風邪(ナターシャの場合)

ナターシャが寝込んだ。鬼の霍乱と言ったら怒るだろうな…と思いつつクリントが寝室を覗くと、ナターシャは頭から毛布を被っていた。
「スープ作ったんだ。食えるか?」
毛布の山をそっと撫でると、真っ赤な顔をしたナターシャが顔を出した。
クリントの手には美味しそうなスープ。思わずお腹が鳴ったナターシャは、起き上がるとため息を付いた。
彼は何でも卒なくこなしてしまう。料理も掃除も洗濯も…つまりは家事一般を。女の自分よりも素早くそして丁寧にだ。
「あんたって、器用よね…」
そっと言ったつもりだが、聞こえていたのか、はたまた聞こえないふりをしているのか…。
「ん?何か言ったか?」
ニコニコと嬉しそうに笑うクリントを横目にナターシャはスープを平らげた。

「お前が看病してくれたから治りが早かったんだ。だから、俺もお前のことを全力で看病するからな!」
と宣言したクリントがその後も甲斐甲斐しく看病したおかげか、その日の夕方にはナターシャの具合も大分良くなったのだった。

そしてその夜…。
「汗をかくと早く熱が下がるらしいぞ?」
と言いながら、なぜかクリントは隣に潜り込んできた。
「…うつるわよ」
ゴホッと咳き込んだナターシャを抱きしめたクリントは気にする風でもない。
「お前の風邪は俺からうつったんだ。だから俺にはうつらない」
どういう理屈なのかは分からないが、自信満々に言われるとそうなのかと納得してしまう。くすっと笑ったナターシャは、首筋にかかるクリントの吐息を感じながら、安心したように目を閉じたのだった。

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