマヤの中で果てていた。
トニーが最後に覚えているのは、身動きが取れない自分にマヤが何かを注射したこと。
『大丈夫よ…楽しくなる薬なの…』
そう言われた瞬間、意識が遠のき、それからのことは一切記憶にない。
状況が理解できず戸惑うトニーは、息をすることも忘れたかのように、映像を見ている。
「あなたたち、激しいですね。この2日間、ずっと愛し合っていましたよ?昔のことを思い出しましたか?」
目の前の映像が信じられないトニーは、やっとのことで声を絞り出した。
「嘘だ…」
真っ青な顔をし言葉を失っているトニーに、キリアンは追い打ちをかけるように次々と映像を映し出した。
「嘘じゃありません。僕は目の前で見ていましたよ」
目を見開き震えるトニー。あと一息だと感じたキリアンは、映像を消した。
「ヴァージニアはこれを見たら何て言うでしょうね?あなたに裏切られたと思うでしょう。かわいそうなヴァージニア。急に行方不明になったかと思うと、違う女性と遊んでいたと知ったらどう思うでしょうね?」
目を閉じ首を振ったトニー。
「…俺たちの絆は…こんなことでは……」
囁くように呟いたその声も、キリアンの嘲り笑う声にかき消された。
「崩れませんか?どうですかね?この映像だけ見れば、あなたが進んでマヤのことを抱いているようにしか見えませんよ?それに、彼女は今のあなたを愛しているんですよね?では、次に進みましょうか?あなたが変わっても、果たして彼女はあなたを愛することができるかどうか…」
キリアンの言葉の真意が理解できず顔を上げたトニー。途端に辺りは慌ただしく動き出した。
何をされるのかと不安そうなトニーを見つめたキリアンは、顔を近づけると耳元で囁いた。
「あなたを変えてあげましょう。我々と同じように…」
キリアンが合図をすると、腕に刺さった点滴から何かが身体の中に入ってき始めた。熱く燃えたぎる何かが…。

身体の中を炎が駆け巡る。息ができず心臓が激しく鼓動を打ち始め、トニーは叫び声をあげた。

その様子を満足そうに見たキリアンは、トニーの叫び声に負けじと声を張り上げた。
「そうだ、一つ教えてあげます。苦しいでしょうが、諦めたらあなたは死にます」
「ど、どういう…こと…」
唸り声をあげるトニーに向かってニンマリと笑ったキリアン。
「あなたが諦めなかったら、ヴァージニアにまた会わせてあげましょう。だた、あなたを見て彼女はどう言いますかね?」
楽しそうに笑ったキリアンは、足早に部屋を出て行った。

「くっ…」
身体は炎で焼かれているように熱く、全身から汗が滝のように噴き出した。まるで身体中の細胞の一つ一つを剥がし置き換えているような痛みに、トニーは我慢できなくなっていた。

ふと自分の腕を見ると、オレンジ色に光っているではないか。
「な、何だ…これは…」
その途端、身体の中から何かが這い出してくるような感覚に襲われたトニー。
『諦めたらあなたは死にます』
キリアンの声が頭の中をよぎり、トニーは必至でペッパーの顔を思い浮かべた。

(絶対に耐えてみせる…ペッパーに再び会うまでは…)

何度も叫びそうになりながらも、必死で歯を食いしばるトニーの姿を、キリアンは別室でモニター越しに見つめていた。
「なかなかしぶとい男じゃないか。これは面白くなってきたぞ?」
声をあげて笑うキリアンに、一緒に見ていたマヤの目から涙が一粒零れ落ちた。

