「Pepperony 100」カテゴリーアーカイブ

75. Peace

この瞬間が好き。彼にキスされる瞬間が…。
この時間が好き。彼と抱き合う時間が…。
この場所が好き。彼の力強い腕の中が…。

何よりも彼の存在が好き。いつも私の心に平安をもたらしてくれる彼の存在が…。

時には腹が立つこともある。嫌になることもある。
でも、彼は私にとってなくてはならない存在。彼という存在が欠けると、私は成り立たなくなるのだから…。
私たちは一心同体。どんな局面にも2人なら立ち向かえる…。

だからね、トニー。
お願いだから私を突き放さないで…。
あなたが地獄へ行くのなら、私も一緒に行くわ…。例え世界中の人々に後ろ指を指されても、私はあなたのそばを離れない。
だからその手を離さないで…。

※Cap3がCivil Warで、ペッパーも出るかも…と聞いて。CWになっても、ペッパーはトニーのそばにいて欲しいです。

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74. Years

何年経てばあなたは本心を包み隠さず明かしてくれるの?

「あなたが何を考えてるか分からない」
そう告げると、トニーは黙って部屋を出て行った。
昔に比べ、心の内を話してくれるようになったトニーだが、時折今日のようにじっと黙ったまま何も語らないことがある。
迷惑かけまいとしているのだろう。言えば心配するからだろう。
それは彼の優しさでもあり、悪い癖でもある。そして、結婚し夫婦になった今でもそれは変わらない。
だが、それが辛かった。自分だけはトニーのことを理解し支え愛することのできる唯一の人間だと思っているから。例え世界中の人間を敵に回したとしても、それだけは確かなことだ。
(喜びも悲しみも…苦しみも…全て分かち合うって誓ったのに…)
どうすればいいのか分からなかった。無理やり聞き出そうとしても彼は余計に口を閉ざしてしまうから。
情けなかった。悲しかった。思っている程、彼は自分のことを必要としていないのかもしれないとも思った。
(私はこんなにもあなたのことを信じ、必要としているのに…)
膝の上で握りしめた拳の上に、涙がポタポタと零れ落ちた。

「ママ?」
しばらくして、不安げな声が頭上から聞こえ、私は涙を拭うと顔を上げた。
泣き出しそうな顔をした小さな娘は、持っていたタオルをペッパーに差し出した。
「ママ、ないちゃダメよ。ママがなくとね、おそらのおひさまもかなしくなっちゃうってパパがいつもいってるよ」
娘の言葉に、私は先日トニーが娘に語っていた言葉を思い出した。
『パパはママの笑顔が大好きだ。ママが笑うと、まるで太陽が輝いているようにその場が明るくなるんだ。だからママはパパにとって太陽のような存在だ。悩んでいる時や辛い時、ママが笑って大丈夫と言ってくれるだけで、パパは元気になれるんだ』

そう、トニーはただ言って欲しいのかもしれない。
『大丈夫よ』と。
私に笑って言って欲しいのだ…。
全てを話してくれなくてもいい。例え夫婦でも、お互いに言えないことはあるのだから…。

「あのね…ママ。パパもね、ないてたよ。ペッパー、ごめん…ってないてたよ」
小さな娘を抱き上げると、彼女は内緒話をするようにペッパーの耳元で囁いた。
「あら、大変。じゃあ、ママはパパの様子を見てくるわね。エストはお部屋で待っててくれる?」
膝の上から飛び降りると、娘は父親そっくりの笑みを浮かべた。
「うん。パパ、きっとまってるよ。ママがわらってくれるのをまってるよ」
そう言うと、彼女はパタパタと走って行った。

ラボを覗くと、トニーは作業中だった。
背後から近付いても、彼は振り返りもせず黙ったままだ。
「トニー…」
そっと呼びかけると、トニーは首を振った。
「ペッパー、さっきも言ったが…話したくないんだ」
顔を背けたトニーは、持っていたスパナを投げ捨てた。

彼の気持ち全ては分からない。でも少しなら分かる。
『アイアンマンは世界に必要でない』
アベンジャーズのメンバーが彼抜きで戦っている映像を見た時、彼はショックを受けていた。
「これで5回連続だ…。呼ばれなかったのは…。私はもうチームにいらないということか…」
おそらくみんなは大怪我をし病み上がりの彼に気を使い、声を掛けなかったのだろう。
だが、彼はそれを許さなかった。仲間が苦しんでいる時に、一人じっとしているのが許せなかったのだ。例え自分が動くことができなくても、おそらく状況だけは知らせて欲しかったのだ。
そんなことはないと言ったけど、彼は自分の気持ちに蓋をして、本心を語ろうとしなかった。そしてその弱さを私に見せまいとしている…。
いつだったか彼は言った。『君の望む男でなくてすまない』と。
私が望むこと、それは彼が彼らしくいてくれること。彼が笑ってくれること。彼が幸せでいてくれること…ただそれだけ。
彼は優しく思いやりに溢れ、そして勇気のある、世界一素敵な男性。
彼は私が完璧だと言うけれど、それは私も同じ。私にとって彼は完璧…いいえ、私たちは2人でやっと完璧になれるんだから…。

