New Year’s Eve(クリントとナターシャの場合)

「どうして俺たちばかり…」
「仕方ないわ。それが仕事よ」
口を尖らせたクリントだが、にっこりと笑みを浮かべたナターシャを見ると肩をすくめた。
「何だよ。今回はやけに素直だな」
「あら?こういう仕事は楽しいわ」
タキシードとドレスで着飾った二人は、某政治家のカウントダウンパーティーに潜入していた。某政治家に辞職しなければ抹殺すると脅迫メールが届いたのは2日前。本来なら警察が動くのだろうが、その政治家家族がアベンジャーズの大ファンだということで、S.H.I.L.D.に話が回ってきたらしい。
ターゲットを狙って暗殺者が現れた瞬間、パーティーの客に紛れ込んでいるエージェントが確保することになっているのだが…。
パーティーが始まりすでに1時間。暗殺者は動く気配がない。そうこうしているうちに、ホールにはクラッシックな音楽が流れ始めた。
「せっかくだから踊らない?」
差し出された腕を取ると、クリントは音楽に合わせステップを踏み始めた。
「俺は君と二人きりで過ごしたかった」
しかめ面をしながら辺りを警戒するクリントの目はちっとも笑っていない。仕事とは言えパーティーなのだ。あまり不機嫌だと返って不審に思われるだろう。
「私もよ。でも、こんな豪華なパーティー、スタークじゃないんだから、なかなか参加できないでしょ?」
ニコニコと笑みを浮かべたナターシャに、クリントは小さく唸った。
「俺はどうも居心地が悪い」
どうやら不機嫌なのは、この場の雰囲気に緊張しているかららしい。クスッと笑ったナターシャは、クリントの胸元に顔を押し付けるように抱きついた。いつもより早い心音にナターシャがそっと目を閉じた時だった。背後を行き交う感触にナターシャは顔を上げた。背中から腰を撫で回していたクリントの手は、いつの間にかナターシャの尻を撫で回している。
「そんなところ触らないの」
軽く…いや、ジロリと睨んだナターシャだが、クリントはニンマリと笑った。
「いいだろ」
尻をキュッと掴んだクリントは、そのまま大きく開いた背中へと指を滑らせた。そのもどかしい感触に全身を朱色に染めたナターシャは、潤んだ瞳でクリントを見つめた。
「ねぇ、クリント。仕事が終わったら…。でも…これくらいはいいわよね?」
クリントの頬を掴んだナターシャは唇を押し付けた。唇の隙間から舌を入れ、お互いの口腔内を堪能する…。まるで二人の周りだけ時間が止まったように、その瞬間は永遠に続くと思われるほどだった。
そして、クリントの手はナターシャのドレスの裾から侵入し、太腿を撫で回していたが……。

バーン!!

一発の銃声が耳元でし、ナターシャは唇を離した。
得意げな顔の目の前の男は、ナターシャの腰を引き寄せると頬に軽くキス。
「任務完了だ」
「お見事。でも、乱暴な人ね」
クリントから銃を受け取ったナターシャは、太腿のホルスターに戻しながらチラリと背後を振り返った。そんなナターシャの誘うように光る唇を奪ったクリントは、首元のタイを緩めた。
「だが、早く済んだ。あと30分で年が変わる。さっさと家に帰ろう」

手を押さえている暗殺者をエージェントが取り囲むのを見届けたクリントは、ナターシャの手を引っ張ると走りだした。

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