クリスマスを間近に控えた街中は、聖なる夜を待ちきれない恋人たちの姿で溢れかえっている。そんな甘い雰囲気を諸共せず、ヒールの音を響かせ歩く女性が一人。あのトニー・スタークの秘書であり、鉄壁の女性と名高いペッパー・ポッツだ。
店先のショーウィンドウをチラチラと見ていたペッパーは、とある高級ブランドショップの前で立ち止まると、店内へと入って行った。
「これはポッツ様。今日はいかがされました?」
顔馴染みの店長が、ペッパーの姿に気付くと慌てて奥から飛び出して来た。
店長と一言二言言葉を交わしたペッパーは、店内の商品をいくつか指定した。
「それにしてもポッツ様は偉いですね…」
贈り先を伝え、支払いを済ませたペッパーに、店長は長年思っていたことを思わず零してしまった。
「え?」
何が偉いのか検討もつかないペッパーは首を傾げた。
「いくら社長命令だと言っても、私なら嫌ですよ。社長の恋人たちへのクリスマスプレゼントを買いに来るなんて…」
あぁ、そのことね…と苦笑したペッパーだが、心の隅にまた一つ小さなトゲが刺さり胸が痛んだ。だが、そんなことを表情に出すほど、ペッパーも馬鹿ではなかった。
「社長の指示ですから。秘書として当たり前よ」
「恋人か……」
店を出たペッパーは、天を仰いだ。
自分の恋心は永遠に叶いそうもない。なぜなら彼は自分を『女性』として見ていないのだから…。
ため息を付いたペッパーは、カバンを掛け直すと、待たせておいた車に乗り込んだ。