5.Blueの続きです
『おにいちゃんのおよめちゃんになってあげゆ』
遠い昔、私が凄く小さかった時出会った男の子。偶然出会ったその男の子は泣いていた。誰か助けてと泣いていた。
なぜだか分からないが、放っておけなかった。手を繋ぎそばにいなければならない気がした…。そしてその手を永遠に繋いでおきたいと思った…。
「『トニー』って名前なのは覚えてるんだけど…」
校内のカフェテリアでジニーことヴァージニア・ポッツはジュースを啜った。
「『トニー』ねぇ…。で、年上なんでしょ?」
彼女が2歳か3歳の時、NYで偶然出会った男の子の話は、昔から繰り返し聞かされた話。そのため、彼女の友達はみんなこのおとぎ話を知っているのだった。 今日もみんなで理想の彼氏像について語っていたはずなのに、ジニーはやはり遠い昔出会った彼の話を始めたのだった。
「うん、私よりも随分年上よ。お兄ちゃんって感じ。4つ以上は離れてるはずよ」
「ということは、今は20歳より上ってことね…」
「でも、10年以上前にNYにいた20歳以上の『トニー』という手がかりだけじゃねぇ…。山ほどいるわよ」
結局何度話が出ても今日のように『見つけるのは不可能』という結論に達して終わるのだ。
ジニー自身も見つけるのは不可能だと分かっている。ほんの数分の出来事だった。例え見つかったとしても、向こうが覚えているとは限らない。それでもいつか 会いたいとずっと思っていた。あの男の子は何度も夢に出てくるので、彼は自分を待っている気がしたのだ。
だが、今日はこの話に続きがあった。
帰り道、参考書を買いに本屋に立ち寄ったジニーは、ふとゴシップ誌のコーナーに向かった。沢山の雑誌の表紙を飾るのは、あのスターク・インダストリーズの CEOであるトニー・スターク。
友達はみんな彼のことをカッコいいというが、女遊びの激しいことで有名なトニー・スタークがジニーは正直苦手だったため、今まで彼のことを知ろうとしてい なかった。
「そういえば、彼も『トニー』よね?」
何気なく雑誌を手に取ったジニーは、特集記事を立ち読みし始めた。
【トニー・スターク。現在、22歳。両親の事故死により若くしてCEOに就任した彼は、幼少期をNYで過ごし…】
「え…NY?」
自分も幼い頃NYにいた。そう、あの夢の中に出てくる男の子と出会ったのもNY。トニーという名前、そしてNY…。偶然かもしれないが、あの15年前の出来事の時、彼は7歳で年齢もあの少年と同じくらいだ。
思わずじっと表紙を見つめたジニーを、大きなこげ茶色の瞳が見つめ返してきた。
(そういえば、あの男の子も同じ瞳をしていた…)
「まさかね…」
小さく声に出したジニーは雑誌を棚に戻そうとした。だが、トニー・スタークのことが気になり始めたジニーはしばらく悩んでいたが、その雑誌を手にレジへと 向かったのだった。
拍手お礼再掲。The Pepperony 100 Challengeより