「Pepperony 100」カテゴリーアーカイブ

60. Dream

「可愛いお孫さんですわね!」
孫娘を抱きかかえたマリアは、嬉しそうに声を上げて笑った。
「えぇ!念願の初孫ですもの!それに…」
隣に座るハワードに視線を送ったマリアは、嫁であるペッパーに向かって微笑んだ。
「それに、もうすぐ2人になるのよ!」
ペッパーが2人目を妊娠していることはまだ公表していないのに…と頭を抱えたトニーだが、よくよく思えばどうして死んだはずの母親と父親がいるのか分からない。
「なぁ…これは夢なんだろ?」
聞いていいものか迷った。聞けば現実に戻るのかと思ったが、考える前に言葉が先に出てしまった。
トニーの言葉にハワードとマリアは寂しそうに笑った。孫娘をペッパーに渡したマリアは、トニーを抱きしめるとハワードの手を取り立ち上がった。
「おい…親父…お袋…その…」
何か言いかけたトニーだが、辺り一面が光に包まれ目を閉じた。

***
夢を見た。
死んだはずの両親が出てきた。会いたくても会えない亡き両親だが、二人は自分にとってかけがえのない存在に会いに来てくれたのかもしれない。
身体を起こしたトニーは、隣で眠る小さな娘とペッパーを見つめた。
『トニー…家族を…大切にしろよ…』
目が覚める前に聞こえた父親の言葉。
「あぁ…分かってる」
小さく呟いたトニーは、ペッパーのお腹にそっと触れると目を閉じた。

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59. Future

『あなたとの未来が見えない』
星の数ほどいた女性たちは、口をそろえて言ったものだ。
実際のところ、トニーには彼女たちとの未来どころか、翌日のことでさえも見えなかったのだが…。
だがペッパーは違った。初めて結ばれた日から数日後、何となく将来の話になった時、ペッパーはトニーの目をじっと見つめて言ったのだ。
「私には見えるわよ。あなたとの未来。私のそばにはあなたがいる。どんな時も…」
ペッパーの言葉に目を閉じたトニーの脳裏に、手を繋ぎ寄り添うペッパーと、そして自分たちによく似た子供たちが走り回る姿が浮かんだ。
「そうだな。私にも見える。君との未来ははっきりと…」
よかったわと嬉しそうに笑うペッパーを、トニーはこの存在だけは手放さないと心の内で誓ったのだった。

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58. Present

「トニー!!何してるのよ!!」
家中に響き渡る怒声なのに、トニーは思わず微笑んでしまった。
ペッパーが出張で一週間ほど離れ離れになっていた二人。
という訳で、彼女の怒声でさえも懐かしいトニーなのだが…。
「血が出てるのに、どうして笑ってるのよ!!!!」
眉間に皺を寄せたペッパーは、どうしてこんな状況で笑っているのかと怒り心頭。
アーマーの部品がぶつかり出血しているトニーを肩をタオルで押さえたペッパーは、じろりと彼を睨みつけた。
『君の怒鳴り声ですら愛しい』と言ったら、もっと怒るだろうかと思ったトニーは、言葉にする代わりにペッパーの額にそっと口づけした。

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57. Past

「トニーは後悔したことある?」
ベッドの中で抱きあった後、ペッパーに聞かれたトニーは鼻を鳴らした。
「いや、後悔はない。私は過去は振り返らない主義だ。過去は変えることはできないのだから。過去を含めて今の私がある」
そう言ったトニーだが、しばらくして目をクルリと回すとペッパーの頭にキスをした。
「ハニー、一つだけある。後悔していることが」
「何?」
顔中を這い回る感触にくすぐったそうに笑ったペッパーは、トニーの背中に腕を回した。
「自分の気持ちにもっと早く素直になっていれば良かった。そしてもっと早く君を私のモノにしておけばよかった」
彼の後悔が自分と同じと知ったペッパーは、トニーの胸元に顔を押し付けると唇を這わせた。
「それは私も同じよ。でも、その分、ずっと一緒にいましょうね」
ぎゅっと抱き着いてきたペッパーを腕の中に閉じ込めたトニーは、笑みを浮かべると彼女を再び組み敷いた。

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56. Spider Sense

「ブラックウィドウ…クロゴケグモのメスは、交尾し終わった後のオスを捕まえて食べる場合があるらしい。性欲、つまり子孫を残すという行為と生き残るための食欲は、クロゴケグモにとっては紙一重だ。何が言いたいかというと、お前の愛しいナターシャ・ロマノフことブラックウィドウは、恐ろしいオンナだ。今、お前がへばっているのも分かる。全精力を吸い取られたんだろ?お前がやめろというのに、あのオンナはお前のホークアイを離さなかったんだろ?だからあのオンナはやめておけと言ったんだ。だが、お前も鷹だ。一度狙った獲物は逃がさない鷹だ。お前の爪で雁字搦めにしてやれ。そうすれば簡単さ。あのオンナ、すぐにでもお前の上で裸に……」
目を輝かして頷いたクリントに弄り寄ったトニーだが、背中に殺気を感じ言葉を飲み込んだ。
「誰が裸になるの?」
背後から聞こえた声に恐る恐る振り返ると、恐ろしいほどの笑顔のナターシャとため息を付くペッパーが立っているではないか。
飛び上がったトニーはクリントの後ろにさっと隠れると、思いつく限りの言い訳をし始めた。

「そもそもこいつの相談にのったのが間違いだった。ナターシャと寝るのが最近怖い、朝になるとグッタリだ、どうにかしてあいつを失神させたい。いい知恵を伝授してくれと土下座するクリントを無下に出来るはずがないだろ?こいつは一応友達だ」

だが、ぺラペラと喋るトニーに怯むナターシャ・ロマノフではない。
「で、私が裸でこいつに何をすればいいのかしら?」
ニッコリと微笑んだナターシャに、思わず出しそうになった悲鳴を飲み込んだトニーは慌てて立ち上がるとペッパーの元へ駆け寄った。
「ぺ、ペッパー!急用を思い出した!ほら!今日は君のヨガの日だろ?私も参加しようと思っていたのを忘れてた!」
ペッパーの手を握りしめたトニーは、挨拶もそこそこにドアへ向かって歩き出した。
「トニー、ヨガは明日よ!それにレディースクラスなんだから、あなたは参加できないわよ!」
そこは問題ではないだろう…と、遠ざかる声に失笑していたクリントだったが、黙ったままのナターシャに作り笑いを浮かべると、殺される前に謝ろうと頭を下げたのだった。

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