いつも大きく広いはずの彼の背中が、突然小さく見えた。そして耐えきれないほどの重みを背負っているように見えた。
堪らなくなった私は、彼の背中に抱き着いた。
「トニー、あなたは世界に必要にされてないと思ってる。でも違うわ。あなたは必要なの。世界にアイアンマンは必要よ?それに何よりもね…私とエストにとってはあなたは必要。それだけじゃダメ?」
背中に顔を押し付け腕を彼の首に回すと、彼は小さく首を振った。私の手を握ったトニーは、顔を上げるとくるりと身体の向きを変えた。
「ペッパー…すまない。君に心配かけたくない。だが…正直、どう話していいのか分からない…。だから…」
大きな琥珀色の瞳は、まるで安らぎを求めるかのように憂いを帯びている。
彼の頭を抱え込んだ私は、柔らかな髪の毛を梳きながら頭に何度もキスをした。
「トニー、私には話して。私には弱音を吐いてくれていいの。何があっても、私はあなたのことを受け止めてみせるから…。だから大丈夫よ。私とエストがあなたのそばにいるから…」
彼は相変わらず無言だけど、私の背中に回された腕に力が入った。まるで私を自分のそばから逃がさないというように…。

年月が経ち私が学んだこと。
それは、待つということ。突き放さず、じっと待つということ。
彼が本心を明かしてくれるまで、支え慈しみ愛するということ…。

そうすれば、彼は話してくれるから。
ほら、こんな風に…。

「ハニー…聞いてくれるか?」

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73. Promise

―およめちゃんになってあげゆ―
―君が年頃になったら迎えに行くよ―

またあの夢を見た。
遠い昔、NYの街中で交わした子供同士の口約束。あの時、自分よりも遥かに年下の赤毛の小さな女の子は、青一色だった世界から少しばかり私を解放してくれた。
あの後、何度かあの公園へ足を運んだが、あの少女と出会うことは二度となかった。そして気がつけば探していた。時が経ち、美しく成長したであろう赤毛の女性を…。
あれから30年以上経った。少女の名前も姿形もうる覚えだが、あの時の言葉は今でも私の心に刻み込まれている。

(赤毛……。確か名前は…)
遠い昔の記憶を掘り起こしたトニーは、少女の名前を不意に思い出した。
「ジニーだ…」
聞き覚えのある名前。なぜなら2日前に永遠の愛を誓い合ったばかりの女性も、その名前を持っていたからだ。
「おい…まさか…」
トニーは思わず隣で眠るペッパーを見た。
すやすやと眠るペッパーをじっと見つめていると、あの時の少女の姿が鮮明に蘇ってきた。
赤毛をポニーテールにした少女。そばかすの可愛らしい少女は、彼女と同じく透き通るようなオーシャンブルーの瞳をしていた…。
この話はペッパーにしたことはなかった。なぜならあの時の少女が、まさか長年そばにいる彼女だとは結びつかなかったから…。
「君があの時の少女なのか?長年探していた…」
そう呟いたトニーは、最愛の女性の頬をそっと撫でた。

「どうしたの?」
頬を擽る感触に目を覚ましたペッパーは、トニーが懐かしそうな表情で自分を見つめていることに気付いた。
「なあ、ペッパー。小さい時、NYにいたことはないか?おそらく君が2歳か3歳くらいの時だ」
突然何を言い出すの?と戸惑ったペッパーだが、トニーが不意に話題を振ってくるのはいつものことなので、遠い昔を思い出すかのように小首を傾げた。
「えぇ…。そう言えば…うんと小さい時にね、家族で旅行に行ったことがあるわ」
ペッパーの言葉にトニーは顔を輝かせた。
「その時、誰かに会わなかったか?男の子とか…」
もう30年以上前のことなので、すっかり忘れていた。いや、正確には10代の頃までは鮮明に覚えていたが、年を重ねる毎に、夢物語のようなあの話は記憶の隅に押しやられていたと言ってもいいかもしれない。
だが、トニーに言われ思いだした。遠い昔、NYで出会ったあの少年のことを…。
こげ茶色の瞳をした『トニー』という名の男の子を…。
「あ…」
と小さな声を出したペッパーは、トニーを見つめた。
「男の子に会ったわ…。と、トニーって言う………」
信じられなかった。ずっと一緒にいた彼が、あの時の少年だとはにわかに信じられなかった。
だが、ペッパーは確信した。あの時の少年が、自分の愛する男だということを。なぜなら、目の前のトニーとあの時の少年の笑みは同じだったから…。
「もしかして….あなただったの?」
頷いたトニーは、手を伸ばしてきたペッパーを力いっぱい抱きしめた。