6へ…

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Need You Now~絆編4~

「遅いなぁ…」
いつもならとっくに帰宅する時間だが、トニーはまだ帰って来ない。窓から外を見ると、珍しく雨が降っている。
遅くなるなら連絡があるはず。心配になったペッパーがトニーの携帯に電話を掛けるが、電源が入っていないのか繋がらない。もちろん、トニーのオフィスに電話をかけても繋がらない。
(もしかして、何かあったの?)
不安になったペッパーは、秘書のエミリーに電話を掛けた。
大事な客だから近づくなと言われ控えていたエミリーは、トニーと連絡が付かないと聞き驚いた。慌てて社長室を覗くが部屋は、もぬけの殻。部屋には荷物もあり、駐車場に車もある。文字通りトニーだけが姿を消してしまったのだ。
至急調査するとエミリーに言われたペッパーは、ジャーヴィスに呼びかけた。
「ジャーヴィス?トニーの携帯に繋いで?」
だが、トニーの携帯は電源が切られており、さすがのジャーヴィスもどうすることもできなかった。
『ペッパー様、お繋ぎすることができません』
「それは分かってるの!何とかしてよ!」
苛立ち声を荒げたペッパー。
『ペッパー様、申し訳ありません』
ジャーヴィスの申し訳なさそうな声に、ペッパーはソファーに座り込むと震える身体を抱き締めた。

しばらくして、青い顔をしたエミリーがやって来た。
「ペッパー様…トニー様は行方不明です。防犯カメラにも映っていないんです。誰もお姿を見ていないんです…」
「そんな…」
ポロポロと涙を零し始めたペッパーは、エミリーに抱き着くと声を上げて泣き始めた。

「ん…」
目を開けたトニーは、自分が見知らぬ場所に連れてこられたことに気付いた。
手足はベッドに拘束されており、身動きが取れない。
服は脱がされているが下着は身に着けており、何もされていないことに安堵したトニーは息を吐いた。
「気が付いた?」
ふと横を見ると、一人の自分と同じくらいの年齢の女性が椅子に座っているではないか。
「君、私を解放してくれ」
きっとこの女性も仲間なのだろうが、念のため頼んでみたものの、予想通り女性は笑うばかりで何もしてくれない。
「ダメよ。それに…私の事覚えてない?また遊んでくれるわよね?」
頭をフル回転させてみるが、目の前の女性には見覚えがない。いや、正直なところ、ペッパーに話したことはないが、学生時代を含め教師になる前は散々遊んでいたため、一夜だけのオンナは山ほどいるのだ。
「すまないが、間に合っている。なぁ、帰らせてくれないか?妻が待っているんだ」
トニーの言葉にその女性は大げさに肩をすくめた。
「妻ねぇ。結婚したのよね?それも自分の生徒と。信じられないわ。あれだけ遊んでいた男が。一夜限りの女が星の数ほどいるのを奥さんは知ってるの?言える わけないわよね…。彼女、そういうことには疎そうだから。ねぇ、トニー。私は一夜限りのオンナじゃないわよ?覚えてるでしょ?」
一夜じゃないということは、付き合っていたということだろう。となると、ペッパーの前に付き合った女性ということだ。
その時、トニーの脳裏に一人の女性が思い浮かんだ。
トニーが初めて本気で恋をした女性。強い心と瞳を持ち、天才と称された美しい女性…それは…。
「…もしかして、マヤか?」
マヤ・ハンセン。トニーより5つ年上の彼女とは、短い期間だったが本気で愛し合っていた。だが、彼女は何も言わずスイスへ留学してしまった。それもトニーとは別の男性と共に…。
若かりし頃の苦い記憶を思い出したトニーは、頭を軽く振った。
「やっと思い出したのね?会いたかったわ、トニー」
立ち上がりベッドへ登ったマヤは、トニーの上に跨ると胸元に手を滑らせた。思わず顔を背けたトニーだが、トニーの頬を掴んだマヤは、強引に唇を奪った。
身体を捩り抵抗するものの、拘束されている手足のせいで、思うように動けない。
唇を離したマヤは、口を尖らせると服を脱ぎ捨てた。
「嫌なの?学生の時はよく二人で遊んだでしょ?ラボであなたに何度抱かれたかしら?そうそう、あなたが私のことをこういう風に縛ったこともあったわよね?何年ぶり?せっかく再会したのよ?楽しまなきゃ…」
トニーの身体に指を滑らせたマヤは、下腹部の膨らみをなぞり始めた。
「マヤ、よせ。君は俺を捨てたんだぞ?それに、今の俺の心には君ではない別の女性が住んでいるんだ」
無表情に答えるトニーだが、マヤはクスクスと笑った。
「私はあなたのことを忘れたことはなかったわ。あの後何度も別の男に抱かれたけど、満足できなかった…。あなたじゃないと満足できないみたい…」
股間をキュっと握ったマヤだが、トニーは表情一つ変えない。
「あら?妻以外には反応しないの?仕方ないわね…」
唇をペロリと舐めたマヤは、サイドテーブルに置かれた物を手に取った。
「これは使いたくなかったんだけど…」
目の前に掲げられたのは、鋭い針の光る注射器。恐怖に目を見開いたトニーの耳元で、
「大丈夫よ…楽しくなる薬なの…。楽にして…ハニー…」
と囁いたマヤは、トニーの首筋に銀色に光る針を刺した。
必死で抵抗しようとするトニーだが、目の前がゆらゆらと揺れ始め、マヤの代わりにペッパーが現れた。

