幸いにもすぐに治った私だけど、甲斐甲斐しく世話をしてくれていたトニーが今度はインフルエンザになった。しかも厄介なことに、私よりも酷い。
「どう?具合は?」
ゲストルームで寝込んでいるトニーは、真っ赤な顔をしている。熱を測ると40度。額に置いたタオルもすぐに熱くなってしまう。
「ぺっぱー……もう……ダメだ……。しにそうだ……」
とろんとした目のトニーは身体をもそもそと動かしたけど、節々が痛むのか唸り声を上げた。
「大丈夫よ。今日は辛いけど、明日になれば薬も効くし、少しは良くなるわ」
頬を撫で毛布を掛け直すと、小さく頷いたトニーは目を閉じた。
リビングに戻ると、エストが待ち構えていたかのように飛びついてきた。
「パパは?」
母親が姿を見せると同時に今度は父親の姿が消えたのだから、さすがに小さな娘といえども、何か起こっていると分かったらしい。
「大丈夫よ。パパもね、風邪を引いたの。でも、すぐに良くなるわ」
父親は母親と同じ風邪で寝込んでいる、つまり父親には当分会えないと理解したのか、エストは一瞬ションボリと顔を伏せたが、すぐに目を輝かせて顔を上げた。
「パパとママ、いっちょ!なかよち!!」
「え……」
自分のインフルエンザが彼にうつったのだから、一緒と言われれば一緒だし、昼夜問わず看病してくれたのだから仲が良いというのも間違いではないけれど…。
正直どう反応していいのか分からなかった。ううん…相手は1歳児なのだからそこまで深く考えなくてもいいのかもしれないけど…。
と、返答に困っている私の元へ助け舟のように電話がかかってきた。相手はローディ。どうやらトニーが寝込む前にメッセージを残していたらしい。帰国したからと、トニーが治るまでエストを預かってくれることになり、電話を切った私はエストの柔らかな頬をつついた。
「エスト、ローディおじちゃんがね、お泊まりに来ないかって?ママはね、パパが心配だから行かれないけど…エスト、一人で行ける?」
大好きなローディおじさんと遊べると聞いたエストは、満面の笑みを浮かべた。
「うん!」
やれやれ、これでトニーの看病に専念できるわ…。それにしても、トニーったら…。私の看病をしながら、エストにうつらないように世話をして大変だったわね…。最後は「ママ」と泣いて大変だったって言ってたけど…。しっかり看病してあげなきゃ!
気合を入れた私は、エストのお泊まりセットを用意するために子供部屋に向かった…。