New Year’s Eve(スティーブとブルースの場合)

どうしてこの二人が…と思うかもしれない。だが、何となくノリでバイクの旅をしようということになったスティーブとブルース。
出発当日、集合場所にやって来たブルース・バナーは見覚えのあるバイクに跨ってやって来た。
バイクの出処を恐る恐る尋ねたスティーブにバナーは照れ臭そうに答えたのだった。
「ほら、あの時乗っていたバイクだよ。どうも愛着が湧いてね。あ、もしかして、オンボロだから無理だって思ってるだろ?大丈夫。性能は保証する。見た目ほど酷くないんだ」
と、停車しているだけでもガタガタと言っているバイクを誇らしげに指さすブルースと不安げに見つめるスティーブ。
こうして始まった男二人のバイクの旅だが…。
ブルースの言うとおり、彼のオンボロバイクは何の心配もなかった。むしろ自分の最新鋭のバイクよりもはるかにスピードの出るバイクを、スティーブは追いかけるのに必死だった。
「トニーに改良してもらったんだ。ボロいけど、スピードは凄いだろ?」
控えめな涼しい顔をするブルースに、やっと追いついたスティーブは苦笑い。おそらく今回の旅のことをブルースはトニーに話したのだろう。
『おい、ブルース!じいさんを驚かせてやろう!』と、目を輝かせているトニーを想像したスティーブは、思わず噴き出したのだった。

目指すはアラスカなのだが、別にアラスカに辿り着かなくてもよかった。とにかく二人でバイクの旅を楽しみたかったのだ。
結局、北へ向かうはずが何となく西へと向かい、二人がグランドキャニオンの近くへと辿り着いたのは、大晦日の夜だった。
夕食後、仮眠を取った二人。夜明け前に起き出すと、防寒装備で山頂へと向かった。

「初日の出を拝むとその年は良い年になるそうだ」
山頂にほど近い岩山に座った二人は薄っすらと明るみ始めた東の空を見つめた。目を細め空を見つめるブルースは、スティーブに日本に伝わる『初日の出』について語った。
「へー、さすがバナー。物知りだな」
寒さで赤くなった鼻を擦ったスティーブはおもむろに立ちあがった。
「知ってるぞ!こういう時はこう叫ぶんだ!」
思いっきり息を吸い込んだスティーブは、叫んだ。

「ヤッホー!!」

(確かにそうだけど…。このタイミングでそれはないだろ…)
ガックリと頭を垂れたブルースだが、笑みを浮かべた。
「心の中で祈るんだ。今年最初の太陽だ。静かに見守ろう…」
頭を掻いたスティーブは腰を下ろすと、熱々のコーヒーをカップに注ぐとブルースに手渡した。
「バナー、今年もよろしく」
「あぁ、こちらこそ」
カチンというカップの合わさる音を合図に、二人は太陽が昇りきるまで静かに見守り続けたのだった。

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