(トニー…いつもみたいに愛して…)

「ペッパー……」

ペッパーの甘い香りを吸い込んだトニーはゆっくりと目を閉じた。

5へ…

マヤの設定は捏造ですが、トニーは飛び級でMIT入学しているんで、トニー16歳、マヤ21歳の時に同じ研究室で出会った設定です。

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Need You Now~絆編3~

二日後。仕事も終わり帰宅しようとしていたトニーの元にエミリーがやって来た。
「社長、お客様です」
時計を見ると、もうすぐ6時。こんな時間に来客の予定はなかったはず。
「来客の予定はないだろ?」
不機嫌そうに眉間にシワを寄せたトニーに気づいたのだろう、エミリーは申し訳なさそうに答えた。
「えぇ。それが、社長と奥様のお知り合いだと…」
「知り合い?誰だ?」
「キリアン様とおっしゃる方です」
「キリアン?」
何処かで聞いたことのある名前。だが、顔を思い出すことも出来ず、トニーは頭を捻った。ペッパーも知り合いとなると、彼女の友達…すなわち元教え子かもしれない。そうなると邪険にすることはできない…。
「まぁいい。通してくれ」
ため息を付いたトニーは『少し遅くなる』とペッパーにメールを送った。

「お久しぶりですね、スタークさん。アルドリッチ・キリアンです」
満面の笑みで入ってきたのは、若い男性だった。妙に馴れ馴れしい態度、人を蔑むような視線…。
「…失礼だが、何処かで会ったか?」
見たことあるのだが、どうしても思い出せないトニー。そんなトニーに臆することなく、キリアンと名乗る男は手を差し出した。
「先日、私のヴァージニアと久しぶりの再会を喜んでいる時に。あなたが現れて感動の再会は中断されましたが」
ニヤニヤと下衆な笑いを浮かべるキリアンに、ようやくトニーは一人の人物を思い出した。
(そうだ、キリアン…。どこかで聞いたことがあると思ったら、あの時の男か…)
トニーの脳裏に蘇ったのは、まだ二人が教師と生徒だった時…ペッパーが告白されるのを目撃し、恋人と名乗れないため嫉妬に苦しんだあの日のこと。
(その男がなぜ今さら現れるんだ…。俺たちは結婚しているんだぞ?)
指に嵌めた結婚指輪にそっと触れたトニーは、抑揚のない声で言った。
「で、何の用だ?これから妻と約束があるんだ。早く要件を言ってくれ」
馴れ馴れしくもペッパーのことを『ヴァージニア』と呼ぶキリアンに対し、『妻』という言葉を強調したトニー。
キリアンは肩をすくめると、勝手にソファーに座り込んだ。
「いえ。ただ、いい物が手に入りましてね。あなたに是非見てもらいたいとお持ちしたんです」
懐から何やら取り出したキリアンは、テーブルの上に投げた。

目の前に映し出された映像…それは先日のパーティーで、二人が行為に耽っている映像だった。
嫌な汗が背中を流れ落ちたトニーだったが、毅然とした態度で答えた。
「脅しか?悪いが私たちは夫婦だ。だから何をしようが…」
だが、キリアンは大げさに目を見開くと、嫌な笑い方をした。
「すみません、間違えました。これではなかった。こっちの映像ですよ」
ボタンを切り替えると、突然、生々しい声が部屋に響き渡った。
それは二人の関係がまだ秘密だった頃の映像。校内で…それもトニーの部屋だった理科室でだけではなく、図書室の片隅や放課後の教室で愛し合う二人の映像だった。