ずっと探していた。あの時の子供を…。
あの時、幼いながらに思った。この子の手を永遠に繋いでおきたいと…。

「まさか君だったとは…。しかも君に出会って何年経ったと思ってるんだ?20年以上だぞ?それなのにお互い今まで気が付かなかったなんてな」
おかしそうに笑ったトニーは、ペッパーの頬にキスをすると悪戯めいた笑みを浮かべた。
「本当ね。でも私たちの出会いが実はあの時の公園だったなんて」
ふふっと笑ったペッパーは、ふとあの時の約束を思い出した。
「でも、あなたは、約束を守ってくれたのね。私をお嫁さんにしてくれるという約束を…」
ペッパーの言葉に、トニーはわざとらしく鼻を鳴らした。
「当り前だ。私は約束を守る男だ。約束通り迎えに来ただろ?」
嬉しそうに微笑んだペッパーは、あの時自分を助けてくれた少女の笑顔と同じだった。

(ペッパー、私はあの時、小さな君に救われたんだ。そして今も君に救われている…。ありがとう、ペッパー…。約束を守ってくれてありがとう…)

照れ臭くて面と向かって言えないトニーは、言葉にする代わりに、ありったけの愛を囁いた。

※”Blue”→”Hands”の続きです。

2 人がいいねと言っています。

72. Gift

『パパへ』
子供らしい字で書かれたメッセージカードと小さな箱。
寝室のサイドテーブルに置かれた可愛らしいプレゼントに、トニーは思わず頬を緩めた。
ベッドに座ったトニーは、カードを開いた。
『パパへ
きょうからママのかわりに、このこをだっこしてねてね。
エスト』

箱を開けると、中に入っていたのは人形だった。アイアンマンとペッパー・ポッツが抱き合っている人形…それは娘が大切にしている人形だった。
今朝、長男を出産したペッパーは入院中。父親は母親と共に眠ることができず寂しい思いをすると思ったのだろう。
(娘にまで見透かされてるということか)
苦笑したトニーは枕元に人形を置くと、先ほど寝かせたばかりの娘の部屋へ向かった。

部屋の灯りは消えているが、眠れないのだろう。モソモソと動くシーツの山に向かってトニーは声を掛けた。
「エスト?パパと一緒に寝るか?」
シーツの山がピタリと止まった。と、同時に、小さな娘は飛び起きた。
「うん!」
いつも抱き締め寝ているアイアンマンのぬいぐるみを手に駆け寄ってきた娘を抱き上げると、トニーは寝室へと戻って行った。

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71. Lovers

クリスマスを間近に控えた街中は、聖なる夜を待ちきれない恋人たちの姿で溢れかえっている。そんな甘い雰囲気を諸共せず、ヒールの音を響かせ歩く女性が一人。あのトニー・スタークの秘書であり、鉄壁の女性と名高いペッパー・ポッツだ。
店先のショーウィンドウをチラチラと見ていたペッパーは、とある高級ブランドショップの前で立ち止まると、店内へと入って行った。
「これはポッツ様。今日はいかがされました?」
顔馴染みの店長が、ペッパーの姿に気付くと慌てて奥から飛び出して来た。
店長と一言二言言葉を交わしたペッパーは、店内の商品をいくつか指定した。

「それにしてもポッツ様は偉いですね…」
贈り先を伝え、支払いを済ませたペッパーに、店長は長年思っていたことを思わず零してしまった。
「え?」
何が偉いのか検討もつかないペッパーは首を傾げた。
「いくら社長命令だと言っても、私なら嫌ですよ。社長の恋人たちへのクリスマスプレゼントを買いに来るなんて…」
あぁ、そのことね…と苦笑したペッパーだが、心の隅にまた一つ小さなトゲが刺さり胸が痛んだ。だが、そんなことを表情に出すほど、ペッパーも馬鹿ではなかった。
「社長の指示ですから。秘書として当たり前よ」

「恋人か……」
店を出たペッパーは、天を仰いだ。
自分の恋心は永遠に叶いそうもない。なぜなら彼は自分を『女性』として見ていないのだから…。
ため息を付いたペッパーは、カバンを掛け直すと、待たせておいた車に乗り込んだ。

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