「あー、もう。世間はクリスマスなのよ!どうして私はあんたとこんな所にいるのよ!」
聖夜とは程遠い空間の中に、ナターシャとクリントは身を潜めていた。
任務とは言え、どうしてクリスマスに身を潜めていなければならないのか…。暗闇の中、髪を掻きむしったナターシャだが、文句を言っても仕方がない。
隣で暗視カメラで覗いているクリントだが、普段の彼女らしからぬ言動に首を傾げた。
任務中のナターシャは男の自分が気を引き締めるくらい任務優先主義だ。それが一度任務を離れると、妖艶な女性に様変わり。ベッドの上で激しく乱れるナター シャを思い出したクリントは、慌てて咳払いをした。幸いにもナターシャは気付いていないようだ。
「いいわねー。ジェーンはソーとデートでしょ?ペッパーは今頃…」
どうやら女友達から聖夜のデートの報告を受けたらしい。
(それで荒ぶってるのか…)
ドイツの古城の前でわざわざキスをしている写真を送って来た友人を思い出したクリントは、肩をすくめた。
「スタークとドイツでヤりまくってるだろうな。俺たちも後で写真を送り付けよう」
そういうことじゃないけど…と口を尖らせたナターシャは、足元の双眼鏡を手に取り覗き始めた。どうやら任務に集中するらしいと思ったクリントだが…。
「ねぇ、プレゼント、ないの?」
3分もするとナターシャが口を開いた。
「そんな物渡せる状況じゃないだろ?」
暗視カメラから相変わらず目を離さないクリントの腕を突いたナターシャは、ぷいっと横を向いた。
「分かってるわよ。言ってみただけ」
頬を膨らませたナターシャはいつになく子供っぽく可愛らしい。あまり拗ねらせると後が面倒だと感じたクリントは、暗視カメラから目を離すとナターシャを見つめた。
「全部は渡せないが…」
「え?」
きょとんとしているナターシャの唇をクリントは荒々しく奪った。
身を摺り寄せてくるナターシャの胸を掴み、ぷっくりとした唇を貪るように味わっていると、無線からお馴染みの声が聞こえてきた。
「バートン、ロマノフ!出番だ!」
余韻に浸る間はない。
一瞬見つめ合った二人だが、次の瞬間、そこにいたのはホークアイとブラックウィドウという二人のエージェント。
武器を掴んだ二人は、行動を開始した。
外に出ると、スティーブが待ち構えていた。
「おい、ナット。行くぞ」
「パーティーの始まりね」
ニッコリと微笑んだナターシャは、振り返るとクリントの唇に触れる程度のキスをおとした。
「クリスマスだから。サービスよ」
任務中には恋人同士である素振りを見せたことはない。
「そうだ。クリスマスだ。派手に行こうぜ」
顔を真っ赤にしているスティーブを横目で見ながら、クリントはナターシャの後を追うように駆け出して行った。
何気に年末年始に続いています