「…どうしてこんなものが…」
絶句しているトニーに、キリアンはニヤニヤと笑みを浮かべるばかり。
「驚きましたか?あの時、彼女に振られてから、校内のあちこちにカメラを仕掛けました。まだたくさんありますよ?あなたたち、毎日のようにしていましたからね。まさか結婚されていたとは…。驚きました」
映像を消したキリアンは、真っ青な顔をしているトニーをじっと見つめた。

「…何が目的だ。金か?それとも…」
やっとのことで声を絞り出したトニーだが、キリアンはその言葉を遮った。
「金なんか興味ありません。彼女です。ヴァージニアは僕のものだ。あなたにはふさわしくない。僕なら彼女を完璧にできる。もっと愛してあげられる。一日中抱きしめ、寄り添うこともできる。だから、ヴァージニアを返せ。さもなければあなたたちの映像の全てを全米中のマスコミに送りつけます。話だけならまだしも、映像が公開されれば…あなたは破滅しますね」

何も答えることのできないトニーを一瞥すると、キリアンはトニーの肩をポンっと叩いた。
「三日猶予をあげます。僕は優しいんです。彼女とのお別れが必要でしょ?いい返事を期待していますよ、トニー」

もうすぐ日付が変わる頃、リビングのソファーの上でウトウトしていたペッパーは、トニーの帰宅を告げるジャーヴィスの声に飛び起きた。
「…ただいま」
「おかえりなさい…どうしたの?」
顔色は悪く追い詰められた表情の彼に、ペッパーは何かあったのだと瞬時に理解した。
「会社で何かあったの?」
だが、無理やり笑顔を作ったトニーは、
「いや、何でもない。それより、遅くなってすまなかった。急に呼び出されて…」
と言うと、ペッパーの額にキスをした。
「ご飯できてるわよ?」
目を合わそうとしないトニーだったが、ペッパーにジャケットの裾を握られ振り返った。
「悪いが食欲がないんだ…。下にいるから、用があったら呼んでくれ…」

ラボのモニターの前に座り込んだトニーは、ネクタイを緩めるとジャーヴィスに命じた。
「ジャーヴィス、キリアンという男について調べろ」
『分かりました。…アルドリッチ・キリアン。AIMを創設。現在、エクストリミスの開発…』
聞き覚えのある言葉にトニーは閉じていた目を開けた。
「エクストリミスだと?」
『はい。共同研究者として、マヤ・ハンセン。マヤ・ハンセンですが…』
「いや、いい…彼女については知っている…」
モニターを閉じたトニーは頭を抱えた。

まさか彼女まで絡んでいるとは…。
どうすればいいんだ…。ペッパーのことは渡さない。絶対に渡してたまるか。俺のことはいくら悪く言われてもいい。だが、あの映像が世間に出回れば、彼女が傷つく…。

心配になりラボへ降りて来たペッパーは、ドア越しにトニーの背中を見つめていた。うつむいたまま動かないトニーの背中は小さく震えている。

あの時と同じ。彼がご両親と喧嘩をして一人苦しんでいたあの時と同じ。でも、今度は彼一人を苦しめるようなことはさせない。だって、私は彼の妻なのよ…。

ラボに入ったペッパーは、夕食の載ったトレーをトニーのそばの机の上に置いた。
ちらりと顔を上げたトニーだが、何も言うことなくまた頭を抱え込んでしまった。トニーの手を握ったペッパーは、彼に向き合うように机の端に軽くもたれ掛かった。
「トニー?何かあったんでしょ?」
「…」
黙ったままのトニーは、顔をペッパーの胸元に押し付けた。髪をゆっくりと撫でながら、ペッパーはトニーの頭を抱え込んだ。
「ねぇ…お仕事のことは分からないけど、私に話して?一人で抱え込まないで?」

