ジェーンが風邪を引いた。
青い顔をしてベッドに横になっているジェーンに、ソーは大慌て。
「ジェーンよ、アスガルドへ行くぞ!大変な病気なら…」
今にも自分を抱きかかえ空高く飛び上がろうとしそうなソーをジェーンは押しとどめた。
「大丈夫よ、ソー。風邪だから…。病院にも行ったし、薬も貰ったから…。すぐに良くなるわ…」
「そうか…」
大事には至らないと知ったソーは、安心したように息を吐いた。そして、ベッドサイドに腰掛けるとジェーンの手をそっと握った。
「…うつるわよ」
ゴホッと咳き込んだジェーンだが、ソーは肩をすくめた。
「俺はアスガルドの住人だ。ミッドガルドの病気はうつらない」
ソーの言葉が真実がどうかは疑わしい。
「本当?風邪を引いたことないの?」
思わず眉をひそめたジェーンだが、ソーは困ったように頭を掻いた。
「…風邪というのか?お前が今なっているのは。同じような病気にはなったことはある。だが、お前のその風邪がうつるかどうかは分からない。つまりだな… ミッドガルドの住人とこんなにも接したことは今までない。だから、確証はないが…多分、うつらない」
要するに、彼にもよく分からないということだ。それなのに手を握りそばにいるということは、それだけ心配してくれているということだろう。
途端に嬉しくなったジェーンは、ふふっと笑みを浮かべると、力強い手を握り返した。
「もし、うつったから、私が看病してあげるわ」
「ジェーンに看病して貰えるなら、うつってもいいかもしれない」
イタズラっ子のようにニヤっと笑ったジェーンにソーも豪快に笑うと、何度か咳き込んだ彼女に毛布を掛け直した。
「ほら、もう休め。俺がそばにいる」
「うん…」
額を撫でる大きな手は温かくそしてどこまでも安堵感を与えてくれる…。
その優しさに包まれたジェーンはいつしか眠りについていた。