「スタークにキスされると、それだけで感じちゃうってホント?」
突然予期せぬことを聞かれるのはいつものことなのだが、いつまで経ってもどうも慣れない。優秀なスパイである友人の言葉に飛び上がりそうになったペッパー は、ゴクリと唾を飲み込むと冷静さを装ったまま引きつった笑みを浮かべた。
「ど、どうかしら…」
そう言うと目の前のジュースを飲み干したペッパーは、コップに刺さったストローをクルクル回し始めた。
「…ペッパー、空っぽよ」
動揺を隠しきれていない自分が恥ずかしくなったペッパーは顔を真っ赤にすると口を尖らせた。
何年経っても可愛らしい反応を見せる友人をからかうのは楽しく、ナターシャは意地悪な笑みを浮かべた。
「やっぱりそうなのね。私もスタークとキスしてみたいわ。ねぇ?うちのと交換…」
「だ、ダメ!!!!」
ナターシャの言葉を遮るようにペッパーは叫んだ。店内に響き渡った大声に、周囲の客は一斉に振り返った。
謝罪するように小さく頭を下げたペッパーは、からかうのもいい加減にしてよとナターシャを軽く睨みつけた。
「嘘に決まってるでしょ?今はあなたがいるんだから、スタークに断られるわよ」
苦笑するナターシャだが、ペッパーは少々複雑だった。
もし、彼が独り身だったら、彼は彼女とキスしたかしら…と。
帰宅するや否やペッパーはトニーのいるラボへと向かった。
トニーは娘と息子とホログラムで遊んでいた。
「おかえり、ハニー」
「ママ!おかえり」
駆け寄って来た娘を抱きしめたペッパーは、寝返りが出来るようになった息子の頭にキスをするとトニーの隣に座った。
「息抜きできたか?」
「えぇ。食事したお店ね、子供用の料理もたくさんあったの。今度みんなで行ってみましょ?」
「そうだな」
ペッパーの腰を引き寄せたトニーは、唇にキスをおとした。
軽く触れるようなキスを繰り返していた二人だが、ペッパーの脳裏には先ほどナターシャに言われた言葉が過ぎった。
『キスだけで感じちゃうってホント?』
確かにトニーのキスは最高だ。彼にキスされると体中ドロドロに溶けてしまいそうになる。彼のキスはまるで彼自身の気持ちを表しているかのように、様々な面を持っている。彼とキスするまで、キスにも感情があることを、そしてキスがこんなにも素敵なものだとは知らなかった。
(彼のキスを知っているのは私だけなのよ…)
あの時感じた小さな嫉妬心を消すように、ペッパーはトニーの頬を掴むと二人きりの時にしかしないような濃厚なキスをし始めた。珍しく積極的に舌を絡ませて くるペッパーに驚いたトニーだが、彼女の身体を抱き寄せると、お返しだというようにペッパーが逃げられないよう舌を捕えた。
いつも以上に長い両親のキスを嬉しそうに見つめていたエストだが、段々と母親の様子がおかしくなっていくことに気付き首を傾げた。
「パパ?ママのおかお、まっかよ」
娘に指摘されたペッパーは、立ち上がろうとしたが腰が抜けて動けない。耳元に掛かる甘い吐息に心臓が飛び上がったトニーだが、何度か咳払いをした彼は娘に 向かってウインクをした。
「ママはパパのキスが大好きなんだ」
「ふーん。そうなんだ。ママ、よかったね」
無邪気に言う娘だが、一刻も早く夫婦の時間にしたいトニーは、ペッパーをソファーに横たわらせると、子供たちを寝かせるべく二人を連れてラボを後にした。
拍手お礼再掲。The Pepperony 100 Challengeより