しばらくして顔を上げたトニーは、ペッパーの目をじっと見つめていたが、大きく息を吸い込むと、膝の上にペッパーを座らせた。
「…キリアンって覚えてるか?」
「えぇ、この間会ったわよね?」
「あぁ…。あいつが会社に来た…」
キリアンと言われ思い出したのは先日の出来事。偶然を装っていたが、やはり待ち伏せしていたのだろう。それがなぜトニーの所へ…。首を傾げたペッパーは、トニーのシャツをギュッと握りしめた。
「あなたの所に?どうして?」
「君を渡せと言われた…。渡さないと映像をばら撒くと言われたんだ…。俺が君を抱いている映像だ…。それも、学校で…」
なぜそんな物があるのか、ペッパーは理解できなかった。顔色を変え言葉を失っているペッパーの背中をトニーも言葉なくゆっくりと撫でた。
「どうして……どうしてそんなものが…」
やっとの思いで声を出したペッパーだが、その目からはポロポロと涙が零れ始めた。トニーは涙を優しく拭うと、ペッパーから目を逸らせた。
「君に振られた腹いせに、校内にカメラを仕掛けたらしい。もちろん、俺は君を一生手放すつもりはない。だが、あの映像が世間に出回れば、君が傷つく…。俺のことはいくら悪く言われてもいい。だが、君のことは…もう傷つけたくない…。君のことだけは、何としても守りたいんだ…」
そう言うと、トニーはペッパーの身体を抱きしめた。いつも力強く抱き締めてくれる腕なのに、今日は力なく震えている。
トニーの恐れていること…それはペッパーが自分の元からいなくなることだ。彼女は愛情に飢えていた彼が愛することのできるただ一人の女性。そして無償の愛だけではなく、彼の血を分けた大切なものを運んできてくれようとしている。つまり彼女は彼の世界に不可欠なものであり、それが欠けると彼の世界は崩壊する のだ。
そして今や彼女にとっても彼は同様な存在となっているため、言葉に発しなくても彼の気持ちは彼女に痛いほど伝わったのだった。
涙をぐっと堪えたペッパーは、トニーの首元に顔を押し付けた。
「ねぇ、トニー。私たちは夫婦よ。それに、この間あなたは私への想いをみんなの前で言ってくれたわ。だからね、もしその映像が公開されても、私は大丈夫。あなたがそばにいるんだもの…。だから、大丈夫よ…」
ペッパーのその言葉に、トニーは身体を抱き寄せると一人心に誓った。

(彼女は絶対に離さない。命をかけてでも彼女と子供は俺が守る…)

三日後。
自宅に厳重な警備をひいたトニーは、自分の運転手でもありボディーガードでもある親友のハッピーにペッパーの護衛を任せると、会社へ向かった。

人払いさせた社長室。不気味なほどの静けさの中、トニーはじっと窓の外を見つめていた。すると…
「返事を聞かせてもらいましょうか?」
振り返ると、キリアンとサヴィンと名乗る彼の仲間が部屋に入って来た。
二人をじっと見つめたトニーは、毅然とした態度で言い放った。
「ペッパーは…妻は渡さない」
睨みつけるようなトニーの目をじっと見つめたキリアンは、一瞬目を丸くしたが、すぐさま笑みを浮かべた。
「いいんですか?あの映像を…」
何か言いかけたキリアンを制したトニーは、声色を強め言い放った。
「好きにしろ。私たちは夫婦だ。愛し合い結婚した。だから、そんなもので絆は壊れない。それに、妻を傷つける奴がいれば、私は命をかけて守る」

トニーの瞳には迷いがなかった。この男は、彼女を守るためなら自分の手を汚すことも厭わないだろう…。
(筋書き通りだけどな…)
「…分かりました。では、その絆、試させてもらいますよ?」
口角を上げたキリアンが合図を送ると、サヴィンは瞬時にトニーの傍に駆け寄り、机の上に押し倒した。
「お、おい!何をするんだ!」
身体を押さえつけられたトニー。その力は尋常ではなく、身動きが全く取れない。
近寄って来たキリアンがトニーのうなじをスッと撫でた。
「さぁ、パーティーの始まりですよ」
首筋にチクリと痛みを感じたトニーだが、目の前がぼんやりし始め、意識を手放した。

4へ…

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Need You Now~絆編1~

一週間後。
退院したペッパーだが、しばらく安静に…と言われたため、ハネムーン後に行われるはずだったお披露目パーティーは二週間後に延期されることになった。

「おはよ…ハニー」
腕の中に閉じ込めたペッパーにキスをしたトニーは、膨んだお腹に手を当てた。もうすぐ五ヶ月。退院すると同時に動くようになったお腹の子。トニーはお腹を撫でキスをすると話しかけ始めた。
「おい、起きてるか?今日もママのこと頼むぞ?」
トニーの声を聞くと動くお腹の子。
「この子はあなたの声が好きよね」
クスクスと笑うペッパーにキスをすると、トニーは起き上がった。
「今日はパーティーのドレスの打ち合わせに来るんだろ?」
「あ!そうだったわ」
飛び起きたペッパーは、トニーにキスをするとパタパタとバスルームへ向かった。

二週間後。
ペッパーのお披露目を兼ねたチャリティーパーティは、LAの郊外にあるホテルで行われた。
トニーの挨拶で始まったパーティー。スピーチが終わりに近づいた頃、トニーはステージ脇でニコニコしていたペッパーを壇上へ引っ張り上げた。
「報告が遅くなったが、一ヶ月前に結婚した。妻のヴァージニアだ。よろしく頼む」
お腹を隠すようにふわっと裾の広がったワンピースを着たペッパーは、にっこり笑うと頭を下げた。その可愛らしい姿にその場の空気は和み、そして明るく屈託のないペッパーは、あっという間に人気者になった。

「よかったわ。みなさんに受け入れてもらえて…」
内心ずっと不安だった。10歳も年下の自分に大企業の社長夫人の役目が果たせるのか、そして隠れて関係があったとは言え、突然押しかけてきたような自分が受け入れてもらえるのか…。だが、スタークインダストリーズの社員はみな優しかった。
「社長が選ばれた方だけあって、素晴らしい女性ですね」
「先代が亡くなられてから、社長は我々の前で笑わなかったんです。でも、ヴァージニア様がこちらに来られることになり、社長にも笑顔が戻りました」
そして皆が口を揃えて言った。
「ヴァージニア様、トニー様が辛い時、支えてくださってありがとうございました」
パーティーでのペッパーの様子を思い返していたトニー。謙虚で優しく、そしてさりげないことにでも気の付くペッパーを好意的に受け入れてくれた。
(彼女を正式にお披露目できた。これで誰にも遠慮することなく彼女を俺のものと言えるな…)
一人でニヤついていたのだろう。視線を感じ降り向くと、ペッパーが変な顔をしていた。
「…また変なこと考えてたでしょ?」
口を尖らせているペッパーを抱き寄せたトニーは、顔中にキスをし始めた。
「と、トニー!まだ家じゃないのよ?!」
真っ赤な顔をしたペッパーだが、トニーは膝の上に座らせると首筋に赤い印を刻み始めた。
「もうすぐ着く。それに、この車は外から見えないんだ」
「そ、そういう問題じゃないで…んん!」
黙れと言うように唇を奪われたペッパーは、その甘く蕩けるようなキスに酔い、何も考えられなくなってしまった…。

翌日、メディアはこぞってペッパーのことを報じた。
あのトニー・スタークの妻であり、今までメディアの前に姿を表さなかった謎の女性。この一か月、想像上の人物でしかなかったヴァージニア・スタークが急に現れ、しかも皆の予想に反して可愛らしく好感度抜群なのだから、マスコミが見逃すはずがない。
ペッパーの独占インタビューを取ろうとマスコミは必死だった。だが、トニーが常に目を光らせており、肉声どころか写真を撮ることすら不可能だった。

そして、二週間ほど過ぎた頃。
「社長?○△誌の方がお見えになってます」
夕方になり帰宅しようとしていたトニーに、秘書のエミリーが声をかけた。
「アポイントはあったか?」
「いえ、ありませんが…。お帰り頂きます?」
ここで断っても、おそらく下で待ち伏せされるだろうと感じたトニーは、時計をチラリと見た。ここ数日、来週に迫った展示会の準備で帰宅が深夜に近く、ペッパーとろくに話もできていなかった。
今日は久しぶりに早く帰れると連絡すると、彼女は「美味しい物作って待ってるわ」と嬉しそうに言っていたため、一刻も早く帰りたいのは山々なのだが…。
ため息をついたトニーは、
「まあいい、通してくれ」
と、エミリーに声をかけ、カバンを机の上に置いた。

しばらくして、30代くらいの女性が二人、香水の匂いを振りまきながら入ってきた。思わず眉間に皺を寄せたトニーだが、それに気づくことなくソファーに腰を下ろした記者は、座るや否や本題を切り出した。
「スタークさん、奥様の特集記事を組ませて頂きたいんです。是非インタビューを…」
「は?」
トニーがムッとしたのにも気付かず、記者はべらべらと話し続けた。
「奥様、特に同年代の女性から大人気なんです。あのトニー・スタークのハートを掴んだテクニックをぜひ…」
自分はいくら追いかけ回されてもいい。だがペッパーは…。またこの間のようなことが起こるかもしれないのだ。大きく息を吐いたトニーはまだ話をしている記者を遮るように立ち上がった。
「申し訳ないが断る。妻は見せ物ではないんだ。それに、妊娠中なんだ。静かに過ごさせてやりたい」
そう言われれば記者も強くは出られない。相手はあのトニー・スタークなのだから。下手に付け回すようなことでもすれば、自分の首が危ない。
落ち着いた頃に改めて取材を…という言葉に、一応笑顔で応えたトニーだったが、記者が帰り支度を始めた頃には、その姿はもうなかった。

その頃、ペッパーは買い物に来ていた。
荷物を抱えたペッパーは息を吐いた。トニーに言えば買い物には連れてきてもらえるが、近々ある展示会の準備でトニーは忙しく、帰宅するのも深夜に近い時間帯。
(やっぱり車で来ればよかった…)
トニーはペッパーにと車を買ってくれてはいるが、免許を取って以来、ほとんど運転する機会のなかった彼女はペーパードライバーだった。頼めば運転手付きで 買い物も出来るし、そもそも自分で出て行かなくても家まで持ってきてもらえるのだが、早くこの街に慣れたいという思いもあり、ペッパーは散歩がてら一人で 来ていたのだった。
(赤ちゃんが生まれたら、運転できないとダメよね…。やっぱり練習しなきゃ…)
ペッパーが腰をあげ荷物を持とうとしたその時だった。

「ポッツさん?」
名前を呼ばれ振り返ると、そこには見知らぬ男性が立っていた。
「えっと……?」
記憶力のいいペッパーは、一度会った人物の顔は大体覚えているのだが、目の前の男性は記憶になかった。
ペッパーが頭を捻っていると、その男性はにこやかな笑みを浮かべながら近寄って来た。
「僕だよ、アルドリッチ!」
(アルドリッチって誰?)
目の前にして申し訳ないが、記憶にない名前に顔。頭をフル回転させて考えていたペッパーだが、やけに馴れ馴れしい口調にようやく一人の名前を思い出した。
「…あ!もしかして…キリアンさん?」
そういえば、そんな名前だったわね…とペッパーが思っていることなど気付きもしないキリアンは、ペッパーの手を取った。
「いや、驚いたよ。こんな所で会えるなんて。ヴァージニア、これは運命だ」
偶然を装っているが、実はペッパーを追いかけてきたキリアン。ここにペッパーがよく来ると知り、毎日足を運んでいたのだった。
「君は相変わらず美しいな、ヴァージニア」
段々と顔を近づけてくるキリアンから逃げるように顔を背けるペッパー。
「はぁ…。キリアンさんもお変わりなく…」
当たり障りのないことを言い、ペッパーはその場を立ち去ろうとしたが、キリアンはペッパーの手を握りしめ離そうとしない。
「どうだい、久しぶりの再会だ。食事でも…」
その手を振りほどこうとペッパーは叫ぶように言った。
「あの…私!主人が待ってるんです!帰らないと!!」
(え…、主人って…)
ペッパーの言葉に固まったキリアン。その隙に手を振りほどいたペッパーは、荷物を持ち上げた。
「も、もしかして…結婚したのか?!あ、相手は!!」
我に返ったキリアンは顔面蒼白だが、不幸なことにペッパーは気付いていない。
「ずっとおつきあいしていた彼です。結婚したんです、私たち」
あれだけ騒がれていたのに、知らないのかしら?と、首を傾げたペッパーだが、言葉を失っているキリアンに何と言っていいのか分からない。どうしようかと迷っていると、一台の車が唸り声をあげて二人の横に止まった。
運転席から飛び出してきたのは、トニー・スターク。
「ペッパー!」
「あ!トニー!」
たちまち満面の笑みを浮かべたペッパーは、駆け寄って来たトニーに抱きついた。
トニーはペッパーを抱き締めると、甘く蕩けるようなキスをした。
そして、青い顔をして自分を見つめている男を睨みつけたトニーは、
「誰だ?」
と顎でしゃくった。
「あ、トニー。こちらはキリアンさん。キリアンさん。主人です」
ニコニコと紹介するペッパーとは対照的に、トニーはサングラス越しでも分かるほど不機嫌な顔をしている。
「トニー・スタークだ」
一応挨拶はしたものの、トニーはペッパーの方をクルリと向くと、荷物を持った。
「一人で買い物に行くなと行っただろ?お腹の子供に何かあったらどうするんだ?」
(お腹の子供⁈ということは…)
よく見ると、ペッパーのお腹は少しふっくらしているではないか。
さらに顔色を変えたキリアンを横目で見たトニーだが、タイミングよくお腹の子供が動き始めた。
「大丈夫よ…。痛っ!」
顔を顰めたペッパーのお腹にそっと手を触れたトニー。
「どうした?また暴れてるのか?」
愛おしそうにお腹を撫でるトニーの手に触れたペッパーは、嬉しそうに微笑んだ。
「もう…この子ったら…パパの声を聞いたから嬉しいのかしら?また暴れてるの」
「仕方ない。俺の子だから」
「そうかもね。あなたに似てたら大変だわ」
くすっと笑ったペッパーの顔は幸せいっぱいで、ハッキリ言ってキリアンの入る隙などない。

「帰ろう。いや、せっかくだから食事して帰ろう。どうだ?明日は休みが取れたんだ。君が泊まりたいと言っていたホテルに行くか?朝まで可愛がってやるよ」
完全にキリアンの存在を無視しているトニー。と言うのも、キリアンがペッパーの手を馴れ馴れしくも握りしめにじり寄っているのを目撃していたからなのだが…。
満面の笑みで自分にすり寄ってくるペッパーを助手席に押し込むと、『STARK』という文字が輝くシルバーのAudiは走り去って行った。

「サヴィン!話が違うぞ!」
ソフトクリームを食べながら車で待っていたサヴィンは、戻って来るなりキリアンに怒鳴りつけられ運転席で飛び上がった。
落ちそうになったソフトクリームを口に押し込んだサヴィンは、しばらくしてポカンとした顔でキリアンを見つめた。
「何がだ?」
苛立ち目の色が変わっているキリアンは、腹立たしげにシートベルトを締めた。
「彼女のことだ!結婚して腹に子供までいるぞ!」
この発言に驚いたのはサヴィン。あれだけヴァージニア・ポッツのことをストーカーのように追い回していたのに、肝心の情報を知らないなんて…と呆気にとられたサヴィンだが、怒らせると怖いので勤めて冷静に言葉を発した。
「…知らなかったのか?大騒ぎになってたのに…」
「知るか!俺は忙しいんだ!」
ため息を付いたサヴィンは、ダッシュボードに入れていた一冊の雑誌をキリアンに放り投げた。
『特集!トニー・スタークとヴァージニアの愛の奇跡!』
と表紙に書かれた雑誌。下手な小説よりも面白く泣けると巷で話題のこの雑誌は、実はサヴィンの愛読本でもあった。
「これを読めばよく分かるぞ?いい話なんだ。彼女の献身的な…」
愛に溢れている…と言おうとしたサヴィンだが、キリアンが物凄い顔で自分を睨んでいるのに気づき、慌てて話題を変えた。
「俺はてっきり全て承知の上で、彼女を奪いに行ったのかと…」

(知らなかったのは自分の落ち度だが、障害がある方が燃えるぞ…)
ニヤリと笑ったキリアンはダッシュボードのサングラスを掛けると、サヴィンに車を出すように告げた。

(トニー・スタークとか言ったな…。ヴァージニアは俺の物だ。絶対に奪い取ってやる…)

2へ…(R-18)

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